前編記事「「どうして葬式に呼んでくれなかったんですか?」葬儀で実際に起きたトラブルと具体例な解決方法」から続く。
「葬儀に来た夫の親族に『宗派が違う』と指摘され、故人を偲ぶ場なのに、険悪な雰囲気になってしまったんです。同じ浄土宗でも宗派はいろいろ。事前に確認しておけばよかったのですが、そもそものお寺がわからなかったので、どうしようもなかった。ひとまずは親族に謝っておきましたが、白い目で見られたのはつらかったですね」
トラブルになったのは葬儀だけではない。いざお墓に入れようとした段階で、もう一つ問題が発生した。
「夫の菩提寺は葬儀に来た親族の人に聞いてようやくわかりました。葬儀後に、夫の実家がある新潟県のお寺に納骨の連絡をすると、お寺の住職から『その戒名では受け入れられない』と言われてしまったんです。宗派が違っていたので、もう一度戒名をつけ直さなければならず、戒名代約50万円を2回も払うことになってしまいました」
昨今は、こうしたトラブルを避けるために、あらかじめ自身の戒名をつけておくケースもある。
「戒名一つとっても、お寺ごとに手続きが異なります。事前に夫婦で宗派などの情報を共有したうえで話し合っておくといいでしょう」(勝氏)
葬儀そのものの形式や値段を事前に決めておく葬儀会社の「生前予約」というサービスがある。残された家族は、葬儀会社とのやり取りの手間が減るが、トラブルになるケースもあるので要注意だ。たとえば、生前予約で100万円を支払っていたのに、追加で数十万円の請求が来るケースもある。勝氏が解説する。
「葬儀会社が出してくる見積書と、請求書に金額差があるケースは多い。見積書は『最低料金』に過ぎないのです。
火葬までに数日待たないといけない場合は、追加のドライアイスに費用がかかる。ほかにも、お茶出しなどの心付けは見積書には含まれていないことが多いので、実際の請求金額がふくらみ、残された側が思わぬ出費に当惑してしまうこともあります」
こうしたお金の面も、ある程度事前に決め、もともとの見積もりから10%ほどは上ブレするという見込みで葬儀費用を準備しておくといい。
次はお墓のことも考えよう。前述の菩提寺がわからなかった大木さんのように、そもそも妻や夫のお墓の場所がわからないケースのほかに、故人の意思がわからなくて、どこに入れればいいのか困ってしまう人も少なくない。勝氏が続ける。
「たとえば旦那さんが亡くなったとして、その親子間、兄弟間の関係が悪い場合は、同じお墓に入れていいのか、迷うケースもあります。妻が残された場合、喪主として夫の親族と折衝することになりますが、そのストレスもある。『故人の意思』をあらかじめ聞いておければ、こうした揉め事を避けられます」
残された側が思いがけない墓の管理に苦しむこともある。
具体例を見ていこう。東京都在住の大西恵子さん(65歳・仮名)は、夫の墓の管理に頭を悩ませている。数年前に夫を亡くし、夫の実家家族が眠る福岡県の霊園に納骨した。子どもがいないため、夫の弟家族が墓の管理をしてくれると思っていたが……。
「義弟と遺産分割で揉めて、なんとか決着したのですが、墓の管理は押し付けられてしまいました。毎年霊園から約1万円の管理料の請求が来るのですが、私自身はそのお墓に入るつもりはありません。勝手に墓じまいをするわけにもいかず、困り果てています。夫がいればもっと違ったはず。生前に話しておくべきだったと強く後悔しています」
大西さんのようなケースで、もし仮に墓じまいをするとなると、親族との合意のほか、菩提寺との交渉、地元市区町村での手続きなど、時間と手間がかかるうえに、おカネもかさむ。
こうした作業を残された側がたった一人で進めるのは、あまりにもしんどく、つらい。将来的に墓じまいも視野に入っているのであれば、事前に夫婦で相談し、ある程度進めておくと安心だ。
自分が死んだあとのことは知らない―そうやって家族に丸投げしていると、大切な故人を思う気持ちが薄れてしまいかねないのだ。
「週刊現代」2024年8月10・17日合併号より
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