神奈川県小田原市議会の大川裕議長ら市議5人が昨年7月の議会運営委員会の行政視察の日程中に大阪市内のキャバクラなどで深夜まで遊興していたことが23日、関係者の話で分かった。同9月に匿名の告発文で発覚した。
告発者が5人に対し「議員辞職すべきだ」と訴えたことから大川議長らは「刑法の強要罪に当たる」と主張し、神奈川県警に告発者の捜査を要請。関係者からは「事実を隠し、公益通報者に圧力をかけようとしている」との声も上がる。
5人は自民、公明、日本維新の会に所属。視察は公費約60万円をかけ、議運委員と議会事務局職員ら計11人が昨年7月に1泊2日の日程で大阪府内を訪問。初日の夜に議長ら5人と議会事務局職員1人が私費で大阪・心斎橋の「熟女キャバクラ」に入店し、2軒目のバーも含めて翌日午前0時過ぎまで飲んだ。
告発文は同9月に篠原弘副議長と議会事務局長宛てに匿名で届き、5人がキャバクラに入店する写真なども証拠として添えられていた。「市議会の信用を大きく失墜させる行為」と糾弾し、議員の謝罪や辞職、再発防止を求めた。
複数の関係者によると、告発を受けて5人と議会事務局は「視察への影響はなく法的に問題ない」として辞職を拒否。逆に告発者が「(再発防止策などが)誠実かつ迅速に実行されなかった場合には事実を社会に公表せざるを得ない」としたことに対し、小田原署に被害届を提出した。
一方で情報を知った市民団体が同10月に告発文を情報公開請求したところ、市議会は公益通報者保護を理由に文書の存在すら明かさず非公開とした。団体関係者は「片や公益通報者保護を名目に情報公開を拒み、一方で通報者を犯罪者と見なしてあぶり出そうとしており、議長らの行動は矛盾している」と批判した。
刑法の強要罪は本人やその親族に対して生命や名誉などに害を与える旨の告知をし脅迫した場合が対象となるが、告発文の宛先は当事者ではない篠原副議長らだった。かながわ市民オンブズマンの大川隆司弁護士は「告発文は『辞職すべきだ』との考えを示しているだけで、脅迫にも当たらず強要罪で訴えることはナンセンス。告発文を公開したところで通報者が特定されるわけがなく、通報者保護を理由に情報公開を拒むのは筋が違う」と説明する。
被害届について市議の一人は「関係者しか知りえない視察日程が漏れていたことに恐怖を感じている」と話す。大川議長と議会事務局は取材に応じず、文書で「(情報が)一般に広まることは捜査に影響を与える恐れがあるので取り扱いについて配慮をお願いします」とコメントした。
一方で被害届を提出しなかった公明党の関係者は「信頼を裏切り、本人も深く反省している。今後は襟を正したい」と述べた。