東京・西新宿のタワーマンションの敷地内で、住人の元ガールズバー経営者のA子さん(25)がナイフでメッタ刺しにされて死亡した事件。東京地検は5月28日、A子さんの元客だった川崎市の運送業、和久井学容疑者(51)を殺人罪などで起訴した。同被告は、警視庁の調べに対して「事件直前にA子さんがSNSで配信した動画で自分を批判しているのを見て腹が立った。話をしようと思って会いに行った」などと供述しており、事件に至った詳しい経緯について捜査を進めている。
〈画像多数〉海やジャグジーでパートナーだった元夫のBさんと微笑むA子さんの“素”の写真と和久井容疑者のストーカー行為に恐怖し友人に送ったLINE画像
殺人などの罪で東京地検に起訴されたのは、川崎市の配送ドライバー、和久井学被告(51)。起訴内容によると同被告は今月8日の午前3時すぎ、東京・西新宿のタワーマンションの敷地内で住人のA子さん(25)の腹や首などを、持参した果物ナイフ2本で複数回刺すなどして死亡させたとしている。
和久井被告はA子さんが経営していた東京・上野のガールズバーの元客で、今から2年前にもA子さんにストーカー行為を行なったとして逮捕されていた。これまでの調べに対して「(A子さんとの)結婚を前提に1000万円以上の金を貸したが返ってこなかった」「お金を取り返すために自宅に行った」などと供述していたが、その後の調べで、事件を起こしたきっかけについて「事件直前にA子さんがSNSで配信した動画で自分を批判しているのを見て腹が立った。お金を返してもらおうと思い、話をするために会いに行った」などとも供述しているという。
「A子さんへのストーカー行為で『接近禁止命令』が出されたあとも、和久井は彼女のライブ配信を複数のアカウントを使い分け継続的に視聴していた。その一方で、捜査の焦点となっているのが二人の間であったとされる金銭のやり取り。和久井はA子さんに対して合計1650万円を渡していたと主張しているが、それもあくまでA子さんが過去に経営していた飲食店(ガールズバー含む)で客として使っていただけで『お店の開店資金として金を渡した』という事実はなさそうだ。さらに和久井が消費者金融から借りた700万円についても、『今回の件とは関係ない』と警察はみている」(社会部記者)
集英社オンラインでは、7度にわたり今回の“ストーカー事件”を詳報してきた。銀座のキャバクラでナンバー1だったA子さんは、当時、同店のボーイとして勤務していた元夫のBさんと交際をしていた。2021年に経営者として上野の湯島エリアにガールズバーやキャバクラ「C」をオープンしてからは、和久井被告にしつこく付きまとわれるようになったことでBさんの身を案じ、周囲には「もう(Bさんとは)別れた」とウソをついたまま、2022年ごろにBさんと結婚、だが今年3月に些細なことが原因でケンカとなり離婚してしまっていた。
A子さんは自身のInstagramで「実は2年前から結婚していました。だけど、これから離婚に向けて動きだします」といった内容をストーリーに投稿しており、A子さんの元同僚でBさんの親友であるD氏は「これが和久井を刺激して事件の火種になってしまったのではないか」と語っていた。
「自分はリアルタイムで配信を見てたわけではありませんが、事件後、知り合いが録画していた一部分の映像を見せてもらいました。事件が起きた日、A子さんは深夜から配信を始め、自身の結婚観をメインで話していましたね。当時、A子さんはBさんと別れたばかりだったので、(将来的に)子どもは欲しいとか欲しくないとか、旦那は必要か必要じゃないかとか、事実婚はアリかナシかとか、たわいもない話をしていました。それで深夜の3時ごろに『コンビニ行ってきまーす』と言って配信は終わったという感じです。配信の途中で和久井のことについても話していたそうです」(D氏)
D氏によると、2年ほど前に和久井被告がストーカー行為で逮捕される以前から、たびたびA子さんは自身のインスタライブやTikTokライブで、和久井被告について愚痴をこぼしていたという。現在ネットに流出し話題となっているのが、2022年3月に配信されたライブ動画だ。A子さんは「(和久井被告から)迷惑料はいただかないと、みたいな」「精神的にも傷つけたんだから」「その人に関しては命かけてやってる」などと動画内で発言していた。
「A子さんは和久井に付きまとわれていたころから、精神的には追い込まれていたにもかかわらず、ライブ配信では強気な発言を繰り返していました。これはA子さんの過去のSNSの華やかな投稿を見ればおわかりいただけますが、彼女は自分を“盛る”ことで人気を集めようとしていました。本当はどこにでもいる25歳の女の子なのに、常日頃から『この業界はセルフプロデュースが大事だから』と口にしていましたし、自分を大きく見せたいというか、強い女でありたいんだろうなというのは感じていましたね。何度か彼女に『そういうのは(ほどほどにして)やめたほうがいいんじゃない?』と言っても『それはわかってるんだけどさ』と言うだけでやめることはなかった。でも、本心では和久井にストーカーされていることを本気で悩んでいたし、何度も相談を受けていました」(同)
セルフプロデュースで自分を大きく見せようとしてしまった結果、和久井被告の”逆鱗”に触れてしまったA子さん。ストーカー事件から2年、なぜこのタイミングで再び和久井被告について触れたのだろうか。
「おそらく彼女も『もう(和久井には)何もされないだろう』と油断してたんだと思います。今から2年前は、和久井にストーカーされたのが原因で自らが経営するお店も閉めることになって精神的にも追い込まれていましたが、ここ1年ほどは、A子さんから和久井の愚痴を聞くことも一切なくなりました。彼女のなかでも、ようやく心の整理がついたのだと思います。それでいつものセルフプロデュースの一環で、あくまで『過去のネタ』として和久井について話したんじゃないかなって思います。A子さんはSNSを控えるべきだった。もちろん和久井が勝手に恨みをつのらせたのが一番の原因ですが…」
ストーカー中年男が夜の世界で羽ばたく25歳の女性に抱いたその執念とは何だったのか。事件の全容がわかるにはもう少し時間がかかりそうだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班