それは魂の叫びだったのか。2016年に自宅で妻を殺害したとして殺人罪に問われた講談社の元編集次長・朴鐘顕(パクチョンヒョン)被告(48)の差し戻し審の判決が18日にあり、東京高裁は懲役11年とした一審・東京地裁判決を支持した。
【画像】殺人罪で懲役11年判決を受けた朴鐘顕被告
「えっ」
無罪を訴えた被告側の控訴を棄却すると家令和典裁判長が言い渡すと、法廷に大きな声が響いた。ほかならぬ朴本人の声だ。
その後も「この国は、裁判がないことになってしまう」などと繰り返す被告に対し、家令裁判長は「静粛に」と制し、退廷させることになると警告。「あなたがいる状況で判決を言い渡したい」とまで述べる事態に発展した。
記者会見する朴被告の母親(右端)ら
司法担当記者が続ける。
「その後、裁判長が無言で長時間、朴被告を見つめるなどし、大人しくなったので、再開。しかし、最後には被告が『この間違いは必ず訂正される。大丈夫』などと母親もいた傍聴席に向かって叫んでいました」
予期せぬ判決に動揺したのだろうか。だが、気になる点もあるという。
「被告はいろんな発言をはっきり、ゆっくり、何度も繰り返しており、思わず叫んだのか、裁判を取材するメディアに対して訴えているのか、どちらか判然としませんでした」(同前)
事件は16年8月に発生。子ども4人の子育てに追われていた朴の妻が自宅で倒れて死亡した。当時、自宅には朴と子どもしかおらず、妻の首を絞めるなどして殺害したとして翌年逮捕されたのが、「少年マガジン」時代に「GTO」を担当、人気マンガ誌「モーニング」の編集次長として知られた朴だった。
朴は「妻が首をくくって自殺した」と無罪を主張してきたが、一審も二審も有罪を認定。だが、最高裁が二審について「審理が不十分」だとして審理を東京高裁に差し戻してから、少し雲行きが変わってきた。
「最高裁はあくまで審理が甘いと言っているだけで結論の妥当性については特に言及しておらず、司法関係者の間では、有罪判決は覆らないとみられていた。一部では無罪をにおわす報道も出ていたが」(司法関係者)
無罪放免を信じていた被告の母親は閉廷後の会見で「どういう風に子どもたちに今日のことを報告したらいいか」と落胆した。
事件当時、1歳だった下の子は8歳に。仮に今後、懲役11年が最高裁で確定した場合、出所するころにはその子は19歳に……と思いきや、違うらしい。
「朴はこれまで保釈申請が認められなかった。逮捕からの未決勾留日数は相当部分が差し引かれますから、有罪が確定しても数年で出てくるでしょう」(同前)
弁護側は上告する方針。注目の裁判の舞台は最高裁に移る。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年8月1日号)