衣料品店「ユニクロ」で大量の商品を万引きしたとして、大阪府警は28日、30~40歳代のベトナム国籍の女3人を窃盗容疑で逮捕した。
捜査関係者への取材でわかった。ユニクロの商品は同国で人気で、3人のうち1人は「万引きするために来日し、何度も盗んだ」と供述。府警は同国に運んで売却する目的だったとみて調べる。
捜査関係者によると、3人は2月1日午前11時55分頃、大阪市鶴見区の大型商業施設内にある「ユニクロ イオンモール鶴見緑地店」でブラジャー37点(約8万4700円)を盗んだ疑い。
府内のユニクロ店舗で1月26日~2月1日、女性用の上着や下着など計約710点(280万円相当)が盗まれる7件の事件が相次ぎ、府警は周辺の防犯カメラ映像などから複数のベトナム人が関わったとみて捜査。翌2日夜、3人が京都市山科区の商業施設のユニクロ店舗で女性用パーカ1点(約3000円)を盗むのを警戒中の捜査員が確認し、窃盗容疑で現行犯逮捕していた。
店内では1人が持ち込んだバッグに商品を入れ、他の2人が視界を遮るように囲んで立っていた。3人のうち1人が持っていたスーツケースには、購入前の同種のパーカ15点が入っていた。店外には見張り役とみられる男もいたが、逃走したという。
3人は知人で、大阪府内のユニクロ店舗で大量窃盗事件が相次ぐ直前の1月25日、15日間の短期滞在ビザで来日し、大阪市内の民泊に宿泊していた。うち2人は現行犯逮捕後の調べに容疑を認め、別の1人は「観光で日本に来ただけ」と否認したという。
ユニクロを狙ったベトナム人窃盗団による万引き事件は各地で起きている。
福岡県警は今月6日、県内のユニクロなどで万引きを繰り返したとして、30~40歳代のベトナム国籍の男女4人を窃盗容疑などで逮捕、送検したと発表した。2018年以降に出入国を繰り返し、66回の万引きを重ねたという。
4人はベトナムに住む首謀者とみられる女から指示を受け、出入り口が複数ある商業施設内の店舗を狙い、精算前の商品が防犯ブザーに反応しない特殊なバッグを使用。指定された商品を買い物かごからバッグに入れ替える役や店外でスーツケースに詰める役などを分担していたという。
■日本のタグ付き、高値で取引
なぜ日本のユニクロが狙われるのか。
運営するファーストリテイリング(山口市)によると、ユニクロは昨年8月末時点で日本に800店舗あり、海外では北米や欧州、中国、東南アジアなどで1634店舗を展開。ベトナムには2019年に初めて進出し、今年1月時点で22店舗に増えた。
捜査関係者らによると、ベトナムではユニクロの商品は高級品として扱われ、フリマサイトでも人気が高い。模倣品も多いため、日本のタグが付いたものは本物とみなされ、同国の商品より高値で取引されやすい。日本の店舗は多くで無人レジが導入され、店員の目がない場所で商品を選びやすいのに対し、ベトナムの店舗は警備員が配置され、万引き対策は厳重だという。
ファーストリテイリングなど100団体が加盟するNPO法人「全国万引犯罪防止機構」(東京)によると、2011年以降に起きた来日外国人による万引き被害について容疑者を国籍別で見ると、毎年、ベトナム人が最多だった。22年の万引き被害2621件のうち、約73%の1927件でベトナム人が摘発された。
同機構の担当者は「日本で万引きをして逮捕されても強制送還されるケースが大半で、本国で商品を売って得る利益の方が大きいと考える組織があるのだろう」と語る。
日本におけるベトナム人犯罪に詳しいルポライター安田峰俊さん(42)は「日本とベトナムを結ぶ格安航空便が増え、行き来がしやすくなっている。国をまたいだ捜査は難しく、ベトナムに戻れば逃げ切れると考えるケースも多いのではないか」と話す。
ファーストリテイリングは取材に対し、「各地で大量窃盗の被害が相次いでいることは把握しているが、セキュリティーの観点から詳細は差し控える」としている。