国から公設秘書の給与などをだまし取ったとして、東京地検特捜部は30日、前参院議員の広瀬めぐみ容疑者(58)(自民離党、15日に議員辞職)を詐欺罪で東京地裁に在宅起訴した。
給与支給対象の公設第2秘書とされた女性やその夫の公設第1秘書については、広瀬容疑者との共謀を認定した上で、従属的として不起訴とした。起訴猶予とみられる。
発表などによると、広瀬容疑者は2022年12月、女性を公設第2秘書に採用したとする虚偽の届け出を行い、同月~23年12月、国から秘書給与や退職手当計約358万円をだまし取ったとされる。
関係者によると、広瀬容疑者は22年7月の参院選で初当選した直後から、秘書に給与の一部を事務所に「上納」させていた。同年12月には、秘書給与目当てに「公設第2秘書」を作り出すため、公設第1秘書に妻の名義を貸すよう指示。給与の大半を差し出すように求め、実際に約250万円を得ていたという。
当選まで政治経験のなかった広瀬容疑者は、政治活動の「資金繰り」が予想以上に困難だと周囲に漏らしており、だまし取った給与は、事務所の経費に充てていたとみられる。23年夏頃に公設第2秘書の勤務実態がないとの疑惑が浮上すると、女性に自身の送迎などをさせて実態があるかのように偽装。さらに、秘書を別人物に交代させていた。
特捜部は、弁護士でもある広瀬容疑者が一連の秘書給与詐取を主導したとみており、隠蔽(いんぺい)工作を図っていたことも踏まえ、公判で刑事責任を追及すべきだと判断したとみられる。
広瀬容疑者は30日、「秘書給与等として受けた支給額は利息を付けて全額を国庫に返納した。国民や支援者におわびする」とコメントした。辞職に伴う岩手選挙区の補欠選挙は10月27日に投開票が行われる見通し。

国会議員による秘書給与詐欺事件は、00年前後に相次いで発覚した。再発防止を図るため、04年には国会議員秘書給与法が改正され、給与は秘書に直接支給すると明文化されたほか、秘書への寄付の勧誘や要求も禁止されていた。
法改正後に国会議員が秘書給与詐取で立件されるのは初めてとみられる。谷口将紀・東京大教授(政治学)は「勤務実態がない秘書の給与を得ることは違法だというのは常識で、順法意識が欠如していたとしか考えられない」と指摘し、「公設秘書の登録状況をインターネットで公開して透明化するなど、二度と同じ事件が起きないような対策が必要だ」としている。