裏金問題をめぐってリーダーシップを発揮できず、支持率は超低空飛行の岸田文雄・首相。もはや党内で言うことを聞く者もいなくなりつつある──。
【写真】いまとは大違い? 昨年の党大会で笑顔で手を上げる岸田文雄・首相や茂木敏充・幹事長など
3月4日の自民党役員会はピリピリした空気が張り詰めていた。
政治倫理審査会での裏金問題追及を「知らぬ存ぜぬ」で通し、異例の土曜日国会で予算案を衆院通過させて年度内成立は確実になったものの、岸田首相の政倫審出席のパフォーマンスが自民党執行部との亀裂を決定的にしたからだ。
「役員会で茂木敏充・幹事長が報告する間、総理は“お前は何もしてないじゃないか”という顔で横向いて目を合わせようともしない。森山裕・総務会長も憮然としていた」(自民党役員付スタッフ)
役員会は10分ほどで終わり、岸田首相はそそくさと党本部を後にした。
「執行部は崩壊状態。誰も総理の言うことを聞かない。茂木幹事長はサボタージュを決め込んで、これだけ国会が揉めているのに、仕事がないから昼過ぎに党本部に来て、夕方4時に出ることもある。政倫審の出席者の調整もしなかった」(同前)
そんな茂木氏に岸田派の議員は、「幹事長でいられるうちにできるだけ党の政策活動費を持っていくことしか考えていないんだろう」と冷ややかな目を向ける。
自民党では茂木氏に代わって森山氏が国会対策から政倫審の出席者調整まで取り仕切り、“影の幹事長”と呼ばれているが、その森山氏もついに岸田首相に堪忍袋の緒が切れたという。森山側近が語る。
「森山さんは総理の指示で安倍派幹部を政倫審に出席させるため、なるべく非公開ということで野党と裏で話をつけようと動いていた。それなのに、総理が突然、『全面公開だ。俺が出る』と言ったから根回しが全部徒労に終わった。『だったら、最初からそう言えばいいじゃないか』とあの温厚な人が顔色を変えて怒り心頭に発していた」
幹事長は仕事をせず、“影の幹事長”にも見切りを付けられた。
「後見人」だった麻生太郎・副総裁も岸田首相が独断で派閥解消を決めてからは首相を支えようとはしない。
政倫審でテレビカメラの前でつるし上げられた安倍派幹部たちが“このヤロー”と岸田首相に恨みを抱いているだろうことは言うまでもない。
岸田首相は党内で完全に四面楚歌に置かれた。
そんな状況を見て政権の危機を強く感じているのが公明党の山口那津男・代表だ。政倫審が岸田首相の出席で全面公開となったことに、「首相が決断する前に党の責任を預かる方々が主体的に解決すべきだった」と、自民党執行部が誰も首相を支えようとしないことに異例の苦言を呈したが、岸田首相は党内の統治能力さえ失っている。
自民党内ではいつ、岸田おろしが始まってもおかしくない空気なのだ。
※週刊ポスト2024年3月22日号