6月は、600品目あまりがまた値上げとなりました。加えて電気・ガスの補助金が終了、診療報酬改定による医療費の負担増、など財布から出ていくお金は増える一方です。かたや実質賃金は25か月連続マイナスで、政府肝いりの定額減税も、「値上げの穴埋めにしかならない」といった声も聞かれます。困窮子育て家庭等を支援している認定NPO法人・キッズドアの調査では、これまで「真夏にエアコンをつけずに我慢する」「子どもが進路の変更を余儀なくされる」など物価高騰にあえぐ、ひとり親世帯や多子世帯等の厳しい現状が明らかにされていました。
ところが最近、支援を担当する方々からは、「ちょっと違う傾向を感じる」という話が出ています。これまで『困窮家庭に当てはまらなかった』年収300万円~600万円の世帯からも支援を求める声が届いていて、「準貧困層」といっていい家族が増えているというのです、物価高騰の影響でしょう。〈キッズドアに届いた声〉・学用品をそろえるのが厳しい・美容室などは行けず、自分も子供もセルフカットをしている・食の質を下げて、買い控えている(肉、魚、野菜が高く、質を落としている)・コロナ禍では1回の買い物3000円台だったのものが、今は同様の量で5000円近くなっている・収入数万円の差で児童扶養手当て対象外になり、半額助成を受けていた学童保育料が上がって月約5000円支出が増えた・エアコンは必要最低限、食材は食べざかりの子供が2人いるため節約レシピでなんとか食い繋ぐ、外食なんてできない・日々の生活をすることが第一で、急な出費(病院や学用品)は本当に困る『子供の生活状況調査の分析(2021年)』では、児童のいる家庭のうち世帯年収が300万円から600万円の家庭は34%を占めます。日本の平均年収は458万円(民間給与実態統計調査・国税庁2022年)ですから、300万円~600万円世帯は一見、平均とその前後の層にみえます。しかし単身や夫婦のみ世帯に比べ、「子どもがいる家庭」は、経済的負担が大きくなるのが一般的。さらに年収300~600万円層の多くは、給付型奨学金や児童扶養手当などの支援を受けることができず、さらに今は高校生になれば児童手当ももらえなくなります。高校授業料無償化の自治体もありますが、授業料以外の入学金、教材費、タブレット等費用、修学旅行積立、制服や体操服などは実費負担です。これらの実費負担は、例えば東京の都立高校では初年度自己負担額は15万円ほど。私立なら80万円以上になります。一方で物価は上がり続け、数十円、数百円の値上げが積みあがると、もともとお金がかかる子育て世帯にとって、負担増が深刻な影響を及ぼしています。こうした家庭の声に接しているキッズドアファミリーサポート事業責任者の渥美未零さんは「給食のない夏休みは、家計の出費が増える。コロナ禍にはじまった夏の食糧支援では、極めて厳しい状況に置かれている困窮家庭が中心でしたが、今年は中間層から『公的支援などを受けられず、キッズドアにしか支援を頼めない』という声が届いていて、さらに厳しい夏になると感じています。」と話しました。渥美さんは、「こうした層の中には、『自分たちは支援を受けられない』と思っている人も多いんですが、適切な支援や情報を提供できるので、ファミリーサポートに登録してほしい」と付け加えます。5日に公表された去年の合計特殊出生率 は1.20で過去最低、去年生まれた子供の数も過去最少、結婚の件数も戦後最も少なくなりました。少子高齢化に歯止めがかからない中、今の子供たちを守るためにも、セイフティーネットから抜け落ちる「準貧困層」をどう下支えしていくのかは喫緊の課題と言えるのではないでしょうか。