「自宅のリビングの真ん中で『正座して、手を後ろに回して、目を閉じて』と娘に言われました。『手錠と目隠しをしていると思って座って』と。背後からモゾモゾする気配があり、スカーフで頬や首筋を触られる感触がありました」
【画像】幼稚園時代の田村瑠奈被告
法廷で明かされた父娘によるSMプレイの描写。それが意味するものとは――。
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札幌市ススキノのラブホテルで、会社員Aさん(当時62)が田村瑠奈被告(30)に殺され、頭部が持ち去られた事件から1年。
被害者のAさん
瑠奈の母親で、死体遺棄ほう助などの罪に問われた浩子被告(61)の第2回公判が、7月1日、札幌地裁で開かれた。この日、証人として出廷したのが、瑠奈の父親で精神科医の修被告(60)だった。
「浩子は『娘の殺意を認識し、犯行を容認した』との検察側の指摘を否認、無罪を主張している。殺人ほう助などの罪に問われ、瑠奈と同じく裁判員裁判で審理される予定の修も、この日の法廷で瑠奈の殺意や殺害計画に気づかなかったと断言した」(司法担当記者)
その根拠として強調したのが、瑠奈のSM嗜好だ。
両親を奴隷のように従え、長らく自宅に引き籠っていた瑠奈。「クラブに行ってみたい」と言い出し、修同伴で、昨年5月末にススキノのクラブで出会ったのが被害者のAさんだった。
「女装愛好家のAさんと意気投合した瑠奈は、ラブホテルへ行き、同意のもと複数回の性行為に及んだ。ところが、最後の行為でAさんが避妊具をつけず、中出ししたことに瑠奈が『約束を破った』と激高。同時に妊娠や性感染症のリスクに怯えた。これが事件の発端とされている」(同前)
一方で瑠奈は数年前からSM行為に関心を示すようになり、時折「女王様になりたい」とも口にした。
Aさんとの性的トラブル後、修は娘とともに週末のススキノで彼を捜し、再会の約束を取り付けたが、その際、瑠奈はSMになぞらえてこう話したという。
「前回は(Aさんに)私が責められたので、次は私が責める番だ」
昨年6月下旬、その「リハーサル」として実演されたのが、冒頭の父娘SMシーンだった。
「Aさんと会った時のSMの練習だと思った。後ろから頬や首筋をサワサワしたらどんな気分になるのかを知りたいのだろうと。娘に『どんな感じ?』と聞かれ、『ゾクゾクするね』と答えたら、満足そうにしていた」(修の法廷証言より)
修は、瑠奈が昨年6月25日にクラブで知り合った別の男性とラブホテルに行き、SMプレイに興じたことも明かした。
「明け方近くだったので勘弁してほしいと言ったが、どうしてもSMプレイをしたいと。Aさんとのトラブルがあったので、その男性に対して、(ホテルに入る前に)娘に嫌なことをしないよう、動画を撮影しながら釘を刺した」(同前)
こうした経緯から、修は瑠奈がAさんに会いに行った昨年7月1日、「SMをしに行ったと思った」と証言。殺害計画を知った上で加担したわけではないと主張したのである。
犯行当日、瑠奈は修が運転する車の後部座席に鎮座し、Aさんとの待ち合わせ場所に向かった。上着の下に、ボディライン、特に胸元が強調された黒の女王様風衣装を着込んで――。
「合流した2人はラブホテルに直行。全裸になったAさんは、浴室で後ろ手に手錠をつけられ、アイマスクで視界を塞がれると、背後から瑠奈に刃物を突き立てられた」(前出・記者)
瑠奈が父と自宅で繰り広げたSMプレイは、Aさん殺害の予行演習に他ならなかったのだ。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年7月11日号)