いいお相手が見つからない…。婚活を続ける人たちが陥る「婚活うつ」の対処法とは(写真:hanack/PIXTA)
婚活すれば結婚できると思い、お見合いを続けていても、結婚をしたいと思える人になかなか出会えない。最初は前向きな気持ちで始めた婚活だったが、何を判断基準にして相手を見極めたらいいのか、だんだんとわからなくなって八方塞がりになる。
そして、婚活疲れを起こして、気持ちが沈んでいく……。
仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく本連載。今回は、“婚活うつ”からの脱却方法を一緒に考えていこう。
みやび(35歳、仮名)は、婚活を始めて1年になるのだが、先日こんな相談をしてきた。
「何だか人と会うことに疲れてしまって、お見合いをしても、お相手のことを肯定的に見られなくなりました」
彼女が婚活を始めたきっかけは、大学時代の親友の結婚だった。「結婚相談所に入って婚活をしていた」ことは聞いていたのだが、そこから半年で、1つ上の上場企業勤務の男性との結婚を決めたのだ。
入会面談に来たときに、みやびは言った。
「やっぱり行動することが大事だなって。友人はお見合いを始めて3カ月目くらいで今の旦那さんになる人に出会って、3カ月で結婚を決めたそうです。彼女から、『もう35歳だし、普通に生活していたら、結婚相手に出会うことなんてほとんどないよ。登録して婚活したほうがいい』と勧められました」
また、「もう時間は無駄にできないんだから、結婚する意思のある男性に出会っていったほうがいい」ともアドバイスされたという。
写真スタジオで清楚な明るい雰囲気の写真を撮り、登録をすると、みやびには多くの申し込みがかかった。そんななかで、彼女が相手を選ぶ条件を、4大卒以上、年収600万円以上、年齢はプラスマイナス3歳、今の仕事を辞めたくないので、相手の居住地も仕事場に通える範囲と限定した。
かなり条件を絞り込んでいるのだが、これも結婚した友人が、これらの条件を満たす男性と結婚できていたからだ。
そして、見合いをしていったのだが、仮交際に入っても1、2度会うと、みやびから交際終了を出すか、相手から交際終了が来るかで、どうも先に進めずにいた。
そんななかで半年経ち、たつお(32歳、仮名)と真剣交際に進むことになった。ところが真剣交際に入った途端に、たつおが地方へ転勤することが決まった。
「彼との結婚を選択するなら、私は今の仕事を辞めないといけない。もしくは別居婚になる。私は仕事を辞めたくない。この歳で別居婚をしたら、子どもができるチャンスが減るし、運よくできたとしてもワンオペの育児になる。そんなことをいろいろ考えていたら、自分の生き方を変えるほど彼のことは好きではないと気づきました。交際は終了しようと思います」
そして、真剣交際を終了した。
そこから、またお見合いを再開したのだが、断ったり、断られたりの連続で、真剣交際に進む相手は見つからず、「お見合いをしても、相手のことを肯定的に見られなくなった」という、冒頭の発言となった。
みやびは、理想の相手とすんなりと出会えた友達の成功事例があったので、自分も簡単に理想の相手が見つかると思っていたのだろう。
婚活は、就職試験や資格試験とは違う。頑張れば頑張っただけの成果が出るものではない。
結婚相手に出会えるのは、くじ引きで当たりが出るのと同じ、運のようなものだ。初めてのお見合い相手と結婚できる人もいれば、何十回とお見合いしても結婚相手が見つけられない人もいる。
婚活うつにならないために大事なのは、他人の婚活成功事例と自分を比べないことだ。
疲れたら期限を決めて、婚活から離れてみることも大事。お見合いに使っていた休日を旅行することに使ったり、趣味に没頭したり、女性の場合はネイルやエステにいって自分磨きをするのもいいだろう。
仕事でいうところのリフレッシュ休暇を取ってみるイメージだ。
ただ、あまりにも婚活から離れてしまうと、結婚したいという気持ちの糸が切れてしまうので、休む期間を決めるといい。例えば、月の頭から3週間くらいは休む。最後の1週間は、またお申し込みをどんどんかけ出す。そんなふうにして、翌月からまたお見合いを再開してみる。
こずえ(29歳、仮名)は、2年ほど前に婚活アプリに登録して、婚活をしていた。アプリで出会った男性10人近くと会ったのだが、なかなかうまくいかなかった。
「アプリで出会う人って、結婚よりは、まず恋愛をしたいという人たちなんです。あと、遊び目的、体目的という人もいました。もう30歳が見えているし、結婚を考えている人と出会いたいんです」
入会面談のときにこう話していた。29歳は結婚相談所では、たくさんのお見合いが組める年齢だ。ことに、こずえは見た目も可愛らしかったので、登録すると驚くほど申し込みがきた。
筆者は、こずえに言った。
「たくさん申し込みが来ているからといって、手当たり次第お見合いをしたら、何がよくて何が悪いのか判断できなくなります。本当にお会いしたい人だけに絞ってお会いするなど、ていねいに婚活をしてください」
そこで、自分に近い年齢、高年収、見た目がタイプの男性を絞りこみ、お見合いをしていった。ところが、お見合いからお付き合いに入り、1、2度デートをすると、決まってこずえから“交際終了”を出してきた。
「話が噛み合わないって思うようになりました」「食事を一緒にすると、食べ方がどうも気になります」「『髪がきれいだね』ってなでられたんですけど、いきなりだったので背中がゾクッとしました」「母親の話が多いので、ちょっとマザコンかも」などと、断りの理由はさまざまだった。
