「消滅可能性自治体」。文字通り、将来消滅の可能性がある自治体のことです。10年ぶりに最新のデータが発表され自治体の4割が2050年までに消滅するおそれがあると指摘されました。
【写真を見る】自治体の約4割“消滅の恐れ”前回調査で“全国ワースト”の村は今【news23】
前回の調査で“消滅の可能性が最も高い”と指摘された群馬県南牧村。人口減少を食い止めようとする取り組みを取材しました。
都心から車で2時間半ほどの場所にある、群馬・南牧村。2014年に「消滅可能性自治体」の中でも全国ワースト1位に。30年間で若年女性が89.9%減少すると推計された自治体です。
南牧村の住人「若い人と言ったって60歳すぎの人。不安になるよ」
その後、村を“消滅の危機”から救うため、役場が取り組み始めたのが、南牧村にある「道の駅オアシス なんもく」。運営は移住者らがメンバーになっているNPO法人に委託され、雇用の場となっています。NPOスタッフの給料は村役場の職員と同じ水準だそうです。
6年前に移住 有賀八重さん(45)「村の人も元気な方が多いので、暗いイメージは住んでいると感じない。希望があるとすごく感じます、若い人もたくさん入ってきている」
2年前に移住 大井川聖心さん(24)「高校生の頃から田舎暮らしに憧れていて、すごく楽しいですね。梅干し作るとか、いろんなことを南牧で経験できた」
2人が所属するNPOは他にも、老人ホームやケーブルテレビ、ケアハウスの業務も担当しています。
2年前に移住 大井川さん「移住してきた私にも『やってみないか』と声をかけられる。若い人にとってはやりがいのある村だという印象」
また、南牧村では保育料や学校給食費が無料に。さらに今年度から高校までの定期券代が全額補助され、村の外にある塾などに通う場合、ガソリン代が一部補助されるようになりました。
3月、埼玉県から引っ越してきた一家は…
母親(30代)「子どもにかかるお金はほとんどなくて、子育て支援制度の一覧を見て、前住んでいたところより手厚いなと」
小学6年生「自然がいっぱいだし、中学校と小学校が同じなので、先輩たちと活動できるのが楽しい」
村から転出した人は減りつつあり2022年は41人と、直近10年間で最も少ない数になりました。
そして24日、南牧村について…
人口戦略会議の発表「“消滅可能性自治体”に変わりはないものの、若年女性人口減少率が改善した」
ただ、若年女性の減少率は僅かな改善に留まっていて、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」によると、1556人の村の人口は、2050年に4分の1の406人に減ると推計されています。村は「住民や移住者に住み続けてもらうため、引き続き対策を進める」としています。
藤森祥平キャスター:「消滅可能性自治体」は、2050年までの30年間で20代から30代の女性の人口が50%以上減少する自治体ということで、一気に消滅するということではありません。
今回公開された報告書によると、自治体全体1729のうち、744の自治体が“消滅する可能性があるもの”に該当し、自治体全体の4割に当たります。
地域別で見ていきますと、最も多かったのが▼東北165、次が▼北海道117でした。その他、▼関東91、▼中部109、▼近畿93、▼中国・四国93、▼九州・沖縄76となっていて、比較すると九州・沖縄が少ないということになっています。
小川彩佳キャスター:消滅可能性の自治体が4割という結果はどうご覧になりますか。
小説家 真山仁さん:元々「消滅」という言葉に大変違和感があって、人口が減る=消えるわけではなくて、例えば人がある程度減ったことによってより過ごしやすくなり、より1人1人を公布できるわけですよね。
だから、こう言われて我々が「何か変わりますか」と言って変わることができるなら誰も困らないわけで、何かもう少し言いようがあるし、どんどん減って、あるところまで底を打ってから、楽しいことが起きるということを、なぜポジティブにそういうことも提案しないのか。10年前のときも相当を噛みついてました。
小川キャスター:でもこうした結果を受けて、改めて少子化対策が十分なのか若者にアピールするような対策がちゃんと打てているのかということを考え直すきっかけになると思うのですが…
真山さん:前から言っていますが、人口は多過ぎるので少子化は悪いと思っていません。例えば、地元の人がそれでいいというなら、その自治体によって「うちは減っていってもいいんだ」っていうのも一つの選択肢なんですよね。
「子どもの声を聞きたい」って言ったらどうすればいいのかを考えなきゃいけないのに、なぜプレッシャーをかけて「何とかしろ」と言うのか。それは民主主義が大好きな日本の人からすると、「大きなお世話」って、私は地元の人が反旗をひるがえしてほしいんです。
