「別れたくても別れられない」
【画像】「彼は私のヒモでした…」今治ピアノ教師殺人事件”逮捕のストーカー男と元交際相手のA子さんのツーショット
昨年11月、愛媛県警には被害女性から、容疑者との交際関係に悩む相談が寄せられていたという。
愛媛県今治市の住宅でピアノ教室を営む冨田小雪さん(64)が突如何者かに首を斬りつけられ死亡する事件が起こったのは1月26日のこと。同日午後6時10分ごろ、冨田さんの知人が現場を訪れた際、血を流して倒れている小雪さんを見つけ、110番通報し事件が発覚した。
事件現場 文藝春秋
冨田さんは搬送先の病院で死亡が確認されたほか、現場からは縛られた状態の男子中学生の生徒が見つかった。また、同じ家に住む冨田さんの次女(35)が何者かに連れ去られていることも判明した。冒頭の別れ話の相談はこの次女から寄せられたものだったといい、自宅付近の防犯カメラには事件直後、次女と元交際相手の男が車に乗り込む様子が写っていた。
事件が解決に向かったのは翌27日夜。県警は次女を連れ去る際に腕を引っ張るなどの暴行を加えたとして、次女の元交際相手である自称会社員、榊原正道容疑者(34)を暴行容疑で逮捕した。今後、小雪さんへの殺人容疑での再逮捕を視野に捜査が続いている。

「次女は、榊原について事件前から警察だけではなく知人にも関係解消について相談していたといいます。榊原は次女への暴行については容疑を認めているものの、小雪さんの家に乗り込むという大胆な犯行に至った動機や詳しい経緯はまだはっきりとせず、本格的な取調べが続いているところです」(全国紙記者)
冨田さん一家はなぜ凶行に巻き込まれてしまったのか。
小雪さんは近所では温厚な人柄で知られていた。近隣住民の女性が話す。
「背が低くぽっちゃり体型の小雪さんは、笑顔が美しい方でした。若い時に今治に嫁いできて、この家でピアノ教室の先生をやっていました。地元の小学生が週2日くらい、学校帰りに習いに来ていましたね。小雪さんは地元のピアノの演奏会に出たり、ジャズのイベントに出たり、地元の少年少女合唱団の指揮や運営をしたりと、音楽関係者には知られた存在だったようです。

夫はカメラ屋を営む優しい人で、娘2人にも恵まれました。夫の両親も地元の町内会長を務めるなど面倒見の良いおじいちゃんで、お世話になった地元の人はたくさんいたと思います」
だがそんな幸福な一家を、ある日急に不幸が襲う。
「20年ぐらい前、まだ40代で一家の大黒柱だったカメラ屋を営む夫が、心筋梗塞で病死してしまったのです。小雪さんは葬儀では気丈に振る舞っていましたが、近所はみんな『まだ若いのに可哀そうだね』と同情していました。残されたのは、育ち盛りの娘2人。生活は相当苦労したはずです」(同前)

こうした母の愛情もあってか、一家の仲はよく見えたという。近隣住民らによると、娘姉妹は上京先で出会った男性と結婚した後、それぞれ2児を出産。10年前に今治に帰郷し、それぞれの夫と子供4人を含む計9人で、3世帯で暮らした時期もあったという。
2018年、「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京)に出演した際には「大の仲良し姉妹」として紹介された。次女は「父が早くに亡くなったので母と一緒に住むって決めていました」と語る母想いの一面を見せていた。一方、亡くなった小雪さんは娘たちとの同居に「嬉しさ半分、大変さ半分です」とにっこりと笑い、「もう少ししたら孫がもう1人増えるので。仕事頑張って孫にお小遣いをあげなきゃと思っています」と笑顔で抱負を語っていた。
ただそんな一家に不穏な影が見え始めたのは、この1~2年のことだという。別の近隣住民の女性が話す。
「次女が2年前から、今治の隣の西条市で水商売を始めたんだよ。ドレス姿で夜に自宅を出て、家の近くに止まっているマイクロバスに乗り込むのを何度も見た。髪の毛と化粧も以前に増して派手になり、『体重も10キロ減った』と小雪さんは話していた。人形のような風貌だったね。子供の面倒もあってか、その後は次女と母親の間で口論が絶えなくなったようだ。

