厚生労働省は26日、アルツハイマー型認知症に伴う暴言や暴力などの症状に対する初の治療薬を承認する方針を決めた。
大塚製薬などが開発したうつ病などの治療薬「ブレクスピプラゾール」(商品名レキサルティ)で、厚労省の専門家部会が同日、適応の拡大を了承した。9月にも承認される見通しだ。
この薬は脳内の神経伝達物質の働きを調整する飲み薬。国内外で、うつ病と統合失調症の治療に使われてきた。米国など3か国ではすでに、アルツハイマー型認知症にみられる暴力などの症状に対する治療薬として承認されている。
国内で行われた最終段階の臨床試験は、55~90歳の患者410人が参加。10週間投与したグループは、偽薬を投与したグループに比べ、暴言や暴力などが起こる頻度が減った。
今回、治療対象となる症状は、アルツハイマー型認知症患者の約半数にみられ、家族や介護者の心身の負担になる。冨本秀和・三重大特定教授(脳神経内科)は「症状を招く不安を和らげるようケアを工夫し、漢方薬などでも効果が乏しい場合の選択肢となる。転倒につながる副作用もあり、慎重に使う必要がある」と話している。
昨年9月に承認されたアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」(商品名レケンビ)は、進行を抑える効果があり、認知症の早期段階の患者らが使える。一方、ブレクスピプラゾールは、主に病気が進行した患者が対象となる。