他陣営の街頭演説に執拗に“凸”。選挙カーを追い回して罵詈雑言。警視庁から出された公職選挙法違反の「警告」は無視。衆院東京15区の補欠選挙で起きた「つばさの党」による前代未聞の選挙妨害に批判が吹き荒れている。そもそも彼らは何者で何が目的なのか。そして、世間からの批判をどう受け止めているのか。党首の黒川敦彦氏(45)と最下位で落選した根本良輔氏(29)に話を聞いた。(前後編の前編)
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【写真7枚】「過激すぎる候補者」の“襲来”に備え、幾重ものバリーケードが張られた乙武陣営の「異常な警備体制」
――世間から強い批判が出ていることについて、どのように考えていますか。
根本氏 連日ニュースで報道されているので、世間の批判は理解しています。ただこれまで何度も言ってきた通り、合法の範囲内でやっています。選挙後にヤツらは逮捕されるだろうみたいな言われ方をされていましたが、現に警察は来ていません。
テレビの伝え方にも偏向を感じます。僕が妨害だけでなく、暴行までしたかのような報道になっていますが(註・乙武洋匡氏の街頭演説中、東京都大田区の荻野稔区議との間で起きたいざこざのこと)、僕らがSNS等で出している動画を見ていただければわかる通り、先に手を出したのは向こうです。
プラカードを掲げていただけなのに体当たりしてきた。僕はそれを振り払っただけ。なのにマスコミは向こうの話だけを聞いてこちらの言い分は聞きにすら来ない。我々を悪者にする意図を持っているとしか思えない。
黒川氏 僕らは各陣営に対してずっと「我々の質問に対して答えろ」と言ってきた。きちんと回答してきた陣営からは立ち去っているし、嫌がらせありきだったわけではありません。
我々が聞いてきたことは、彼らにとって聞かれたくないことなんです。小池さんで言うと新たに出てきた「学歴詐称疑惑」、乙武さんの場合は「不倫」。答えたくなかったのでしょうが、国民の誰もが抱いている疑問から答えずに逃げて、綺麗事ばっかり並べるのはもはや嘘のレベルだと思う。
嘘を撒き散らしながら有権者を騙して投票させる行為への疑問。今回の選挙戦でそのおかしさを可視化できたと考えている。法を犯していないし、表現の自由の範疇です。世間の批判も理解できますし、100パーセント賛同してくれとは言いませんが、我々の意見とも向き合って欲しいとは思っています。
――本来、選挙は当選することを目的として、有権者に主義主張や政策を訴えて支持を集めるものです。今回の手法は相手の批判ありきだった。
根本氏 その通りです。真面目にやろうが組織票相手では選挙には勝てない現実がある。であれば、高い供託金を払っているわけですし、まず我々の知名度をあげていくことを目的にこういう手法を取った。国民の過半数が支持政党なしという民意にも表れているように、今の国政政党には何も期待できない。けれど、選挙になると組織票で当選してしまう。民主主義もクソもない。まずはぶっ壊してみようぜってことでやりました。
黒川氏 ここまでのやり方をしたのは僕らが初めてでしたが、実験としてやってみて票を得られなかったのは事実です。一方、乙武・小池陣営の票数もかなり低い結果となった。それについて僕らは手応えを感じている。この結果を受け、もう小池さんは国政復帰を諦めただろうと政治に関わる人たちはみんな見ている。
言葉を選ばずに言うと、小池氏の政治生命を絶つことに貢献できたと考えています。維新の会の二番煎じみたいな綺麗事だけを言って、自民・公明となんら中身が変わらない既得権益政党が国政政党になることを阻止できたこと。そこに僕らの価値はあったのではないかと思う。僕らの理念から言うと、社会的正義を果たしたということ。
――やりすぎだったと振り返るところはないですか。
根本氏 改善する気は一ミリもありません。もし警察が来るとしたら今朝(4月30日)かなと思っていましたが来なかった。ニュースでも“警告をした”と言っているだけでしょう。違法ではないのです。マスコミは過剰に騒いでいる。
黒川氏 私もやりすぎたので何かを変えようとは一ミリも思っていません。社会的にご批判があるのも想定の範囲内。ここまで多様化した社会の中で、我々にネガティブな意見を拾うよりも応援してくれている意見を代弁していくことが大事だと思っています。最終日の演説にも100人以上の人が駆けつけてくれて、「もっとやってくれ」と声をかけてくれた。
別に攻撃だけをやっていこうという考えではなく、どこかで変わりうるとも思っている。僕らがやろうとしているポジティブな話も聞きたいという人も多かったので、最終日は他陣営の凸をやめて自分たちの街頭演説活動をやった。ただし悪いことをやっている相手を徹底的に批判するのは僕らの持ち味なので、そこは変わらないと思います。
――途中から警察のマークは激しくなっていたのではないか。最終日、凸をやめたのはそれが理由?
