小池百合子氏、水原一平氏――著名人による経歴詐称が明るみになって世間を騒がせている。
7月に東京都知事選を控える東京都知事・小池百合子氏は、エジプト「カイロ大学卒業」という学歴だったが、カイロ大学時代の同居人が告発した内容により、学歴詐称疑惑が勃発。
一時、疑惑は晴れたものの、小池氏の元側近である小島敏郎氏が学歴詐称の隠蔽に加担したと告発し、再び各メディアから追及されており、都知事選への大きなダメージが予想される。
一方、「ロサンゼルス・ドジャース」大谷翔平選手の専属通訳だった水原一平氏の違法賭博問題が波紋を呼んでいたが、そんな水原氏にも学歴詐称疑惑がある。
5月15日にロサンゼルスの裁判所に出廷し、今後の判決について注目が集まっているが、同時にその学歴についても疑惑の目が向けられているのだ。というのも、当初はアメリカ「カリフォルニア大学リバーサイド校卒業」とされていたが、NBCロサンゼルス局の取材によると、同校は「彼が通っていた記録はない」と発表したのである。
さかのぼれば2016年、コメンテーターとして活動していたショーンK氏の経歴詐称が発覚し、騒動となった。「週刊文春」の報道によれば、過去に在籍していた海外の大学の経歴が嘘であったことが取材によって明らかとなり、ショーン氏も経歴詐称を認めたのである。
経歴詐称は、ファンや支持者を裏切る行為とされ、最悪の場合、活動を終了せざるを得ない事態にまで追い込まれるのは想像にたやすい。ところが小池氏や水原氏は、そのグレーなバックグラウンドについてこれほどの事態になるまで、大きな問題にはならなかったのが実情だ。
経歴は我々の考える以上に実態を明らかにするのが難しく、逆を言えば詐称しても意外とバレないものなのだろうか。そこで今回は、鈴木淳也総合法律事務所の鈴木淳也弁護士に経歴詐称について解説していただいた(以下、「」内は鈴木氏のコメント)。
そもそも経歴詐称してしまう心理とはどういったものなのだろうか。
「まだ無名で実績もほとんどないという時期ですと、もっと自分の力を示したいと思っていても、社会的信用を得られないのでそのチャンスがなかなか巡って来ないというジレンマがあるのでしょう。そんなとき、学歴や職歴は客観的な能力を示す証明になるため、自身の能力を高く見せることで活動の足掛かりにすべく、経歴を“盛る”選択をしてしまう人もいるのかもしれません。
経歴詐称を行ってしまう人は罪の意識が薄く、これぐらい大丈夫だろうと軽い気持ちで偽ってしまうのではないでしょうか。バレたときのリスクを熟考せず、目先の得だけを見込んでウソをついてしまうのだと考えられます」
経歴詐称の範囲は、学歴や職歴の詐称はもちろんのこと、資格の有無や業務内容など多岐にわたる。そして具体的な経歴のチェック方法は、基本的にはリファレンスチェックや卒業証明書、雇用保険被保険者証、退職証明書、源泉徴収票、年金手帳といった書類のチェックを用いて、実際の経歴と相違がないかチェックすることになる。
以上を前提に、経歴詐称のケースが多い項目について教えてもらいたい。
「やはり学歴や職歴、次いで資格の割合が大きいですね。学歴や職歴は、日本国内ですと個人情報保護法に則り、大学や企業に問い合わせても、本人の同意がない限り回答はもらえないのですが、卒業証明書や退職証明書、資格証明書を提出してもらうといった形でチェックすることは可能となっています。
事実とは根本的に異なるあからさまな経歴詐称は、バレやすい傾向にあるんです」
アメリカのように、国によっては大学や企業に直接問い合わせることで在籍や卒業した過去があるかを確認できる。水原氏の一件では、カリフォルニア大学リバーサイド校に問い合わせて確認ができたが、日本国内ではそれは叶わない。
こうした違いを鑑みるに、個人情報の保護に関しては日本のほうが厳しいと言えるものの、本人からの書類提出を求めるといった方法で、国内でも経歴詐称がバレる可能性は十分にあり得るのだ。
「とはいえ、能力や好感度が高い著名人の場合ですと、詐称しているわけがないという先入観もあり、経歴に関して疑われる機会も少ないのです。
たとえば水原氏の場合、大谷翔平選手の一通訳という立場を超え、彼自身もファンから愛された人物でしたので、違法賭博問題が取りざたされるまで経歴には注目が集まらなかったのではないでしょうか。事実、はじめに水原氏を雇用した『北海道日本ハムファイターズ』も彼の高い英語力を買って採用したのでしょうから、わざわざ経歴なんて詳しく掘り下げる必要がなかったと推測できます」
ちなみに、仮にメディアが水原氏の経歴詐称の証拠を事前に掴んでいたとしても、そのネガティブな報道によって国の宝である大谷選手のパフォーマンスに悪影響を与えてしまうかもしれないといった懸念もあり、報じるタイミングは慎重になる必要があっただろう。
記事後編は「採用活動で大誤算…!『ウソ』を見抜くのがほとんど不可能だといえる『履歴書の項目』」から。
採用活動で大誤算…!「ウソ」を見抜くのがほとんど不可能だといえる「履歴書の項目」