「命が奪われた結果は重い」
裁判長はこう断じながら、被告の置かれた状況には配慮をにじませた。
「恋愛感情を知人男性らに利用され、売春を繰り返し犯行にいたった。ある程度、同情の余地があり考慮すべきだ」
東京地裁(坂田威一郎裁判長)は2月20日、傷害致死や窃盗などの罪に問われている無職・藤井遥被告(26)に懲役6年(求刑同9年)の判決を言い渡した。藤井被告は’22年1月、東京・池袋のホテル内で当時82歳だった男性をカッターナイフで刺し死亡させたとされる。
「藤井被告には思いを寄せる男性Aがいました。藤井被告には軽度の知的障害がありましたが、Aは藤井被告の好意を利用しカネを要求していたとか。ノルマは1日2万円です。藤井容疑者はノルマをこなすため、路上で見知らぬ男性に声をかけるなどして売春をしていたといいます。
客とトラブルになると、Aや彼の弟が対応。Aは公判で読み上げられた供述書内で、次のように語ったとされます。〈(藤井被告へ)恋愛感情はなく売春の道具としかみていなかった〉と。当該の事件で藤井被告は、被害者の目を盗んで財布から現金3万円を盗んだのがバレ犯行に及んだそうです」(全国紙司法担当記者)
『FRIDAYデジタル』は’22年1月26日配信の記事で、藤井被告の犯した事件について詳しく報じている。再録し、藤井被告の置かれたのっぴきならない状況と犯行後の異様な言動を振り返りたい(内容は一部修正しています)ーー。
「よかったらホテルに行きませんか?」
東京・池袋の繁華街路上で、女は82歳の男性に声をかけた。2人は近くのラブホテルへ。男性が遺体となって発見されたのは、その約1時間半後のことだーー。
1月22日、警視庁は殺人の疑いで住所、職業不詳の藤井被告を逮捕した。前日21日の夜8時から9時ごろ、池袋のホテル客室で埼玉県さいたま市に住む男性を刺殺したとされる。
「2人に面識はありません。事件当日、藤井被告は自分から男性に声をかけホテルに誘ったようです。JR池袋駅近くの防犯カメラには、周囲をうかがいながら男性に声をかける藤井被告の様子が映っていました。室内で2人はなんらかのトラブルに。藤井被告は持っていたカッターナイフで、男性の胸や太モモを刺し殺害します。
その後、藤井被告は一人でホテルをチェックアウトし公衆電話から110番通報。友人を装い部屋番号を伝え、警察に『〈ヤバい来て〉と知人からラインが入った』と話していました。警察官が現場にかけつけると、男性が血を流しイスにのけぞった状態で亡くなっていました。藤井被告は、デートや肉体関係の見返りに金銭をもらう『パパ活女子』だったそうです」(全国紙社会部記者)
被害男性の財布からは、現金がなくなっていた。カネのやりとりで、藤井被告とトラブルになったとされる。「パパ活」で相手と問題が起きた際の護身用か、藤井被告は普段からカッターナイフを持ち歩いていたという。
驚くのは、犯行直後からの行動だ。
「藤井被告はホテル近くで、好意を寄せる男性Aや彼の弟と合流します。藤井被告は事件の数年前にAとネット上で知り合い、普段から『パパ活』で得たカネを貢いでいたそうです。
3人は新宿へ移動。歌舞伎町のカラオケ店に入りました。事件を起こした藤井被告を、歌で励ます意図があったのでしょうか。ただAの供述によると、藤井被告は『元気がなくカラオケであまり歌っていなかった』そうです」(同前)
カラオケ店を出た3人は、タクシーで再び事件現場のホテル前へ移動。複数の捜査員が出入りし、規制線が張られた物々しい雰囲気に事態の深刻さを知り、その場からスグに立ち去る。
「3人は新宿に戻りネットカフェに宿泊。『捕まらないように遠くまで逃げよう』と話し合います。逃亡先に選んだのは、A兄弟の地元で『土地勘があり逃げやすい』という東京都西部の八王子です。
事件翌日の22日朝、3人は電車でJR西八王子駅へ向かいましたが駅から出たところを追跡していた警察官に身柄を確保されました。逮捕された直後、藤井被告は警察車両内で泣き崩れたそうです」(別の全国紙記者)
殺害事件を起こした藤井被告はもちろん、彼女の心理を悪用した男たちの罪も深い。