「パパ活」をしていたという女性から弁護士ドットコムに相談が寄せられています。
女性は、食事をする「パパ活のような関係」の男性がいたのですが、ある日、その男性の妻から数百万円の慰謝料の支払いと「援助してくれたお金」100万円の返還を求められたそうです。
女性によると、男性は偽名で既婚であることも知らなかったそうです。ただ、もともと女性は風俗店で働いており、男性が客として訪れたのがきっかけだったことや、ホテルで会ったことがあることから、男女関係を疑われているとのことです。
女性は慰謝料と「頂いたお金」の返金、合わせて200万円で示談交渉をしていますが、男性の妻に応じてもらえないといいます。女性は学生であり、できれば訴訟を避けたいそうなのですが、「200万円は低すぎる金額ではないとおもうの」と納得いかない様子です。
パパ活では“おぢ”(男性)と男女関係がないケースもあるそうです。そのような「おぢと食事をしただけ」という場合でも、慰謝料の支払いや「頂いたお金」の返金をする義務はあるのでしょうか。光安理絵弁護士に聞きました。
–パパ活で男女関係がない場合、不貞行為になりますか。また、妻からの慰謝料請求に応じる必要はありますか。
慰謝料の請求に応じる必要があるのは、不法行為(民法709条)にあたる場合です。
肉体関係がある場合が不法行為とされ慰謝料支払義務が発生します。肉体関係は性交及び性交類似行為を指します。今回のご相談者は、相手男性と食事をしていただけということですので、本来、不貞行為にはなりません。
ただ、ホテルで会っていたのが、ホテルの「レストラン」なのか「部屋」なのか、が重要です。ホテルの部屋で会っていたのなら、肉体関係が「ない」ことの証明が難しく、肉体関係があったと認定されるかもしれません。その場合、慰謝料支払義務が発生する可能性があります。
もっとも、女性が、男性が既婚であることを知らず、疑う余地もなかった(結婚指輪もしておらず、男性が独身であるかのようにふるまっていた)場合は、肉体関係があったとしても、慰謝料支払義務を負わないことがあります。
–パパ活で「頂いたお金」を相手の妻に返金する義務はありますか。
パパ活で頂いたお金は、「パパ」からの贈与となります。契約書を作成していない贈与契約は、取り消すことができません。よって、パパに返す必要がないのはもちろん、相手の妻に対して返還する義務はありません。
–妻との示談交渉が決裂して、訴訟になった場合、妻からの慰謝料請求や「頂いたお金」の返還が認められる可能性はありますか。
女性が提示している200万円という金額は、肉体関係があったとしても、相場としては十分と思われます。もっとも、相手の妻が、女性のことを絶対許せないと思っている場合などは、相場の慰謝料を提示しただけでは解決できない場合もあります。
示談交渉が決裂し、訴訟になった場合についてお答えします。不貞行為が存在しないなら、相手の妻の慰謝料請求や「頂いたお金」の返還請求は認められません。
もっとも、ホテルの部屋で会っている場合、不貞行為があったと推認されて、慰謝料請求が認められることがあります。また、相手男性が既婚者と知らなかったとしても、既婚かもしれないと疑っていた場合、慰謝料支払義務を負うことがあります。ただし、その場合も「頂いたお金」の返還義務は負いません。
【取材協力弁護士】光安 理絵(みつやす・りえ)弁護士大阪大学法学部、同大学院法学研究科修了後、パナソニック株式会社(旧松下電器産業株式会社)入社、本社法務本部配属。2003年司法試験合格、東京地方検察庁、横浜地方検察庁を経て仙台弁護士会に弁護士登録。2021年度仙台弁護士会副会長。現在、ソレイユ総合法律事務所代表弁護士を務め、離婚事件、交通事故事件、刑事事件等を多数扱っている。事務所名:ソレイユ総合法律事務所事務所URL:http://www.sendai-soleil.net/