藤森キャスター:全国一律ではなく、それぞれの自治体で考えて話し合ってということですよね。そういった中で課題が見つかれば効果の高い事業をやっていけばいいという点だと思います。
例えば、千葉県北西部にある流山市。ここは全国の市の中で6年連続人口増加率1位にもなった市なんです。2005年のつくばエクスプレス開通が一つ大きなきっかけになりました。
市のキャッチフレーズは「母になるなら、流山市」。とにかく子育てのしやすい環境にしようと思い、力を入れました。そのうちの一つ、例えば送迎保育ステーションサービスがありまして、朝、駅前の集合場所に子どもを預けます。親御さんはそのまま出勤をする。お子さんたちは市内それぞれの保育園へこういったバスなどで送迎してくれるというサービスがあります。
子育て世帯がどんどん流入することで、駅前には大型商業施設が次々とオープンし、買い物も便利になって好循環が生まれる。少子化対策で数を増やそうではなく、子育てしやすい環境を作るために徹底的に自治体がリーダーシップをとって聞き込みを行ったそうです。それで“こうしてやろうじゃないか”と決めて貫いている結果だそうです。
小川キャスター:質を高めようという意志も感じますし、非常に努力されたんだと思いますけれども、つくばエクスプレス開通という、こういった外的要因は大きいですよね。
真山さん:それぞれの自治体の地域性のどこが売りで、どういうところから変えていくかというのは大事なこと。例を出されると、真似しちゃうんですよ。しかも、東北で例を挙げてくれないと。東京近郊で例に出されたら、「ここはいいよね」って思っちゃうと私は思いますけどね。
小川キャスター:それぞれの自治体に合った形というのがあるわけですけども、ただその外的な要因がない自治体はどうすればいいのでしょうか。
藤森キャスター:人口問題に詳しい藻谷浩介さんにお話聞きました。「東京の場合、家賃が高くて狭い。子育てには向かない」と。だから、「東京しか知らない人に、地方への留学などで試しに生活してもらおう」と、こういう発想はどうかと。
トラウデン直美さん:まさに藻谷さんのお話で思い当たることがあって、高校生のビジネスコンテストを見させていただいた機会があるんですけれども、高校生が「国内留学をもっとできるようなビジネスをやればいいんじゃないか」ということを提案されていて、自分のお子さんたちが手を離れた方が他の地方のおうちに高校生とかが留学して、「学校も自分で選べるようにしたらいいんじゃないか」「地方でしかできない経験をそこですればいいんじゃないか」ということを提案されていて、それはすごく素敵なアイディアだなと思いました。
高校生がそれを思い浮かべるというのも本当に素敵なことだと思いますけれども、やっぱりどうしても人口は動いていくと思いますし、動物たちの分布が変わるように人間の分布も変わるだろうとは思うので、それを「消滅」というふうに悲観的に捉えないで、その中でどういうふうにやっていこう、だったらもっと自然を生かしたことができるんじゃないかとか、逆に資源がそこにあるのかっていうことを考えればいいと思うので、そこまで悲観する必要もないんじゃないかな。その移動の過程で、不便を被る方がいらっしゃるなら、そこはケアしないといけないところですけど。
小川キャスター:それぞれの自治体をどういう自治体にしていくのか。そして国をどういう国にしていくのか早熟に考えていかなければ。
真山さん:ちょっと何か縁があった方がいいんですよ。両親が東京生まれの人が地方に暮らすという取材も昔にしたことがあります。最初のうちはすごく温かく迎えてもらっていると感じるんですけど、やっぱり地方には地方のコミュニティの中にどう入っていくかっていうと、都会みたいに大人が何してるか知りませんっていう言い方をしている人からすると、結構大変なんですよね。だからこれもすごくいいことだと思うんです。いいことなんですが、こうするべきだって言われたくないんですよね。
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Q.自治体間で若者の「奪い合い」どう思う?「競争は当然」…23.2%「制限も必要」…39.4%「望ましくない」…30.2%「その他・わからない」…7.2%
※4月24日午後11時17分時点※統計学的手法に基づく世論調査ではありません※動画内で紹介したアンケートは25日午前8時で終了しました。
======真山仁さん小説家「ハゲタカ」「ロッキード」など最新著書に「疑う力」
トラウデン直美さん慶応大学法学部卒環境問題やSDGsについて積極的に発信