北海道根室市の林道で28日午後、山菜採りに来ていた男性2人が乗った軽トラックをヒグマが襲った。衝撃でワイパーは壊れ、フロントガラスにも大きなひびが入ったが、男性2人にケガはなかった。クマはなぜ車を攻撃したのか。NPO法人「生物行動進化研究センター」のパンク町田理事長に聞いた。
ーーなぜ車に突進してきた?車に体当たりしてきたのは子育て中のヒグマです。

子熊がパニックを起こすと、母熊はそばにいる外敵らしきものに対して攻撃を仕掛けてきます。ですから、子熊のそばには絶対に近寄ってはいけません。攻撃したつもりがなくても、子熊がパニックを起こして走り出せば、母熊は原因となったものに対して襲い掛かる習性があります。
ーー子熊は何歳まで母熊と行動する?ヒグマの場合は、少なくても1~1年半は必ず母熊と一緒に行動し、中には3歳近くまで母熊と一緒に生活するケースもあります。今回も子熊らしきものが車の近くを走り去っているので、間違いなく親子で一緒にいたのだと思います。
もし誤って子熊を驚かせてしまった場合は、母熊との距離を取ることで、攻撃モードを解除できるという。
ーー遭遇した場合に気を付けるべきことは?気付かずに子熊を驚かせてしまった場合は、バックして母熊との距離を取るようにしてください。今回の軽トラは、母熊を見た後、一旦停止していますが、停まらず一気にバックで逃げた方が良かったです。母熊との距離を取ることによって、母熊の攻撃モードが解除されます。
ーー軽トラが前進したために母熊は追いかけてきた?車であっても、クマに背を向けて走るという行動は、クマの攻撃本能を刺激してしまいます。背中を見せて逃げることはタブーですが、今回のケースは、さすがに車には追いつかなかったので結果としてよかったと思います。生身の人間の場合は、クマに対して背中を見せて遠ざかることは絶対にしてはいけません。
5月を過ぎるとクマは発情期に入るが、子熊を食べてしまうオスもいるため、母熊はより神経質になる時期だとパンク町田氏は話す。
ーー特に警戒すべき季節は?子熊を連れている母熊への警戒という意味では、季節は関係ありません。冬眠から覚めた時点から、次の冬眠に入るまでの間、母熊はいつでも襲ってきます。さらに、5月を過ぎると今度はクマの発情期に入るので、オスがメスを求めてやってきます。子熊を育てているメスはオスを受け入れないため、(繁殖のため)オスが子熊を食べてしまう場合があります。それだけに、母熊が神経質になる時期でもあります。母熊は子熊を育てるのに一生懸命です。クマのいる地域では車から降りないことが正解だと思います。