1984年の発売から今年で40周年を迎えたロングセラーお菓子「カントリーマアム」。
製造・販売元の不二家は今年9月から順次、カントリーマアムを含む18商品の価格改定と内容量の変更を実施すると発表した。カントリーマアムの贅沢バニラ、贅沢チョコは9月24日発売分から、現在の16枚から14枚に枚数が減少。価格は変わらないため、実質的な値上げとも言える。
これにはネット上で「以前より小さくなったと思ったら今回は枚数が減るのか…次回はまた小さくなるのかな」や、「えー…お菓子好きとしてはこれは由々しき事態 泣」など、ファンからの悲しみの声が続出しているのだ。
カントリーマアムだけでなく、これまで数多くのお菓子が原材料費の高騰などの影響によって内容量を減らし続けていることはご存じの方も多いだろう。
例えば、江崎グリコの「ポッキー」は2024年2月出荷分から、価格は据え置きで内容量は5%程度減らしている。
今回は内容量が減り続けている人気お菓子について、実際どれくらい減っているのか検証しつつ、メーカーの苦渋の決断や企業努力について、日々お菓子について研究しているお菓子勉強家・松林千宏氏に解説していただく。
●カントリーマアム(不二家)
まずは今回話題となった不二家の「カントリーマアム」について見ていこう。松林氏によれば、枚数や重量は減少し続けているが、重量に関しては、ただ減らしているというわけでもなく、機械技術の向上の関係もあるという。
「ファミリーサイズで販売されている『カントリーマアム(バニラ&ココア)』は、2005年には1袋あたり30枚でしたが、2007年には28枚、そして現在の18枚になるまで、過去19年で12枚減っています。1枚あたりの重量に関しても、2014年に標準10.5gから標準10gになり、当時『小さくなった』と話題になりました。
こうして内容量が減った背景には、生産過程で使用する機械技術の向上が関係しています。以前、カントリーマアムの広報の方に話を聞いたところ、以前は1枚1枚の重量にばらつきがあり、規格重量以上のものが多く紛れてしまっていたそうです。そうした生産段階での課題を解決するために、生産設備への投資によって機械の精度を高めたことで、1枚あたりの重量が均一になり、たまに紛れてしまっていた規格以上に大きいものがなくなったという経緯があるそうです」(松林氏、「」内以下同)
実際に商品を購入し、1枚ずつ中身を並べてみた。1枚あたりのサイズや厚みを比較すると、たしかにばらつきは少なく、どれも同程度の大きさできれいに統一されている。ちなみに1枚あたりのサイズは約4cm、重量は10gで規格量に合致していた。
●ポテトチップス(カルビー)
続いてカルビーの「ポテトチップス」シリーズについて。1975年に「ポテトチップス うすしお味」を発売して以来、さまざまな味を展開しつつ、今年で49年を迎えるロングセラー商品だ。
こちらの内容量は減少しているのだろうか。
「2022年にポテトチップスシリーズ全般の内容量が改定されました。コンビニで販売されているサイズの『うすしお味』や『のりしお』は85gから80gに、『コンソメWパンチ』は75gから71gなど、人気の主力商品の内容量が減少しました。この内容量変更についてカルビーは、高温や干ばつの影響により、原料のジャガイモが不作で価格が高騰していることを理由として発表しています」
やはりどのお菓子メーカーも原材料の高騰について苦労しているようである。特にジャガイモなどの農作物を主原料としているお菓子は、その年の気候の変化などによって収穫量が減ってしまうと、価格が上がったり内容量が減ったりしてしまうことは仕方のないことかもしれない。
袋の中身を見てみると、だいたい半分程度までポテトチップスが入っている。重量に関しても、袋の重さを足して88gとなっており、規定量を満たしていた。1枚のサイズにはばらつきがあるが、多くは直径約5cm~6.5cmであった。
●プリングルズ(日本ケロッグ)
内容量が減っていると噂されているお菓子はほかにもある。
続いて紹介するのは、日本ケロッグが製造・販売する「プリングルズ」。プリングルズは世界140カ国以上で販売されているポテトチップスの代表ブランドで、日本では1994年から販売が始まり、「サワークリーム&オニオン味」などが人気のフレーバーとなっている。
レギュラーサイズのプリングルズは、2015年に内容量が158gから110gに変更、さらに2022年9月以降は105gに減少している。2022年の内容量変更について、日本ケロッグの公式発表では、「原材料価格の大幅な上昇、ならびに資材費やエネルギーコストなどの高騰」によるものだと説明されていた。
開封してみると、中身はしっかり詰まっていて、取り出しやすい。容器上部の空間は約2.5cmだった。容器の空間部分が多いと、積み上げられているチップスが動きやすく、不安定になることで、配送時に中身が欠けてしまったり、割れてしまったりする原因になるという。
多少欠けているものがあったが、大きさにばらつきは少なく、チップスはほぼ均等な大きさであった。
