高校時代に発症した白血病を乗り越え、コロナ下で始まった大学生活も精いっぱい楽しみ、大好きなダンスに打ち込んできた森野晶(あき)さん(23)が18日、洗足学園音楽大学(川崎市高津区)の卒業を迎える。
これまで支えてくれた家族や学友、恩師らへの感謝の思いを胸に、新たな一歩を歩み出す。(鈴木英二)
■受験直前に
高校3年生で、大学受験を3週間後に控えた2018年10月。息切れや動悸(どうき)、月経が止まらないなどの症状が出るようになった。病院に行っても原因がわからず、学校では保健室で横になっていなければ耐えられないほど体がだるい。再度受診すると、血液検査の数値が異常だったため緊急入院。精密検査の結果、医師から「急性前骨髄球性(ぜんこつずいきゅうせい)白血病」と告げられた。
症状についてインターネットで調べて「もしかしたら」と恐れていた不安が的中してしまった。ショックは大きく、涙が止まらなかった。「今からのあなたの仕事は自分に集中すること。自分についてよく考えること」と医師に諭され、入試はいったん断念して「今は生きることに集中しよう」と気持ちを切り替えた。
抗がん剤治療では吐き気や脱毛などの副作用が出て、体重も10キロほど減った。家族を心配させないよう弱音は吐かず、副作用がつらくても「薬が効いている証し」と前向きに考えるよう努めた。しかし病院の外に出れば抜けた髪を冗談交じりに話題にされたり、興味本位で病気のことを質問されたり。傷つき、人間不信に陥った思いを文字でつづっては涙した。
■コロナ禍で
入退院を繰り返し、抗がん剤服用と定期的な検査を続けながら、19年11月の入試で見事合格。20年4月に洗足音大ダンスコースに入学した。大学生活に期待は大きかったが、コロナ禍の拡大で入学式もなく、講義はオンラインばかり。対面授業が始まってもマスク着用で声も出せず、皆でステージに上がることもままならなかった。
期待とは違う形で始まったが、ダンスが本格的に学べることはうれしかった。主に学んだのは、バレエやジャズなどのリズムを取り入れつつ、エンターテインメント性も加えた「テーマパークダンス」。楽曲に合わせて楽しく踊り、「見ている人に笑顔や幸せを届ける」のが魅力的だった。
一番の思い出は、先月の学生創作公演だ。企画、振り付けなどすべてを学生が手がける。大学生活の集大成のステージで、コロナ禍をともに乗り越えた仲間たちと泣きながら踊った。「本当に楽しかった。ダンスを選んで良かった」
■家族の支え
病気はほぼ完治し、現在は経過観察の状態となっている。卒業を控えた今、思い出すのは支えてくれた周囲のありがたさだ。病院食が口に合わない自分のために、毎日メッセージ付きの弁当を届けてくれた母。単身赴任先から時間の許す限り面会に訪れてくれた父、学生だった姉や妹。「大丈夫だよ」とメールで励ましてくれた友人たち。
そして何よりも、大病を乗り越えたことは大きな自信につながった。ダンスコース統括責任者の井口美穂教授は「真摯(しんし)に学び、前向きに学生生活を送っていた。これからも自由に好きなことを楽しんで」とエールを送る。
「やりたいことは何でも挑戦しよう」という気持ちが強まったという森野さん。卒業後はフリーの振付師として活動し、イベントで振り付け作品を披露したりするつもりだ。「様々な人たちにダンスの楽しさを伝えていきたい」