木村花さんの自殺をめぐり、母親が「花さんを中傷する投稿をした」として大阪府内の家族を訴えた裁判。母親側が主張の根拠とした『スクリーンショット画像』が、第三者の捏造だった可能性が浮上し、家族側が“逆提訴”するという異例のプロセスをたどっていましたが、8月30日。大阪地裁は、双方の請求を棄却する判決を言い渡しました。プロレスラーだった木村花さんは、テレビの恋愛リアリティ番組に出演していましたが、SNS上での誹謗中傷を苦に、2020年5月に自殺しました。
母親の木村響子さんは、投稿者らへの賠償を求める民事裁判を複数起こしていて、そのひとつは2021年8月、大阪府内に住む家族を相手に、約300万円の賠償を求め提訴したものです。花さんの自殺直後にツイッター(現:X)上で、花さんのツイートに「なんか誹謗中傷がすごく話題になっているけれど花さんはそれだけ知名度があるんだから有名税だと思いなよ」などと返信する形に記された「スクリーンショット画像」が見つかり、響子さんは画像に掲載されたアカウントに基づいて発信者情報開示請求を行った結果、大阪府内の家族が投稿したと考えられたためでした。◆誹謗中傷投稿のスクショは第三者の捏造だったかしかし、訴えられた家族側は、そうした投稿はしていないと反論。家族側が調べた結果、画像には投稿日時や返信先(花さんのユーザーID)の表示がありませんでした。つまり、当該スクリーンショットは、何者かが「捏造」した画像である可能性が急浮上したのです。家族側は「画像が捏造であることは容易に知りえたはず」「平穏な生活を送る権利は侵害され、精神的苦痛を受けた」として、響子さんとその代理人弁護士を相手取り、計880万円の賠償を求めて去年1月に“逆提訴”。響子さん側は、家族が投稿したという主張を完全には取り下げなかった上で、「仮に捏造だったとしても、形式に特段の不自然さがなく、発信者情報開示請求の中でも画像が捏造という指摘がなかった」「家族に対する提訴は不法行為にあたらない」と反論していました。◆判決は双方の請求を棄却大阪地裁(山本拓裁判長)は8月30日の判決で、「画像が捏造されたものである可能性を否定できない」として、まず響子さん側の請求を棄却。一方で、「スクリーンショットを用いたツイートの捏造が容易であることが指摘されるなどしていたとしても、ただちに本件画像が捏造だと疑うべきだったとまでは言えない」「発信者情報開示請求請求訴訟で、響子さんの請求を認容する判決が確定していることも合わせて踏まえれば、響子さんが当該家族が誹謗中傷した事実がないと容易に知り得たということはできない」などとして、響子さんの提訴は違法ではなかったと判断。結果として、双方の賠償請求を棄却する判決を言い渡しました。