●コアラのマーチ(ロッテ)
ロッテの「コアラのマーチ」は、かわいらしいコアラのキャラクターがプリントされたビスケットと、くちどけのいいチョコレートが特徴。2024年で40周年を迎え、今年3月には500種類の名前がプリントされた期間限定バージョンも販売し、おいしさだけでなく楽しさも追及したお菓子となっている。
そんなコアラのマーチだが、価格は100円前後を保っているものの、やはり原材料や包装資材の価格、物流などのあらゆるコストの上昇によって、内容量を減らしている。2007年には55gであったのが、2009年には50g、そして2022年からは48gとなっているのである。
開封すると、袋いっぱいには詰まっていないものの、袋全体の3分の2程度は入っていた。今回筆者が購入したものは1袋あたり23粒入っており、重量は袋の重さ含めて51gで、規格量を満たしている。
●チョコあーんぱん(ブルボン)
今年で38周年を迎えるブルボンの「チョコあーんぱん」は、小さなパンにソフトなチョコレートが入っているお菓子。チョコあーんぱんは税別100円という価格を発売当初から変えていないが、やはりこちらも内容量は減っている。
2005年時点では60gだったのが、2007年8月からは55g、2008年5月には50g、2016年には44g、そして2023年からは40gと減少を続け、実質的な値上げを繰り返している。しかし公式サイトによると、内容量を減らしつつも、中身のチョコクリームの改良や、配合・製法の見直しによる品質向上なども併せて行っていたことがわかる。
開封し中身を見てみると、1袋あたり9粒入っており、重量も既定の40gを満たしていた。ブルボン公式の商品紹介によると、パン生地を使用していることもあり、腹持ちがよく、満足感は得られるものになっているという。たしかにさっくりとしたパン生地は食べ応えがあり、小腹を満たすのにちょうどいい量だろう。
●うまい棒(製造:リスカ、販売:やおきん)
最後は、もっとも有名な駄菓子のひとつである、やおきんの「うまい棒」。「コーンポタージュ味」や「たこ焼味」、「やさいサラダ味」などのさまざまなフレーバーが楽しめ、どの世代も懐かしさを感じるようなお菓子ではないだろうか。
1979年の発売当時から10円という価格を貫いてきたが、2022年についに初めての値上げを行い、税込12円となった。内容量の変化については、一部のファンから「小さくなった」という声もあり、もともと7~9gであったのが、2010年ごろから5~6gになったという噂があるが、公式からの発表はないため真偽は不明である。
パッケージには内容量が6gと記載があり、実際に量ってみると規格量より1g多い7gであった。
松林氏は、うまい棒について、発売から2022年までの42年間、価格を変えずに維持してきたメーカーの努力についてこう語る。
「以前うまい棒のメーカーさんに取材した際に語ってくださったのは、まず利益や損得を考える前に、“10円”という価格をどうしたら維持できるのかという点にこだわっており、自社だけでなく取引先や物流会社など、関係各社で試行錯誤してきたということでした。メーカーの担当者自身や関わっている多くの人々も小さい頃からのうまい棒ファンであり、10円という値段で育ってきたからだとおっしゃっていましたね。
1本の価格を抑えるために1発注あたり30本納品にしたり、運送時の商品ロスをなくすために、筒の中央に空洞のある構造にすることで割れにくくしたりするなど、メーカーさんは企業努力を怠らず、常にファンである消費者のことを考えているという印象を受けました」
うまい棒の値上げについてネット上では、「今まで10円を維持してきたことが本当にすごい」「企業努力に頭が下がる」など、批判的なコメントはほぼなかったという。これは、メーカー側の商品愛やファン想いな陰の努力が、消費者に伝わっていたからではないだろうか。
最後に松林氏に、お菓子メーカーが苦渋の決断で内容量を減らしているワケについて解説していただいた。
「やはりお菓子ファンにとってなによりも悲しいことは、自分のお気に入りのお菓子が終売してしまうことなんです。メーカー側も何としてでもそれは食い止めたいという気持ちが強く、なるべく長くファンのみなさんに自社の商品を愛してもらいたいという思いがあるはず。原材料費の高騰などで苦しい経営のなかでも、ファンたちにお菓子を届けるにはどうしたらよいのか、日々試行錯誤しているメーカーさん本当には多いんです。
なかには『価格を上げていいから内容量はそのままにしてほしい』という意見もあるでしょうが、価格が上がり続けてしまうと嗜好品であるお菓子は購入対象から外れていく懸念があります。メーカーさんは、なるべく多くのみなさんに商品を手に取ってもらいたいと考えているため、価格を据え置きにして内容量を減らすという対応をとるケースが多いのでしょう」
(取材・文/A4studio/瑠璃光丸凪)
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