大ヒット映画「君の名は。」を手がけた敏腕プロデューサーは、どこで道を踏み外してしまったのか――。和歌山県警は2月21日、SNSで知り合った当時15歳の女子高生に裸の画像を送らせたとして、渋谷区のプロダクション会社「itoko production」社長の伊藤耕一郎容疑者(52)を児童売春および児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕した。

伊藤容疑者は2021年9月、SNSで知り合った女子高生が当時15歳であることを知りながら、電子マネー1万2500円を支払い、裸の写真などを送らせた疑いがある。

「SNSで『お金が欲しい』という趣旨の投稿をしていた当時15歳の女子生徒に対し、伊藤容疑者は『裸の写真を送ってほしい』などのメッセージを送っていた。警察の取り調べに対し、伊藤容疑者は『何度も裸の写真を送らせていて、この子かどうかわからない』などと話しているだけでなく、私物のスマートフォンから他の女性のわいせつ画像も見つかっていることから、余罪をふくめて捜査を進めている」(社会部記者)

伊藤容疑者は2016年に公開された大ヒット映画「君の名は。」を手がけた敏腕プロデューサーとして業界内で知られた存在だった。

「伊藤容疑者はメーカーの技術職を28歳で退職し、海外留学を経て映像制作会社に入社した”異色の経歴”の持ち主。その後、アニメーションスタジオに転職して『秒速5センチメートル』や『星を追う子ども』といった新海誠監督の作品にプロデューサーとして参加し、2013年に独立。

2016年に制作に携わった『君の名は。』は興行収入およそ250億円のメガヒットを記録し、新海誠監督との対談インタビューもメディアに掲載されていた」(WEBライター)

サングラスをしたままカフェでお茶を飲む伊藤容疑者(本人SNSより)

伊藤容疑者が社長を務める「itoko production」は、おもにアニメコンテンツの制作やタレントのマネジメント業を手がけるプロダクション会社。代官山駅すぐそばのタワーマンションの一室に事務所を構えていて、高階層ということもあり、同フロアの別の部屋の家賃は月40万円を超える。

また登記簿情報によると、会社の設立と同時期にこのタワーマンションから徒歩5分ほどの距離にある代官山のビンテージマンションの一室を購入しているが、近隣住民からは「ほとんど見かけたことがなく、住んでいるかもわからない」と言われるほど影の薄い存在だった。

伊藤容疑者の会社が入ったタワマン(撮影/集英社オンライン)

一連の報道を受け、新海誠監督は23日に自身のXで声明を発表。

「作品関係者逮捕の報道を目にし、とても大きなショックを受けています。まずなによりも被害者の方へ、心よりお見舞い申し上げます。また、作品を愛し応援してくださっている皆さんにご不安をおかけしてしまっていることも、本当に申し訳なく思います」と関係者への謝罪に加えて、「今般の事件により作品の価値が損なわれることはないと僕としては考えますが、ご不信の目をいただいてしまうことも当然かと思います。そのことが、とても悔しく、悲しいです」と心境をつづった。

作品に罪はないとはいえ、アニメーション業界に激震が走った今回の事件。逮捕された伊藤容疑者は岐阜県中津川市出身で、地元の公立高校を卒業後、国公立大学を経てメーカーの技術職として働いていた。

その後、大ヒット映画のプロデューサーを務めたことから、地元では一目置かれた存在だった。高校の同級生はこう肩を落とす。

「ええ、耕一郎くんですよね…。先日のニュースを見て『どうして』という感じで本当にビックリしました。同じクラスになったことはありませんが、2016年に『君の名は。』が公開されたときは同級生の間でも『あれを耕一郎くんが作ったんだって!』と話題になりましたし、母校の新聞にも大々的にインタビューが掲載されて、まさに”母校の星”って感じでしたから…」

新海誠監督も「ショックです」とコメント(写真/共同通信社)

たまにSNSで連絡を取り合っていたという同級生の女性も「まだ頭の整理がついていなくて…」と混乱ぎみに語る。

「耕一郎くんは大学進学を機に地元を離れてしまいましたが、プロデューサーとして活躍していると知って『すごいなぁ』と尊敬して応援していたんです。SNSでも定期的に連絡を取っていて、たまに『元気にしてる?』なんて送ると、『元気だよー』と返ってくるので頑張ってるんだなと思っていたのですが、まさかこんなことになってしまって、まだ頭の整理がついていなくて…」

そんな”母校の星”として周囲から尊敬されていた伊藤容疑者は、高校時代にはバスケ部に所属、クラスでも”秀才キャラ”として知られていたようだ。前述の女性はこう続ける。

「授業中に先生に『これわかるか?』と指さされても、『はい、○○です』と自信満々に答えていて、勉強はすごいできるイメージでした。バスケ部の練習も前向きに取り組んでいて、明るい子って感じ。ただ彼女がいたとは聞いたことがなかったです」

『君の名は。』の聖地巡礼で話題となった須賀神社の階段

高校では文武両道にいそしむ模範的な生徒だった伊藤容疑者だが、決してモテるわけではなかった。別の同級生の女性はこう語った。

「正直なところ、彼の評判はあまりよくなかったです。人に気を遣って発言できないというか、空気が読めないところがあって…。周りのクラスメイトにも、悪気はないんでしょうけど『お前は本当にバカだな』みたいなことを平気で言ってしまう子でした。別にイジメられてたとかではないけど、クラスではちょっと浮いた存在でしたね」

そうした”空気の読めなさ”からか、この女性に何度か恋愛相談を持ちかけてきたこともあったという。

「そういう話ってふつう仲のいい男友達にすると思うんですけど、さほど仲のよくないクラスメイトの私に対して『オレ文系クラスにいる○○って子が好きなんだよね』とか『いま○○って子を狙っててさ~』と平気で話してきたりしましたね。だから『ちょっと人との距離の取り方が分からない子なのかな?』と思うフシはありました」

伊藤容疑者が購入した部屋のあるビンテージマンション

また別のクラスメイトの女性も、伊藤容疑者の意味不明な言動を思い返し、こうあきれる。

「耕一郎くんから『駅前の店で○○のCDを買ってきてほしい』とお願いされたことがあって。それでいざ放課後に買いに行くと、なぜかCDショップに耕一郎くんがいたんです。だから私も『それなら最初から自分で買えばいいじゃん』と言ったのですが、今思い返しても、あのときの彼の言動は意味不明でしたね」

過去、勤めていた会社のHP上のインタビューで「やっぱり僕は映画が好きで、作品を作ってるときが一番楽しいんです」「これからも、面白い作品を作り続けていきたいですね」などと、作品への情熱を語っていた伊藤容疑者。被害少女はいったい何人いるのか……捜査の進展が気になるところだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班