こうして、6人目の男性との交際が終わったときに、こずえが筆者にこんなことを言ってきた。
「私、前々から蛙化現象のクセがあるんです。相手が私に好意を示してくれると、急に気持ちが冷めてしまうんですよね」
蛙化現象とは、2023年の流行語大賞のトップ10にも選ばれた言葉だ。
みにくいカエルが実は王子様だったというグリム童話『かえるの王さま』に由来している言葉で、「好意のある相手が自分に好意があるとわかると、逆に嫌悪感を抱いてしまう」というもの。
最近では、“相手のちょっとした行動や言動で好意が冷めてしまう”という意味にも使われているようだ。
筆者は、こずえに言った。
「『蛙化現象』という言葉にとらわれていると、思考がどうしてもそちらに引っ張られてしまいます。それに、婚活は蛙化現象を起こしやすい出会いなんですよ」
なぜかといえば、婚活は最初の選別を1枚のプロフィールシートでする。そこに記されている情報を見て、“この人となら結婚したい”と合格点を出した相手に会いにいく。
“婚活は、加点法でお相手を見ないといけない”とは、よく言われることだが、最初にプロフィールの情報が頭に入っていると、リアルな本人を目の前にしたときに、どうしてもその情報とリアルな本人を比べてしまい、自然と減点法になっていく。
「年収が高いのに、割り勘なんてケチだわ」「スーツのときはかっこよかったのに、私服がダサダサ」などなど。
こずえも然りで、理想の王子だと期待していた相手の話がつまらなかったり、食べ方が汚かったり、その相手から触られたときに悪寒が走ったら、王子様が一気にカエルになってしまうのだ。
蛙化現象を起こしやすいのは、男性も女性も深い恋愛をしたことがない人に多い傾向にある。
完璧な人間などいない。男女の付き合いが長くなれば思いやりも育つので、ダメな部分もかっこ悪い部分も受け入れることができるようになる。ところが、浅い恋愛しか経験したことがない人は、相手を表面的なことで判断しがちだ。
ことに婚活での出会いは、2人に付き合ってきた歴史がないのに、“この人とは結婚できるのかどうか”というジャッジを常にしながら相手を見つめているので、嫌なところが見えると気持ちが一気に冷めてしまう。
蛙化現象を起こしやすいこずえのようなタイプは、相手の表面よりも内面を見るように心がけてみたらどうか。口がうまくて女性を上手にエスコートできるハンサムよりも、無骨でも責任感のある男性の内面にフォーカスして考えてみる。
かっこ悪い部分も愛せる感情を自分の中で育てていくようにしたら、八方塞がりだった婚活が、スルッとうまくいくようになるのではないか。
ますみ(41歳、仮名)は、婚活を始めて10カ月が過ぎた。月に2、3人のペースでコンスタントにお見合いをし、交際に入った相手も何人かいたのだが、真剣交際に進める相手には出会えずにいた。
「婚活を簡単に考えていましたが、結婚できる相手に出会うのって、なかなか難しいのですね」
努力したからといって、それが実るとは限らないのが婚活だ。ますみの場合は、お見合いが成立しても、相手がなかなか日程を出してこなかったり、交際に入っても次のデートが決まらなかったり、デートの日程が決まっても相手が会う店を丸投げしてきたりと、動けない男性にばかり当たってしまった。
あるとき、ますみがため息まじりに言った。
「皆さん、本気で結婚したいのでしょうか? 婚活をなめていますよね。もう婚活することに疲れてきました」
そんな愚痴をこぼしながらも、休むことなくお見合いを続けていたのだが、年明けからますみの仕事が繁忙期に入った。仕事が忙しい中でもお見合いを続けていたのだが、先日、荒々しい口調でこんな連絡をしてきた。
「この間、お見合い成立した方、こちらが日程出ししているのに、お返事はまだですか。あと、交際に入ったこまつさん(仮名)ですが、こっちは忙しい合間に連絡して会う努力をしているのに、まったくやる気が感じられない。本当に腹立たしい。いい加減にしてほしい。交際終了にしてください。もうやってられない!」
仕事が忙しいとどうしてもストレスが溜まる。そんななかで、お見合い日程を相手が出してこないと、ストレスの2乗。デートの日程がなかなか決まらないと、ストレスの3乗。そして爆発をする。
そうなると気持ちも言葉遣いも荒くなるし、行動も投げやりになってくる。“このまま婚活を続けていても、結婚相手には一生出会えないのではないか”という気持ちになる。
相手を腹立たしく思ってしまうタイプは、努力家が多い。「自分がこんなに頑張っているのに、相手は何をしているのか」「忙しい時間をやりくりしてなんとか会おうとしているのに、なぜ日程を出してこないのか」
こうしたタイプは、自分の頑張りと同じ量の頑張りを相手に求めるのだが、相手は自分とは別人格なのだから、期待しないほうがいい。動けないと思ったら、さっさと交際終了を出して、ストレスの原因となる相手との関わりを断つことだ。
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婚活がうまくいかない日々が続くと、何が正解なのか、何が間違っているのかがわからなくなってしまう。それが婚活うつになる要因だ。
そんなときは、突き詰めて考えずに、いったん力を抜いて、今の状況や気持ちをリセットしてみてはどうか。
ただ1つ言えることは、いつ結婚相手に出会えるかわからないのが婚活なので、出会いをやめてしまったら結婚は遠のく。地道な出会いの努力が結婚への最大の近道なのは、忘れないでほしい。
(鎌田 れい : 仲人・ライター)