若者の恋愛離れの背景に「お金」の問題があることは周知の事実だが、経済的不自由を回避するための「実家暮らし」という選択は、恋愛市場ではマイナスに働いてしまう可能性が高いのではないか……。なぜなら異性から経済的にも精神的にも「自立していない」と見られてしまうリスクがあるから。仮説の検証を含め、私は過去に何度か取材をした、「自称・最強の子供部屋おじさん」と豪語する財前光希さん(33歳、仮名=以下同)へ、マッチングアプリへの挑戦を提案した。
聞き手:佐藤大輝(一人暮らし歴15年目)
まずは本記事の主人公、財前光希さんについて簡潔に紹介したい。財前さんは現在33歳。大学卒業後に社会へ出てからも、東京23区内にある実家2階の子供部屋に住み続けている。5人家族の長男。家族との関係は良好で、両親へは生活費を1円も渡していない。
仕事は保険会社の正社員。年収は残業代や賞与込みで約500万円。金融資産は、銀行口座に約100万円。証券口座に約30万円。ローン完済済みのトヨタのプリウスを保有している。性格は真面目で内向的。身長170センチ。体重100キロ。
趣味はご当地グルメ巡りと、所属しているテニスクラブの練習。マイブームは海外渡航で、年間旅費に200万円以上を投資する豪快っぷり。異性関係は20代中盤の頃、3ヶ月間ほどお付き合いした恋人と自然消滅して以来ぱったり。
今回は財前さんに、某マッチングアプリに挑戦してもらった。それでは、さっそく話を聞いていこう。
ーー私からお願いをする形で、財前さんにはマッチングアプリに登録してもらったわけですが、アプリを利用する際に抵抗感はありましたか?
実は1年ほど前、僕は某マッチングアプリに挑戦したことあるのですが、ここでマッチングした女性からマルチ商法の勧誘を受けたことがあります。メッセージのやり取りを少しだけ重ねた後、女性側から「会って話してみたい」と提案があり、都内某所のハンバーガーチェーンに鼻息荒く向かいました。しばし談笑を楽しんだ後、相手の女性側から「ねぇねぇ、将来さ、やりたいことってある?」と唐突に聞かれました。そこで、「こんなビジネスがあるんだけど」とネズミ講、マルチ商法の勧誘を受けたんです。
今回は佐藤さん(この記事のライター)にゴリ押しされたので、再びアプリを始めましたが……また業者に遭遇するのではないか。先につながらない恋愛のため、お金や時間を支払うことに、やや抵抗感がありました。個人情報を晒すことや知り合いに見つかるなどの心配は、アプリ1回目のときに大丈夫だとわかったので、この点に不安はありませんでした。
ーー財前さんが考える「恋活」あるいは「婚活」について教えてください。
就活に次ぐ、人生の第二の分岐点だと考えています。生涯を通じて、その人と一緒にいるわけなので。やってることは、少し就活に似ているとも思います。筆記試験みたいなテストがあるわけではなく、二人の相性次第で結ばれるかどうかが決まる。履歴書の経歴を盛るように、アプリの自己紹介文を盛ってる人は多い。お互いに嘘をついたら、いつか必ずミスマッチが生じます。だから、ありのままの自分を出していこうと決めていました。
ちなみに僕がアプリで使用したプロフィール文章は、以下になります。
■実際にアプリで使用したプロフィール
横浜の保険会社で正社員として働いています、こうきです。
趣味は海外旅行です。最近だとシンガポール、タイ、韓国へ遊びに行きました。国内旅行も大好きで、マイカーを持っているので、ふらっと旅に出ることも多いです。
友達からは「いいパパになりそう」「100%嫁さんの尻に敷かれてそう」と笑われています(>_<) まずは食事デートから始められたら嬉しいです。 ぽっちゃり体型なので、美味しい店をたくさん知ってます。お店選びは任せてください! 最後まで読んでくれて、ありがとう。 現実主義な女性からの不信感を買わないため、アプリの登録情報(年収)は400万~600万円で設定しました。僕の年収はボーナスや残業代を含め、だいたい平均で500万円くらいなのですが、今年は繁忙期の残業地獄により、年収は600万円を超えそうです。なので、600万円以上でも「嘘」にはならないのですが、ここは等身大の自分でいこうかなって。実家暮らしであることも、プロフィールの公開情報にキチンと載せました。 ーーアプリの仕組みを知らない方のため、補足します。アプリ登録者は最初にプロフィール情報を入力します。写真や自己紹介文、職業や年収などの情報を自由に登録後、気になる異性へ「いいね」を送る、あるいは送られてきます。そして互いに「いいね」を送り合った時にマッチングが成立。メッセージのやり取りができるようになるのですが、2通目以降のメッセージを送るためには、男性側のみ月額4000円前後の課金(有料会員登録)が必要になります。その他、追加料金を支払うことで、様々な特典が利用できます。 初回メッセージは無料ですが、2回目以降は有料。男性側からすると、気になる女性とマッチングして「課金しなくていいや」とはなりにくい。男心を理解した、上手いビジネスモデルだと思います。 ーーこれも補足ですが、マッチングアプリ専門家の伊藤早紀氏が代表を務める『恋愛婚活ラボ』が、マッチングアプリ『Pairs』に登録している未婚男女を対象に、独自調査を行ったところ、一般男性会員の年収分布はこのような結果になりました。 年収600万円以上 32% 年収400~600万円 32% 年収200~400万円 10% 無回答者 24% ーーまたマッチングアプリPairsの運営調べによると、1年以内に結婚した夫婦の約4組に1組が、アプリをキッカケに交際がスタートしているそうです。なお、これらはあくまでPairsのデータであり、財前さんが今回挑戦したのは某マッチングアプリですが……。 * * * 国税庁が発表した「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、全国の平均年収は458万円。平均年齢は約47歳。実家暮らしならではの出費の少なさを含め、財前さんの経済力なら十分に勝負できる、はず……。 後編記事〈33歳年収500万円「子供部屋おじさん」が絶句…マッチングアプリの女性から受けた「厳し過ぎる洗礼」〉では、自称・最強の子供部屋おじさんと豪語する財前さんから、マッチングアプリの結果報告をしてもらう。 33歳年収500万円「子供部屋おじさん」が絶句…マッチングアプリの女性から受けた「厳し過ぎる洗礼」