(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
絵本作家の塚本やすしさんは、食べることもお酒も大好き。34歳のとき、突然倒れたことをきっかけに高血圧の薬などを飲み始めたものの、やっぱり暴飲暴食はやめられなくて……。塚本さんの著書『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』より一部を抜粋・再編集し、生活習慣病のリスクなどについて考えてみます。
高校を卒業してデザイン会社に就職。その後、退職し、友人とともにデザイン会社を作った。会社の経営も順調、個人としても好きなイラストの仕事ができて、忙しいけれど充実した日々。
サラリーマンの頃も、独立してからも、毎日が忙しく、徹夜が続いた。まだまだ紙媒体の仕事がたくさんあった時期だ。自分自身も20代、30代と若かったこともあり、無理も平気でやっていた。
とはいえストレスはたまる。たまったストレスは飲酒でまぎらわす日々だった。ほぼ毎日、仕事が終わると同僚と夜の町に繰り出していた。
そんな生活が続いていた30代の、ある冬の雪が降る日。私は会社で倒れ、救急車で運ばれた。ところが、特にどこも異常がなかったらしく、診察はあっけなく終わった。
医者からは「血圧が高いので近所の病院に行くように」と言われ、降圧剤を飲むことも勧められた。どうやら薬を一生飲まないといけないらしい。やだなあと思ったが、しかたがない。
【画像】トイレの便座が体重の重みで壊れるという、なんとも“痛い”体験などをイラストで(6枚)
30代はなんとかごまかしながら、医者とイタチごっこをしながら、薬をきちんと飲みながら、大病にもならないで過ごしてきた。ところが、40代になると体がガタガタと壊れてきた。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
まず、走れなくなった。赤信号になりそうなとき、走ろうとしてもひざが曲がらない。無理して走ると「欽ちゃん走り」になる。あと、腰が痛い。目もかすむ。臭いおならが出るし、涙も出る。白髪が増えた。散々だ。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
基本的に、一日中、コンピュータを置いた机の前で、ひたすら座って仕事をしている。ほとんど動いていないのに、ストレス解消のために食べて飲んでいたのだから太るわけだ。
ちょうどその頃、最初に通っていた病院の先生から、総合病院への通院を勧められたのだが、体重が88kgになっていた。私の身長は177cmなので明らかに肥満である。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
血圧や血糖値、中性脂肪の数値もよくないし、立派なメタボである。そういえば、この頃はタクシーをよく使っていたし、すべてがめんどくさく感じていた。
総合病院に通院し始めると、私はやせたり太ったりを繰り返して、忙しくなった。それには理由がある。
数値が悪いと主治医に怒られ、そのときは反省してダイエットして減量に成功する。その生活を続ければいいのだが、数値がよくなってほめられると、またしばらく暴飲暴食して体重が増える。こんなことを繰り返していた。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
正直、この頃はやせようと思ってちょっとがんばれば、体重はすぐに落ちていた。やせと肥満を行ったり来たりで自由自在だ。極端なダイエットに挑戦してやせすぎてしまったこともある。
ちなみに、身長177cmの適正体重は68kgらしい。68kgというと私が高校生のときの体重だ。その頃の写真を見ると、さすがに貧相だし、やせすぎている。体の見た目を商売にするモデルでも俳優でもないので、特に見た目は気にしない。血液検査の数値さえよければいいと私は考えた。
そして、自分自身の体感では、スッキリ見えて、体もラクで、(薬は飲んでいるが)数値も健康的な体重は、75kgだと感じた私は、ダイエットするときは75kgを目標にしていた。
病院に通いながらも、仕事が忙しいので暴飲暴食は繰り返していた。その結果、数値が悪くなると反省して、通勤に自転車を使う。するとすぐにシュッとやせた。
太っている時期は動くのがめんどうなので、運動はしていない。好きな銭湯にも行かなくなる。歯も磨かなくなる。歩いて5分の近所のスーパーの買い物も車を使う。布団の中に入るのもめんどうなので、ソファで寝ることもあったほどだ。
(出所:『イラスト日記 ゆるして!糖尿病』)
そういえば、トイレの便座が壊れたこともあった。
加齢とともに体の状態は悪化する早めに対応すればまだ間に合う
睡眠時間を削り、暴飲暴食を続けていれば、当然、体の状態は悪化していきます。血糖値、血圧、中性脂肪、肝機能など血液の状態が悪化しますし、体重が増えると腰やひざの痛みを感じるようになります。
走ろうとしても走れない、それも無理からぬことです。とはいえ、主治医に怒られるとすぐに体重が減るというのはすごいことです。食事や運動など、生活習慣を改善することができるのでしょう。
生活習慣病は、すぐに命に関わるものではありません。長年、その状態が続くことで血管に負担がかかり、深刻な合併症を引き起こします。1年でも1日でも早く、病気を招く生活習慣を改めることで、そのリスクはかなり下がります。
やせて数値がよくなった状態をキープできるのが理想ですが、数値が悪くなったからといってあきらめるのではなく、また節制する、その繰り返しが大切です。
(白澤卓二)

(塚本 やすし : 絵本作家)(白澤 卓二 : 医学博士、白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長)