去年だったかな、次女が朝6時に夫以外の男と楽しそうに朝帰りするのを2度見たこともある。次女には造船所で働く真面目な夫がいたんだけど、そんな生活が引き金になったのか、昨年11月以降は朝7時に毎日出勤する夫の姿をパッタリ見なくなった。娘をすごい可愛がってドライヤーで30分ぐらい髪を乾かすような、良い父親だったんだけどね。それから後になって近所の噂で、『次女が離婚した』と聞いたのさ」
夫がいなくなったという昨年11月は、次女が警察に榊原容疑者と「別れたくても別れられない」と相談していた時期とも重なる。この時期に何らかのトラブルが生じたのだろうか。

この女性は小雪さんの死を最後にこう嘆いた。
「先立たれた夫の両親の介護を亡くなるまで見て、娘も2人育てあげた。苦労したんだよ。いくらピアノの腕があるといったって、そんなには稼げないからね。生活が苦しかったのは、見ればわかったよ。このコートは何年も前のものと同じだな、このスカートも何年も一緒だって、口には出さないけど見ればわかったからね。なんで最期がこんなひどくなるんだと思うよ。神も仏もないんかよ、って感じだね」
一方、現場から1時間弱離れた田畑が広がる西条市の住宅街に、榊原が住む平屋はあった。最近も特に変わった様子は榊原になかったと近隣住民の女性は振り返る。

「彼が引っ越してきたのは5年ほど前。半年前まではずっと冨田さんの次女とは別の女性と暮らしていました。改造した凝った車に乗っていて出発するときのエンジン音が爆音なので一度注意したことはありましたが、『修理して直しました』とすぐに要望を聞いてくれて。イカつい車に乗っているけど、注意されたら意外と従順なタイプなんだなと思いました。
最後にあったのは事件の2日前です。夫が出かける時に『雪が降って道路が凍っているね』と話したのを覚えています。受け答えも普通に見えたので、びっくりですね」
だが、そんな榊原には今回と類似する事件を引き起こした過去があった。
「2011年には埼玉県に住む女性の自宅に侵入し殴ったり包丁を突き付けたりして1カ月の怪我を負わせたあげく、レンタカーに押し込んで10日間監禁したとして、逮捕監禁致傷の疑いで逮捕されています。逮捕時の調べで動機について、『金が欲しかったから』と供述。悪質極まりない」(全国紙記者)

そんな榊原の裏の一面を見ていたのが、10年ほど前に共に暮らしていた榊原の元交際女性A子さんだ。
「埼玉の事件があってから2年後くらいに榊原と交際を始めました。彼のもともとの出身は高知で『俺は両親に捨てられて施設で育った』と。どこか愛情に飢えている印象でした。先輩に頼まれて歌舞伎町のホスト店で数回働いたこともありましたが、基本的には、水商売をしていた私の“ヒモ”でしたね。
小遣いが欲しいからと、店の前で私の勤務が終わりるのをわざわざ待っていることもありました。最初は優しかったのですが、徐々に依存が激しくなり、結局別れるまでに1年ぐらい時間がかかったのを覚えています。
そんな生活がついに終わりを告げたのは、彼が私を殴り傷害容疑で逮捕されたからです。その後榊原は実刑判決を受けています。今回のニュースで久々に榊原の名前と顔を見た時は、震えが止まりませんでした。ついにこんな事件を起こしてしまうとは……」
過去に犯した2つの犯罪と、榊原が親しい人間に見せていた裏の顔。榊原の交際相手の証言については1月31日正午配信の「週刊文春電子版」並びに2月1日発売の「週刊文春」で詳報する。
◆ ◆ ◆
今回の事件について情報を募集しています。文春リークスまで情報をお寄せください。
文春リークス:https://bunshun.jp/list/leaks
(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)