「飲むだけでやせる」という夢のようなクスリ「GLP-1」がいま、米国で爆発的に人気が広がっている。このうち、「ウゴービ」が日本でも2月22日から保険適用となる。ついに日本でもブーム到来だが、先行するアメリカでは社会問題に――。
前編記事『いま米国でイーロン・マスクが“宣伝”する「やせ薬」が大人気…先行する現地で起きている「社会問題」』より続く。
米国でも日本でも、クスリを正しく処方してもらうには”条件”がある。
「たとえば2月から保険適用になるウゴービは、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかの病気があり、BMI35以上か、27以上で肥満に関する健康障害が2つ以上あるという条件があります。この条件に当てはまらない人は、適用対象になりません。BMI35というのは、たとえば身長170cmで102kg以上の人。ここまで体重があると、極度の肥満といえますし、糖尿病を合併しているでしょうから保険適用の対象となります」
日本でBMI35以下の人は、ウゴービの保険適用対象外のため、本人が望んでも処方してもらえない。しかし、国内の一部の美容外科などでは、「メディカルダイエット」と称して、自由診療の名のもとに、GLP-1を1ヵ月3万円という高額な値段で処方しているところがある。
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「こうした自由診療のクリニックでクスリをもらい、もし重篤な事故が起こったとしても、いわゆる『未承認医薬品の使用による有害事象』ですから、処方したクリニックは医療賠償責任保険の対象外です。処方するクリニック側としては、仕入れたクスリを、何倍もの価格で売れるので、ものすごく儲かります。
今回、日本でもウゴービが保険適用されたことで、あたかも”国が認めたやせ薬”として宣伝するクリニックが出てくるのではないかと懸念しています。もちろん承認されているのはBMI35以上などの条件を満たす人だけですが、宣伝ではそこは書かないわけです」
日本でGLP-1によるダイエットブームが広まっているのは、コロナの影響でオンライン診療が進み、簡単に自分の欲しいクスリを手に入れられるようになったことも背景にある。日本医師会前副会長の今村聡氏は、
「GLP-1をダイエット目的で処方するクリニックが急増していることで、本来このクスリを必要としている糖尿病や肥満症の人が手に入れにくい事態にまでなっている」
と警鐘を鳴らす。医師としての倫理的な問題もあると今村氏は言う。
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「このクスリをダイエット目的で処方するクリニックは、医師として不適切だと思います。正しい説明をする立場にいる医師が、クスリを必要としない人たちにおカネ儲けのために出しているわけです。彼らは治療をしているのではなく、ただクスリを売っているだけということになります。同じ医師として、そんなことをするのはいかがなものかと思います」
金儲け主義の医者の甘言に誘われて、身を滅ぼしては元も子もない。
「週刊現代」2024年1月27日号より
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