1970年代の連続企業爆破事件で、指名手配中の桐島聡容疑者(70)とみられる男が数十年前から神奈川県内の土木工事会社に住み込みで働いていたことが、警視庁公安部の捜査で判明した。
「まさか、あの人なのか……」。近隣住民に戸惑いが広がった。
男が「ウチダヒロシ」の偽名で身を寄せていた土木工事会社は、藤沢市南部の閑静な住宅街の一角にあった。男は勤務先にほど近い、古びた木造2階建て住宅に一人で暮らしていた。
「生い立ちがはっきり分からない不思議な人だけれど、雇うことにした」
近くの70歳代男性は約20年前、会社の関係者からこう聞いた。男は、この男性にも「ウチダ」と名乗っていた。言葉数は少なく、周囲と交流している様子もうかがえなかったという。
男性が最後に男と会ったのは約1か月前。マスク姿で歩いており、声をかけると、つらそうに「体の具合が悪いんです」と話した。
警視庁が公開している資料によると、桐島容疑者は身長約1メートル60。極度の近視で、唇は厚くやや大きい。
男を知る近くの70歳代女性は、公開されている桐島容疑者の顔写真を見たことはあったが、事件との関連を考えたことはなかった。日常的にあいさつを交わし、好印象を抱いていた。
男は普段からニット帽をかぶり、黒縁眼鏡をかけていることが多かった。「今思えば確かに背格好などは似ていたが、桐島容疑者がこんなに近くにいたかもしれないなんて……」と驚いていた。
手配資料などによると、1975年4月に東京都中央区銀座で事件が起きた当時、桐島容疑者は大学生で、過激派「東アジア反日武装戦線」のメンバーだった。翌5月に渋谷区で現金を下ろした後、広島県の実家に電話をかけたのを最後に、足取りが途絶えていた。