暗雲が立ち込める展開となった。ようやく進展の兆しを見せようとしていた女性皇族に関する議論が、またも暗礁に乗り上げようとしている。波紋を広げたのは美智子さまについての報道だった。愛子さまの将来を案じられる雅子さまの心中は穏やかではないだろう──。
【写真】ピンクのワントーンコーデの愛子さま。他、上皇さまと手を握りイチイの木を見る美智子さまの近影、中華料理デートする眞子さんも
天皇陛下の隣に、雅子さまのお姿はなかった。5月25日午後7時半すぎ、陛下はおひとりで岡山県岡山市内にある伯母の池田厚子さんの自宅を私的に訪問された。池田さんは1952年に結婚で皇籍を離脱した、昭和天皇の四女である。
翌26日に岡山市で開催された全国植樹祭の式典へのご出席のため、両陛下は前日から岡山を訪れていた。25日には、岡山工業高校を訪問され、岡山コンベンションセンターでは植樹祭の大会ポスターを描いた中学生らと交流された。
「雅子さまにとっては皇室に入られてから初めての岡山訪問でした。泊まりがけの公務は負担がかかりますから、池田さんの自宅訪問を見送られた理由には大事を取られたということもあったでしょう。しかしそれ以上に、いま、結婚で皇籍を離脱した『天皇家の娘』と両陛下がそろって対面されることに、図らずも意味付けされてしまうことを危惧されたのではないでしょうか」(宮内庁関係者)
26日、両陛下は予定通り全国植樹祭の式典に出席された。会場に緊張が走ったのは、式典が始まってから7分後の主催者挨拶のときだった。挨拶の主は、額賀福志郎衆議院議長。雅子さまは、ひときわ強い視線を声の主に注がれた──。
昨年10月に衆議院議長に就任した額賀氏は、就任以降、皇室の喫緊の課題である「皇族数の確保」および「安定的な皇位継承」に関する与野党の議論を主導し、積極的に進めてきた。しかしいま、額賀氏が深く関与したある報道が、その議論の進行に水を差す事態になっている。それはそのまま、愛子さまの将来にも大きな影響を与える。渦中の人物を前にした雅子さまの心境はいかばかりか。
発端は『週刊新潮』(5月23日発売号)の《憂慮の果て「美智子さま」が動かれた》と題された特集だった。皇室記者が解説する。
「額賀氏が衆議院議長に就任した後に上皇ご夫妻にお目にかかる機会があり、美智子さまが『(皇位継承に関する議論を)よろしく進めてくださいね』といった趣旨の声がけをされたという内容でした。この件に関して『週刊新潮』から事実確認を求められた額賀氏は沈黙のまま電話を切ったといい、暗に事実だと認めているのではないかという見方もありました」
皇室は政治に立ち入ってはならない、と憲法に規定されている。もし仮に上皇后というお立場にある美智子さまが皇位継承に関する議論に“口出し”されたという事実があれば、問題視されかねない。
宮内庁の対応は早かった。23日、宮内庁長官が定例会見で報道を真っ向から否定したのだ。いつにも増して、その日の長官は語気を強めたという。
「宮内庁担当記者らの質問に返答する形ではなく、自ら週刊誌報道について切り出して否定した対応は、異例といえます。美智子さまに関する事柄について長官の一存で言及できるはずがありませんから、会見内容は、美智子さまのお気持ちを汲まれたうえでのことでしょう。それほどに、美智子さまのご心痛が差し迫っていたのではないでしょうか」(前出・宮内庁関係者)
奇しくもその同日、政治の側でも“介入報道”の内容とリンクする動きがあった。安定的な皇位継承や皇族数の確保策に関する与野党の会議が行われたのち、「週1回の開催」という方針が突如、変更されることが発表されたのだ。
「23日に行われていたのは第2回の会議でした。『週1回の開催』を見送る理由としては、各党の足並みがそろっていないということが大きな理由のようです」(全国紙政治部記者)
波紋を呼んだ第2回の会議は、そもそも、話し合いの内容にも急遽の変更があったようだ。
「『女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する』という案について議論する予定だったところ、唐突に『皇統に属する男系男子を養子として皇族にする』という案についても話し合うことが提案されたのです。前者については各党が賛成していますが、後者についてはコンセンサスが取れていませんから、議論が一気に停滞しました。
額賀氏を筆頭に、関係者らは女性皇族の結婚後の身分をめぐる議論について、今国会中の決着を目指していました。それゆえに、突然のトーンダウンには不自然さを感じざるを得ません。タイミングとしては、美智子さまの“介入報道”と妙に符号するので、何らかの影響があったととられても仕方ない状況です」(前出・皇室記者)
議論は振り出しに戻ってしまったともいえるが、先送りのいちばんの“被害者”は、ほかならぬ愛子さまである。
今年4月に日本赤十字社(以下、日赤)に嘱託職員として入社された愛子さまは、新入社員として日々研鑽を積まれている。
