4月1日に青森県七戸町の私有地で、トラック運転手の谷名幸児さん(54)の遺体が見つかった事件。青森県警は捜査本部を設置し、5月18日に殺人容疑で谷名さんがかつて働いていた運送会社の社長、十枝内伸一郎容疑者(47)=加害目的略取、監禁、死体遺棄罪で起訴=らを再逮捕した。殺害方法は、複数人で谷名さんの両手足を結束バンドで縛って動けなくし、人がちょうど入るほどの容器に押し込めて、コンテナの中に放置するという残忍なものだった。
【写真】シングルファザーだった被害者の息子Aさん。言葉を詰まらせながら語った事件の真相とは
「殺人容疑で逮捕されたのは運送会社『十枝内運輸』社長の十枝内容疑者のほか、元同社社員の竹内洋容疑者(45)と原子豊容疑者(55)の計3人です。事件は1月7日の夜に発生しました。十枝内容疑者らが他の共犯者らともに谷名さんを玄関外におびき出し、暴行して車に監禁。そして、高さ約1メートル、直径約50センチメートルの円筒型のプラスチック製の容器に密封して数日間、コンテナに放置。生きたまま閉じ込めたと見られています。さらに後日、容器を土中に埋めて、また掘り返して別の場所に埋めていました。そして4月1日に、深さ約6メートルの土中から容器に入った状態で谷名さんの遺体が見つかりました。
県警は死因について、はっきりと特定していませんが、暴行による多発肋骨骨折による出血性ショック、呼吸不全と窒息の可能性があるといいます。谷名さんと容疑者らの間にはトラブルがあったと聞いていますが、その詳細について県警は捜査中ということで明らかにしていません」(事件担当記者)
NEWSポストセブンは4月、十枝内容疑者らが谷名さんに対する死体遺棄容疑などで逮捕されたことを受け、現地で取材をしていた。そこでは近隣住民らから、トラブルになった2人が大げんかをしていたことや、車が趣味の十枝内被告が真っ赤な愛車に日本刀のようなものを置いて、周囲に「あいつ(谷名さん)だけは殺してやる」などと言っていたことなどを報じていた。
殺人容疑で再逮捕という新たな局面を迎え、再び現地で取材をすると、殺害された谷名さんの息子Aさんに話を聞くことができた。離婚してシングルファザーだった谷名さんは10年以上、Aさんと2人暮らしだった。
「父は数年間まで十枝内運輸で働いていました。トラックの運転手です。父は我が強い人なんです。思った事はすぐ言うし、関わりたくない人やダメだと思った人は相手にしないんです。だから人と揉めることも少なくはなかった。何が理由で、ここまで酷い目に遭わされたのかは分かりませんが、会社を辞める時も、辞めた後も十枝内と仲は悪かった。
これまでもネットに書かれた十枝内の会社に関する悪評の原因が父にあるのではないかとかで揉めたり……。昨年の夏、父は十枝内と竹内に手を出したようだとは聞きました。でも何もなく手を出す人じゃないんですよ。理由も無しに手を出すような人ではありません」
Aさんはこう話し肩を落とす。
「十枝内の悪評はこのあたりでは有名です。何をされるのか分からないので、父も用心深くしていました。だから、家に来た人が宅配の市ノ渡(歩美被告=加害目的略取罪で起訴=)じゃなくて、十枝内本人だったら、絶対に鍵は開けていなかったと思います。
容疑者らの犯行は計画的なんですよ。後から知ったんですが、去年の夏ぐらいに共犯者のメンバーで飲みに行った際に、5万円で(呼び出す役の)人を雇おうだのと話していたと聞いています。警察に十枝内のLINEの内容を教えてもらったんですが、今日はAの車があるから辞めよう、といったやり取りがあったのも知っています。タイミングをずっと伺って、1月7日に決行されたんです」
警察から知らされた連れ去られた状況は耳を塞ぎたくなるようなものだった。
「宅配便が来たと思って、父が外に出たところ、陰に隠れていた十枝内が手を出してきて、父は倒れこみました。すると、竹内が足を抑えて父を起き上がれないようにして、十枝内が体の上に馬乗りになって、何発か殴って……そのまま車に乗せられて連れて行かれたんです」
その後、谷名さんは冒頭のように残酷な手法で殺害され、約3カ月を経て、変わり果てた姿となりAさんのもとへ帰ってきた。
「今思えば、自分の事を一番に思ってくれる父でした。僕がまだ幼い頃に離婚したんですが、裁判を何回もして僕の親権をとってくれました。それ以来、ずっと父と二人で生活してきました。父にはさんざん怒られましたけど、それは僕が悪いことをしたり、誰かに迷惑をかけた時でした。
捜査は進んで殺人容疑で逮捕もされましたが、良かったとか解決したとはまったく思えません。どうなっても満足はできないですよ。まずは何が原因で父はこんな目にあって殺されなければならなかったのか知りたいです。どんな理由であれ、十枝内らを許すことは生涯できないと思いますが……」
Aさんは時折言葉を詰まらせながら、声を絞り出すようにこう取材に応じた。