近年、未成年者を対象としたわいせつ事件の摘発事例が増えている。自身も児童ポルノ禁止法違反で逮捕された経験を持つ現役の漫画家が、児童を狙ったわいせつ事件が絶えない理由と、その忌むべき手口について重い口を開いた。
***
【写真を見る】インタビューに応じた漫画家“X”の取材時の一コマ
北海道警小樽署が今年1月15日までに女児への強制わいせつや強制性交未遂などの容疑で、30~50代の男5人を逮捕した事件の衝撃がやまない。
「逮捕容疑は2018年から22年にかけ、小樽市内のホテルで13歳に満たない女児に対し、睡眠導入剤を与えるなどしてわいせつ行為に及んだというものです。その卑劣極まりない手口に、捜査関係者も怒りや嫌悪を隠そうとしません。5人の男の住む地域は札幌や宜野湾(沖縄)など全国に散らばっていましたが、SNSの小児性愛に関する交流サイトを通じて知り合ったといいます」(全国紙社会部記者)
警察は余罪も含めて捜査中というが、今回の事件を「氷山の一角に過ぎない」と断言する人物がいる。6年前に児童ポルノ禁止法違反で逮捕され、現在は精神科に通院して更生治療を受けている漫画家のX氏(52)だ。
「今回の事件では互いの連絡手段として“アシ”のつきやすいSNSを使っていたことで摘発につながりましたが、もっと巧妙なツールを使用していれば、事件が闇に埋もれていた可能性もあります。実際、発信元が特定できないダークウェブ内では毎日のように違法な児童の画像や動画が大量に流通している。しかもダークウェブ上での閲覧だけなら“所持”に当たらず法の網の目も掻いくぐれるため、利用者の流入に歯止めがかからない状況です」(X氏)
X氏は“18歳未満の女性のわいせつ画像や動画”を所持していたとして児童ポルノ法違反容疑で逮捕。留置場と拘置所に約1年間勾留された後、執行猶予付きの有罪判決を受けたという。
「いまはフリーの同人漫画家として活動しながら、依存症治療が専門の精神科に週1回通って更生治療を受けています。私自身は、小樽の事件のように現実に女児に手を出したことは一度もありません。理解はされないと思いますが、私の場合、あくまで“愛でる”観察対象として(未成年者に)興味を抱くタイプ。実は高校に上がるまで、自分が“ロリコン”との認識はありませんでした。それが16歳の時、本屋でロリコン雑誌を目にした途端、初めて経験する感情に襲われ、鼓動が急に速くなったのです」(X氏)
その日を境に、自分に小児性愛的な嗜好があることに気づいたX氏は深い自己嫌悪にも陥ったが、その特殊な性的嗜好を抑えることはできなかったという。
「私が高校生だった1980年代は未成年の女性が載ったエッチ系の雑誌やマンガが本屋で平然と売られていました。それだけでなく、99年に児童買春・児童ポルノ等禁止法が成立するまでは都内の歌舞伎町や大久保に行けば、未成年者の盗撮写真を扱う専門ショップすらあった。頭では“ダメだ”と分かっていても足を向けてしまい、社会人になると今度は“自分でも撮りたい”と思うようになっていました」(X氏)
実際、社会人になると休日に公園へ足を運び、未成年の女の子がいると「写真を撮ってもいいかな?」などと声をかけたという。
「最初から“嫌がることは一切しない”と決めていましたが、女の子が撮影に応じてくれるケースはほぼなく、あっても“その場で数枚”が限度でした。だから余計にウラで流通していた写真や本に耽溺していった。ただし今から振り返ると、当時の声掛けが成功しなくて本当に良かったと思っています。自分の欲望が暴走しなかったことに加え、女の子に深い傷を負わせなかった点については心底ホッとしています」(X氏)
こう考えられるようになったのも「いま受けているカウンセリングやミーティングなど更生プログラムのおかげ」と話す一方で、「やっぱり自分の性的嗜好が完全になくなることはない」とも感じているという。
「結局、欲望を抑え、うまくコントロールしながら“ロリコン”の自分と死ぬまで付き合っていくしかないと考えています。でも私のような人間は、今後も必ず出てくるでしょう。一方で日本の法律やネット空間の現状を見ると、彼らが犯罪へと走るのを未然に防ぐ術はないとも感じています。ダークウェブ上に氾濫する違法画像を“合法的”に閲覧することで、内に秘めた欲望の肥大化を招く“悪魔のスパイラル”をどう断てばいいのか。個人的には小児性愛者という存在を“いないもの”として捉えるのでなく、私のようなマイノリティがすでに社会のなかに存在していることを認識し、更生や治療に結びつける方法を模索したほうがいいと考えます。その第一歩として今回、反発は承知のうえで、取材を受けることを決意しました」(X氏)
会話中、何度か羞恥と苦悶の入り混じる表情を見せたX氏だが、その「治療の終わり」はまだ見えていない。“鬼畜”による犯罪をどう防ぐか――社会として真面目に考える時期に来ているようだ。
デイリー新潮編集部