2022年末に行政主催のメタバース婚活がスタートして数多くのカップルが誕生した。当初から想定していた通り、リアル婚活ではなかなかマッチングできなかった人も、メタバース空間ならではの魅力を発揮して、数多くの人がカップルとなる場面を数多く目撃することとなった。
メタバース婚活とは、文字通り、仮想空間内で行われる結婚相手探しの手段だ。婚活イベントやマッチングアプリと異なるのは、婚活者自らがアバターを操作し、その動作や声は自分自身のもので交流が行われる。
その最大の特徴は、何といっても高いマッチング率にあり、平均で8割がカップルとなる結果だ。自治体が主催する安心感もあってかその噂は口コミで広がっている。
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これまでの婚活手段であれば、第一に見た目や年収を重視されがちだが、メタバース婚活は、そういった外見や社会的な制約による”偏見”を排除し、共通の価値観やフィーリングがあう人と自らが選んでつながれる。
婚活で実際に結婚に辿り着くのは至難の業だ。経済産業省の調査によると、相談所を通じて結婚に至る割合は男女ともに10%と、うまくいくのは一部の婚活者に限られている。
なぜなら、アプリ、結婚相談所、リアルパーティーなどの婚活手段では、プロフィールによって条件がさらけ出されるため、どうしても第一印象は容姿、第二印象で年収や職業に評価の基準を置いてしまうためだ。少数の“モテる”男女を多数で奪い合う弱肉強食を強いられる。
もちろん、プロフィールがズラリと並んでいたら、お顔立ちの良い人に惹かれるものだし、年収の高い人と結婚した方が、ゆとりを持って暮らせそうだと連想してしまうのも自然なことだ。
しかし、その基準で選び続けても必ず行き詰る。条件の良い人は、同じく条件の良い相手としかマッチングしないからだ。しかし、実際にはプロフィール的にさほど条件が良くない人でも、お相手にはちゃっかりと最良条件を求めるものだから、人気が一極集中してあぶれた人はマッチングできないという訳だ。
条件をクリアしている人だけが「私にふさわしい」を考えてしまうのは、感覚が麻痺して結婚相手を「自分が選んでいる」という錯覚に陥っているからだろう。
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それを繰り返すうちに、目が肥えてきて判断が厳しくなり、結果「容姿や条件が良くない人と結婚するくらいなら結婚しない方がまし」と婚活者に言わせてしまうのだから、条件婚活とはなんと恐ろしいことか。条件第一の婚活手段でシンデレラストーリーは滅多にありえないのだ。
そもそも婚活は人生のパートナーを探す目的であって、自分にあった人でないと、しなくてもよい苦労が待ち受けている場合が多いのではないだろうか。
現在は3人に1人が離婚すると言われている時代だ。価値観の違いにより離婚に至ったという夫婦が圧倒的に多い。人生において変動してしまう表面的な要素を並べて結婚相手を選んでも意味がないと言えよう。
私自身も実は相談所でお世話になり結婚に至ったが、婚活に励んでいた頃はこの条件婚活の世界観に脅威を感じ続けていた。プロフィールで選んだり選ばれたりしながら、お見合いをしてはがっかりする繰り返しだった。フィーリングは会ってみないことには、分からない。
20回ほどのお見合いを繰り返し、次に繋がったのはわずか2人。相手選びの基準は、1時間時計を見ることなく会話に集中できるかを目安にしていた。やってもやっても成果の出ない、出口の見えないトンネルに迷い込んだ気持ちで絶望感すら感じていた。
こんなやるせない経験をしたからこそ、信頼関係を築けるパートナーと結婚生活をおくれるために、性格フィーリングから入れる婚活方法を探す必要性を強く感じた。
自らで相談所を開業してからは、そこに重点をおいて婚活者のお世話をするようになっていった。私のように苦労したり、不安になったりしないで結婚に至って欲しいという願いからだ。性格フィーリングを重視した婚活として取り入れる方法を探り、結婚相談所では二つの方法を見つけ出した。
一つは仲人が婚活者の情報交換をしながらお似合いの男女を繋ぐ“手組み”という方法。性格フィーリングに重点をおいて仲人同士がご縁を繋ぐので、結婚への確率は高い方法だが、“手組み”をしている相談所は数少ない。
理由は、仲人にかかる負担が大きく、手間と時間を要する上に、当の婚活者が仲人の選んだお似合いの相手に腹落ちしないと繋がらないという難点があるためだ。プロが見立てたお相手なんだから、会うだけ会ってみたら良いのにと思うのだが、自分が定めた条件と違うからと頑なに振り切る婚活者が数多い。
もう一つは性格フィーリングに重きをおいた婚活パーティーを開催することだ。参加者の年収などの条件を伏せた状態で交流してもらうことで、いつもよりも柔軟な関わりを持ってもらおうという意図があった。
結婚相談所内では「いくら以上の年収でない男性とは会わない」と決めてフィルターをかけてしまっている女性でも、パーティーならばカップル成立する。そこに期待を寄せた婚活者がパーティーをこぞって活用してくれた時期もあった。
近年では条件を伏せた婚活パーティーは珍しくはなくなったが、結婚相談所の場合だと、会員同士であるがゆえにマッチングした後に条件を見せ合い、結局はまた元の判断基準に立ち戻ってしまうところに難点があった。
“手組み”にしても“婚活パーティー”にしても難点を乗り越えて結婚まで辿り着けたのは、一握りだ。
相手の環境が明らかなことで、自分の将来的ビジョンがクリアになる人や、経済的な安定を人生において優先的に求める人には、条件婚活は合理的な手法だ。一方で、個々の感覚を大切にしたい人や内面的触れ合いに重きをおく人にはメタバース婚活にも目を向けて欲しい。
続きの<40歳「結婚に臆病な男」が快進撃…!婚活で「6歳年下の保育士」に選ばれた「意外な手法」>では、結婚に臆病になり婚活に見切りをつけていた40歳の塾講師が、メタバース婚活の実例をお伝えしつつ、その意外なメリットについてもお伝えします。
高須美谷子著『恋愛マッチング方程式』