ビジネスでは要約されたわかりやすい話が好まれます。元サッカー日本代表本田圭佑氏のスピーチを例に「誰にでも伝わる話し方」を解説します(写真:maruco/PIXTA)「数字に弱く、論理的に考えられない」「何が言いたいのかわからないと言われてしまう」「魅力的なプレゼンができない」これらすべての悩みを解決し、2万人の「どんな時でも成果を出せるビジネスパーソン」を育てた実績を持つビジネス数学の第一人者、深沢真太郎氏が、生産性・評価・信頼のすべてを最短距離で爆増させる技術を徹底的に解説した、深沢氏の集大成とも言える書籍、『「数学的」な仕事術大全』を上梓した。

今回は、「数学的な話し方」を取り上げ、元サッカー日本代表本田圭佑氏のスピーチを例に「誰にでも伝わる話し方」を解説する。
ビジネスでは要約されたわかりやすい話が好まれます。元サッカー日本代表本田圭佑氏のスピーチを例に「誰にでも伝わる話し方」を解説します(写真:maruco/PIXTA)
「数字に弱く、論理的に考えられない」
「何が言いたいのかわからないと言われてしまう」
「魅力的なプレゼンができない」
これらすべての悩みを解決し、2万人の「どんな時でも成果を出せるビジネスパーソン」を育てた実績を持つビジネス数学の第一人者、深沢真太郎氏が、生産性・評価・信頼のすべてを最短距離で爆増させる技術を徹底的に解説した、深沢氏の集大成とも言える書籍、『「数学的」な仕事術大全』を上梓した。
今回は、「数学的な話し方」を取り上げ、元サッカー日本代表本田圭佑氏のスピーチを例に「誰にでも伝わる話し方」を解説する。
「要するになにが言いたいの?」

「ちょっと何言っているかわからない」
社内外でのコミュニケーションにおいて、こんなフィードバックをもらうことは絶対に避けたいもの。いつの時代も、ビジネスでは要約されたわかりやすい話が好まれます。
私はこのような課題に関して「数学的に話す」という提案をしています。おそらく多くの方はこの「数学的に話す」という概念がすぐに理解できません。しかしビジネスコミュニケーションの正解は、間違いなく「数学的」というキーワードで説明できるのです。
「要するになにが言いたいの?」というフレーズは、聞き手が話し手に要約を求めていると解釈することができます。
ここで重要なことに気づきます。要約を求めているということは、その話は相手に「要約できる状態で伝わっていない」のです。
注意すべきは、「要約された状態」と「要約できる状態」はまったく違うということです。
「要約された状態」とは、「話し手」が要点をまとめたもので、話すのにかかる時間も短いです。一方で「要約できる状態」とは、必ずしもかかる時間が短いわけではなく、「聞き手」が自分でまとめることができるのです。
「要約された状態」と「要約できる状態」の一番の違いは、「誰が」要約するか(著者作成)
最大のポイントは、「要約できる状態」を実際に要約するのは聞き手であるということです。
では聞き手が要約できるために必要なことは何か。聞いた内容を一字一句すべて覚える暗記力ではありません。話の内容からキーワードを抜き出し、それらを論理で接続する思考力です。
裏を返せば、次の2つさえ伝われば、相手は要約できるのです。
・キーワード
・接続詞
あなたが要約して伝えるのではありません。相手が要約できるように伝えるのです。
ひとつ事例をご紹介しましょう。元サッカー日本代表であり、サッカー指導者、解説者、実業家として活躍されている本田圭佑さんの事例です。
本田さんは2023年3月18日、近畿大学の卒業式にゲストスピーカーとして登壇し、卒業生にエールを贈りました。
結果を出し続けている人であり、かつ伝える力があることが登壇の理由でしょうか。私も拝聴しましたが、実に知性ある話し方をする方だと思いました。その一部を(本田さんの発するすべての言葉をリスペクトしたうえで)究極まで要約して表現します。
“欲望を解放しろ” “限界を決めるな”↓(さらに)“環境にこだわれ”↓(以上より)“いつかは死ぬ”“生きたいように生きろ”
“欲望を解放しろ” “限界を決めるな”
↓(さらに)
“環境にこだわれ”
↓(以上より)
“いつかは死ぬ”“生きたいように生きろ”
この要約にはキーワードと接続詞しか存在しません。しかしこれだけの情報さえあれば、スピーチを聴いていない人でもどんな内容だったかは十分に伝わるはずです。
なぜ私がこの要約が可能であったかというと、キーワードと接続詞の存在だけに注目して本田さんの話を聴いたからです。
そういう意味で、私がこのように要約できるようなフレーズを本田さんがしっかり用意していることも心憎いなと感じました。
私はこのようにキーワードと接続詞だけで要約できる話し方を、「数学的な話し方」と呼び、ビジネスパーソンの皆様に推奨しています。
数学とは論理を使って主張が正しいことを論じる学問であり、その基本は次のような型です。
ある数aは偶数である↓(さらに)ある数bも偶数である↓(以上より)数(a+b)も偶数である
ある数aは偶数である
↓(さらに)
ある数bも偶数である
↓(以上より)
数(a+b)も偶数である
先ほどの本田さんの話と、まったく同じ構造をしていることに気づいていただけるでしょう。まるで数学のように無駄なコトバを一切使わず記述できる。これが数学的な話し方です。
本田さんが学生時代に数学の勉強をされたのかはわかりませんが、その話し方は極めて数学的であり、間違いなく本田さんはあの場で数学をしていました。もしご興味ある方はぜひ実際の映像をご覧いただきたいと思います。
まとめましょう。対照的な2つの例を挙げることで、「要約された状態」と「要約できる状態」の使い分けについて整理します。
「要約された状態」が求められるシーン
忙しそうにしている上司に声をかけ、1分程度で報告と合意をもらわなければならない
相手は忙しそうにしているわけですから、ここは「要約された状態」の内容を伝える必要があります。要約するのは聞き手ではなく話し手です。
「要約できる状態」が求められるシーン
リーダーが所属メンバーに向けて来年の方針を語る
ここは「要約できる状態」の内容を伝えるべきです。来年の方針という重要な話をするのに、一言あるいは一行でそれを表現し、話が終わってしまっては聞き手が困惑するでしょう。「なぜその方針なの?」「もう少しちゃんと説明してくれよ」と思うのが自然です。要約するのは話し手ではなく聞き手です。
もしあなたが後者のようなケースで話をする場合は、先ほどご紹介した本田圭佑さんのスピーチのような発想が求められます。キーワードと接続詞だけで表現できるような内容を準備し、熱意を込めて話してください。
「要するになんなの?」という指摘は、あなたが要約して伝えてくれないことへの指摘ではありません。あなたに「要約できる状態」をつくるスキルが足りないことへの指摘なのです。
もっと根本的なことを言えば、ビジネスにおいてキーワード(重要なメッセージ)や論理のない話を誰かに聞かせる行為はやめるべきです。なぜならその時間は、ただあなたの評価を下げるだけの時間だからです。

(深沢 真太郎 : BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家)