「雅子さまが名誉総裁として出席された全国赤十字大会では、来賓の案内係として裏方の仕事を全うされました。一社員として実務経験を積みたいという思いが強く、ほとんど休みなく出社され、上司や同僚と積極的にコミュニケーションを取られている。愛子さまの懸命なお姿には周囲も驚きを隠せないといいます」(日赤関係者)
日赤での仕事に従事される傍ら、皇室のご活動にも取り組まれている。5月には、“休日返上”で初めての単独公務に臨まれた。
「愛子さまは公務やお出ましをされることで皇室、ひいては両陛下をお支えしたいというお気持ちのある一方で、このまま皇室典範が改正されない場合には結婚によって皇室を離れることになるので、いつか訪れるかもしれないそのときのために、日赤での仕事を通して社会に慣れようとされている側面もあるそうです」(前出・日赤関係者)
前述のように、「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する」という案が皇族数の確保の策として検討されている。この案には、愛子さまの存在が前提としてあることは間違いない。
「会議に参加しているなかで強硬に反対する政党は特に見当たらないので、案は近々成立するだろうとみられていました。しかし、急に議論が停滞し始め、皇室典範の改正までたどりつくことができるのか、雲行きが怪しくなってきた。
自らが念頭に置かれている案が目下議論の対象になっていることは、愛子さまも自認されているでしょうし、もし案が決定されれば受け入れられることでしょう。ただ、皇室典範が改正するまでは、結婚するかどうかという人生の選択すらできないという状況は過酷です」(前出・宮内庁関係者)
制度のひとつも定まる気配のない一方で、「愛子天皇」実現を望む国民の声は日増しに大きくなっている。今年4月の共同通信の調査では90%、5月の毎日新聞の調査では81%が女性天皇を容認すると回答したのだ。「政府の有識者会議の最終報告書には、皇位継承において悠仁さままでの流れは『ゆるがせにしてはならない』と明記されており、愛子さまの置かれている複雑な状況と、国民の希望に大きな乖離がある状況です。
お出ましが増えることにより注目を集めれば、今後ますます愛子天皇の実現を望む声は大きくなるでしょう。そうした事態は悠仁さまのためにもできるだけ避けたいと、外出の際にはこれまで以上に注意を払いたいというご意向のようです」(前出・宮内庁関係者)
当事者である愛子さまのみならず、雅子さまもまた、当惑されているという。
「雅子さまは外交官として外務省の第一線でご活躍されたのち、皇室に入られました。一般社会と皇室の一長一短をご存じであるだけに、愛子さまがどちらに進まれようとも、母としての心配は尽きないでしょう。ただそれ以前に、将来の道筋の方向性すら定まらない現状に、長らく不安を抱かれてきたそうです。
ようやく議論が進もうとしていた矢先の、まるで美智子さまが口出しをされているかのような報道には、雅子さまも静かに怒りを燃やされているそうです」(前出・宮内庁関係者)
渦中の美智子さまのお姿は、5月28日午前10時すぎ、上皇さまとともに東武浅草駅にあった。上皇ご夫妻は手をつなぎ、歩幅を合わせてゆっくりと進まれた。ご体調は万全とはいえない様子ながらも、集まった人に向け、時折笑顔を見せられる場面も。
「31日まで日光を私的に訪問されるそうです。日光は上皇さまが疎開されたゆかりの地で、田母沢御用邸や、植物園、奥日光などを訪問される予定だといいます。上皇ご夫妻はかねて、国民と直接かかわることで活力を得てこられました。今回のご訪問でも、駅に集まった人や訪問先での歓迎に勇気づけられたでしょう」(前出・皇室記者)
美智子さまは上皇后となられてからも、折に触れて国民の目を気にかけられているという。
「紙媒体を中心に、国民の生の声を把握するよう努められているそうです。美智子さまは、昭和から平成の御代がわりの際にバッシングで苦しまれたご経験がありますから、雅子さまの“令和流”を尊重したいというご意向だといいます。それゆえに、例えば、美智子さまが雅子さまをないがしろにされているというような根拠のない報道や誤解を招くような表現を、ひときわ厳しく確認されているそうです」(別の宮内庁関係者)
もっとも、今回の「口出し報道」は、美智子さまご本人のあり方にとどまらず、皇室全体の問題にもなりかねない。禁忌であるだけに、毅然と否定されたのだろう。
「美智子さまにとって『介入報道』は寝耳に水だったに違いありません。美智子さまも、雅子さまと同じように、愛子さまの将来に大きくかかわる議論が迅速に進み、早急に結論が出ることをお望みのはずです。ご自身に関する報道が、結果として議論に水を差すような形となってしまったことに対して、非常に残念に、不本意に思われているのではないでしょうか」(前出・皇室記者)
天皇家の長女の将来は、いまだ不透明である。
※女性セブン2024年6月13日号