シャキシャキとした食感の良さと、クセのない味わいが魅力のえのきたけ。白くてまっすぐなフォルムが特徴だが、それゆえに「どこから切り落とせばいいかわからない」という悩みも。生産者に聞くと、手間なく美味しく食べるポイントは「くびれ」と「丸さ」にあった。
【画像で解説】深すぎる「えのきたけの切り方」の世界 くびれ・袋ごと・隠し包丁
えのきたけは、根元すれすれで切ると束のまま。食べやすいよう、いくつもの房にパラパラとわける作業が必要に。細かく分けていくのは、中々面倒な作業で、やるたびにため息が出る。だからといって、えのきたけを真ん中あたりで切ってしまうと、食べられそうな根元を捨ててしまうことになり、もったいない。
このジレンマを解消するには、どこから切ればいいのか。えのきたけの日本最大の産地・長野県中野市にある、えのきたけ生産者さんが教えてくれた。
ーーーえのきたけを切る場所でいつも迷ってしまいます。ずばり、どこから切ればいいんでしょうか?
小池えのき代表取締役 古屋健太さん「くびれている部分からカットしましょう。くびれている部分を袋ごとカットすることによって、おが屑などの異物の混入を防ぐことができ、えぐみも取り除かれるので、美味しく食べることができます」
くびれは、えのきたけを栽培している筒状の容器の口の跡だという。このくびれ部分が、カットの目印になるほか、束状になっている、えのきたけをパラパラに分けることができる目印にもなるという。
ーーー鍋などに入れるとき、なるべく細かい束に分けて入れたいのですが、簡単な方法はありませんか?
「くびれの上、約4cmの部分から根元に向かって数か所、”隠し包丁”を入れることをおすすめしています。そうすると簡単にパラパラになりますよ」
包丁の入れ方を変えるだけで、難しい手間は一切なし。これで固まったえのきたけを分離させる煩わしい下処理から解放されるなんて、ありがたい。
ネットや料理本などでえのきたけのレシピを見てみると、「お好みの長さにカット」という表記をよく見かける。しかし、「お好みの長さ」とは、なんとも曖昧だ。切った長さによって、味に違いが出ないのだろうか。
「えのきたけは料理ごとにそれぞれ最適な長さがあるんです。その違いでえのきのおいしさがさらにアップするので是非、試してみてください」
【えのきたけの美味しさを引き出す最適な長さ(くびれからカットした下処理後の長さ)】
『約12センチメートル・麺と一緒に食べてダイエット』えのきたけのジューシーさや、ボリューム感を楽しむなら、そのままの長さで食べることがおすすめです。お鍋はもちろん、肉巻きや素揚げ、天ぷらも美味しいですよ。また、焼きそばや、うどんなどの麺に、同量のえのきたけを入れるとカロリーが抑えられ、噛む回数も増えるので、ダイエットレシピとしても最適です。
『約6センチメートル(半分の長さ)・餡が決め手の中華料理に』この長さは餡にちょうど絡みやすいので、とろりとした餡が決め手の中華料理にぴったり。チンジャオロースーやマーボー豆腐に入れると美味しいです。
『約4センチメートル(1/3にカット)・ご飯のお供に』お箸と絡めやすく食べやすい長さなので、なめ茸など、ご飯のお供になる料理におすすめです。他の具材も使う場合は、長さを均一にすると見栄えはもちろん、えのきたけのシャキシャキ感が味のアクセントになります。
『約2センチメートル・かさ増しにぴったり』和え物の具材としてえのきたけを入れることで、旨味が出るとともに、かさ増しにも役に立ちます。また汁物に入れると、とろみが出ますし、また煮詰めることで旨味も溶け出すので、ワンランク上の風味が楽しめます。
『根元部分・えのきステーキ』えのきたけをパラパラにするため、隠し包丁を入れる部分です。あえて包丁を入れずに、一塊になっている状態で焼いて食べる「えのきステーキ」が最近人気となっています。歯ごたえがホタテの貝柱のようで、口の中で錯覚が起きてしまいそうになりますよ。
ちなみに、えのきたけをカットするときは、根元からではなく傘側から切ると、まな板の上で、散らばるのを最小限に抑えることができるという。
そもそも、えのきたけを買うとき、どこを見れば良いのだろうか。
古屋さん「鮮度が良く、美味しいえのきたけは、袋の中でバラバラになっていない、丸くひと株になっている状態のものです」
古屋さんによると、流通しているえのきたけには「丸い」えのきたけと「丸くない」えのきたけの2種類があるという。
「えのきたけは、一般的に食べきれるサイズとして約200グラムで販売されています。ですが、多くの栽培ボトルは、ひと株あたり約330グラムに成長するので、出荷の際、200グラムにするために、丸い株を割ったり、足したりすることがあります。そうなるとどうしても鮮度が落ちてしまいます」
約200グラムになるよう、小さなサイズのボトルで栽培されたものは、そのまま包装して出荷することができる。収穫して袋詰めするまでに、ほぼ1回しか触ることがないのでより新鮮な状態なのだという。
次にえのきたけを買うときは、その「丸さ」に注目だ。