自民だけで65議席減――歴史的な大敗から一夜明けた10月28日。自民党本部での臨時役員会に出席した石破茂首相(67)は、党幹部が集合しているというのに一瞥(いちべつ)もくれず、虚ろな目で虚空を眺めていた(写真)。
「裏金問題でただでさえ逆風が吹き荒れていたのに、『非公認の議員が支部長を務める支部に、党が2000万円を振り込んでいた』という報道が選挙戦終盤に飛び出し、致命傷となった。大事な時期にずさんな振り込みを行ったことについて、石破首相と森山裕幹事長(79)の責任を問うべきだとの声も噴出している」(自民党ベテラン秘書)
10月1日に就任して即、「国民の信を問う」と電撃解散に踏み切った石破首相。ド級の「不信」を突き付けられた以上、党内はすぐに「石破おろし」に動くのかと思いきや――。政治ジャーナリストの角谷浩一氏が首を振る。
「石破おろしの中心を担うはずだった旧安倍派も大勢が落選し、壊滅的な敗北を喫した。高市早苗氏(63)ら石破首相に反旗を翻せる有力者の力も削がれている。ダメージが大きすぎて、ライバルたちはしばらく様子見に徹さざるをえない」
初回から大量失点し、ボロボロになった石破首相に代わるリリーフはおらず、続投するしかないというのだ。今後、首相に求められるのは臨時国会、通常国会で、攻勢を強めてくるであろう野党に殴られ続ける「サンドバッグ」の役割だ。元自民党職員で、政治アナリストの伊藤惇夫氏が分析する。
「1月からスタートする通常国会以降も石破内閣の支持率が回復しなければ、自らの辞任と引き換えに予算を成立させるよう、党内から働きかけるというのが現実的なシナリオでしょう。特に政治とカネの問題では、ある程度の野党への譲歩は必須。それでも、この問題にいくら取り組んだところで首相のポイントとはならない。支持率回復も見込めない」
石破首相を使い倒したうえで次期総裁レースを仕切り直すという算段だ。伊藤氏が続ける。
「来夏には参院選も控えており、3月の予算成立後から時間がない。ここで両院議員総会を開き、国会議員と都道府県連代表のみ投票する総裁選を実施する。党員票が反映されないので高市氏が勝つ確率は低い。岸田文雄前首相(67)は在任中に支持率を落としたため、積極的には動けない。岸田氏との関係も悪くなく、中道保守で立憲民主党の強みを消せる林芳正氏(63)が本命になるのではないか」
あっという間に「敗戦処理」に――在職わずか27日で石破首相に突き付けられたのは、いかにも哀しい末路だった。
『FRIDAY』2024年11月15日号より