根本氏 僕らの話をじっくり聞いてみたいという人が多かったからで、警察が理由ではありません。
黒川氏 マークが激しくなっていたのは事実ですが、僕らは警察が選挙妨害と言ってきたこと自体が職権濫用の不法行為であるという考え。東京都に対しては国賠訴訟を起こしました。結局、警告止まりで逮捕できない。つまり僕らの行為を咎める法的根拠がなかったのです。暴力ではない言論を弾圧することは自由主義社会においては非常に難しい。だから、僕らは法的に許された権利を最大限行使しているということです。
――選挙カーで追い回す行為や相手の演説に近寄って太鼓で叩いたりする行為は、威圧したり脅迫しているように見えてしまう。暴力と受け取る人も多い。
黒川氏 そのくらいやらないと彼らは答えない。ただ、徹底的にやったことで一部対話に応じてくれる党はありました。維新の音喜多氏は2回もちゃんと我々の質問に答えてくれました。
――暴力的な集団ではない?
黒川氏 有権者が見ていて怖いと感じる人が出るのはしょうがないと思う。けれど、立候補している人に言いたいのは政治は闘いだということ。僕らが怖いと感じる人たちは政治に関わらない方がいい。質問に答えず逃げ回っているだけで僕らを暴力的だと言っているような政治家は、やめちまえと思う。
選挙でマイクがぶつかることはよくあること。ヤジも太鼓も言論の範疇だという考えで勝負している。現にテレビを見ていると、この件に言及するテレビコメンテーターの多くが僕らの行為を法で縛るべきではないと話していた印象がある。
――「ヘイヘイヘイ」と相手を嘲りながら歌っている姿や、勇んで凸する時のお二人の様子を見ていると、妨害行為を楽しんでいるように見えました。
根本氏 楽しさもなくはなかったけれど、どちらかと言うとしんどかったですよ。あっちの方が人数多いですから。例えば保守党のところへ凸かけた時は、僕の仲間は右ストレートを食らっていました。精神的な負荷の方が多かったです。
黒川氏 僕らは元々、活動を楽しもうというスタンスだから、楽しんでいたことを否定しません。ただ、こっちが間違っていたら闘争に負けることになる。一回一回、相手のことを調べたり考えたりしながら凸に行っているわけで、なかなか疲れましたよ。
――批判的に見られることについて何も思わないのですか?
根本氏 所詮、ネット上の話なので気にしません。リアルに会う人たちの半分は僕らに肯定的でした。
――都知事選には2人揃って立候補すると表明している。次も同様にやる構えですか?
根本氏 次は小池百合子へ集中砲火します。全身全霊をかけて落としに行く。
――街頭演説では「50人候補者を出せば100台の選挙カーを出して東京中で小池批判を展開できる」と話していましたが、本当にそこまで出来るのですか?
黒川氏 現実問題、50人は無理かもしれないが、複数人出す資金はある。今回の選挙結果で、都知事選に小池百合子が出てきても落選する可能性が出てきた。今のところの考えですが、都知事選については小池の対抗馬となる候補に対する攻撃は控え、小池を落選させる運動に集中すると思います。
後編【【「つばさの党」直撃90分】選挙妨害は「子供もいますが全く恥じていません」党首と候補者は「阪大卒&東大大学院中退」活動資金はどこから?】に続く
デイリー新潮編集部