富士山を隠すため21日に設置された大きな黒い幕。自治体がやむにやまれず設置したものですが、なかなかの圧迫感です。別の方法はなかったのでしょうか。

■富士山に“黒い幕”すっぽり

皮肉なほど澄んだ空にたたずむ富士。21日で“しばしの別れ”です。

富士山が“映える”として人気を集めた山梨県のコンビニ店。午後、見えなくなりました。屋根の上に富士山が乗ったような景色。黒い幕が遮ります。

午後になり、外国人観光客が姿を消すかと思いきや道路を横断する人は絶えず、イタチごっこは続きます。

■地元は“賛否両論”「隠すなんて…」

地元の人々の賛否は分かれています。

周辺住民

「私たちは反対です。世界中から富士山を見に来ているのに富士山を隠すなんてとんでもない。早く取ってもらいたい」

「マナーが悪いためにこうなってしまったかな」

危険な道路の横断やごみのポイ捨て、あげく撮影代行を商売にする人までも…。

こんな外国人観光客の意見もあります。

シンガポールからの観光客

「こんな事態になるなんて旅行客としてはとても恥ずかしい。黒幕を張ることになったのは私たちのせいです」

■住民は“苦肉の策”も…観光客殺到

これが苦肉の策であることは多くの人が承知していること。

周辺住民

「やむを得ない。苦し紛れの“苦肉の策”。他に方法がないんじゃないか」

この道をよく通るバスドライバー

「本来は隠してはいけないが、やらざるを得ない。あそこが設置したからと言って、他の場所に移る可能性もある」

実際、オーバーツーリズムはここだけの話ではありません。

黒幕が設置されたローソンから車で5分ほどの距離にある別のコンビニ店。普段なら、ここでも富士とコンビニ店が写真に納まります。歩道での写真撮影を遠慮するよう書かれた看板、さらにあいにくの空模様にもかかわらず、写真を撮影する人が絶えません。

外国人観光客

「ツアーガイドに連れてきてもらいました」

「きょうはとても素晴らしかったです」

「くもりだけどね」

■“映え”の分散化&宿泊税導入も

予想外の場所に押し寄せる外国人。一方、観光地も多くの客でにぎわいます。

「大石公園」では秋には赤いコキアと富士、初夏にはラベンダーと四季折々の花と富士のコラボレーションを楽しめます。

香港からの観光客

「きょうは富士山が見えないけど、花はとってもゴージャス」

専門家は、こうした観光地の発信で“分散化”することが必要と話します。

城西国際大学 観光学部 佐滝剛弘教授

「本当に来てほしい所で写真映えするところ、『こちらの方に来て下さい』と分散を積極的にやって、観光客をコントロールする時期にきている」

公園でも各地に分散化する手立てを講じています。

富士河口湖町 大石観光協会 梶原雅人副会長

「スタンプラリー。台紙にスタンプを押して、本栖湖とかに行ってもらったりして分散するような対策を取っている。富士山の形をしているので記念になる。人数にも制限があるので、分散して来ていただけたらいい」

さらに“有料化”も有効な手段だとしています。公園では、トイレや駐車場を有料化することも一つの方法と考えています。

梶原雅人副会長

「(駐車場)無料なので、ここに大勢くる。駐車場も少ないしトイレも少なかったりするので、そういうのを整備してもらって、お客さんに来てもらえれば」

また、コンビニ店のある富士河口湖町では宿泊税の導入を目標としています。

佐滝剛弘教授

「ごみ箱設置、多言語の案内を設置するのは一定の金はかかる。(観光客に)一定のお金を負担してもらい、観光客がより楽しく観光してもらうために使われることになる。(宿泊税は)今できる、一番分かりやすい方法かなと思う」