警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、元組長が明かすヤクザたちの正月の過ごし方と、今も子分たちに振る舞って評判という「まかないご飯」について。
【写真】雑煮は自分たちで作ったという * * * 年末年始が近づき、暴力団でも新年を迎える準備が進んでいる。若い頃は上部団体の若い衆として住み込み、日々、食事当番でその腕を磨いてきたという元組長に、当番としておせち料理を作ったことがあるか聞く、「さすがにおせちは作らなかった」と大笑いしながら首を横に振った。

上部団体の親分の所には、さまざまな関係者が新年の挨拶回りにやってくる。「客人に下手な物など振る舞えない。高級料亭とか有名な料理屋やレストランとか、おせち料理の準備はプロに任せていた」。元組長が当番をやっていた頃は、暴力団対策法(暴対法)も暴力団排除条例(暴排条例)もない。幅広い人脈を持ち派手に金を使う暴力団は、飲食店や水商売の店にとっていいお客。自分らが経営に携わる店もあったのだ。「おせちを持って正月の挨拶に来る客もいれば、酒を持参してくる客もいた。他の組の組長らは、挨拶帰りに部屋住みの若い衆らに小遣いならぬお年玉を配ることもあった」と元組長は懐かしがる。 引退してからも子分や知人、関係する飲食店の社員らにその腕をふるう元組長は、手軽にちゃちゃっと作れて旨い”当番レシピ”の料理が評判だ。「組事務所で作る料理は味が濃い目でご飯が進むような物。がっつりしっかり食べれるように」という組長に、多忙な年末にささっと作れる旨い料理を聞いた。 まずは生姜ご飯だ。「生姜ご飯は炊いている時に、部屋が生姜のにおいでいっぱいになり。生姜好きにはたまらない」と、鼻をふくらませる。寒い冬には身体が温まるし、この時期の生姜は新生姜ほど辛みもない。材料は米2合、生姜は50~100gを千切りに、量はお好みで調節。塩昆布はお好みで。調味料は白だしを大さじ2、醤油大さじ1、砂糖小さじ1。「甘いのが好きでなければ砂糖はなしで」(元組長)。米を研いで炊飯器に入れ、水は2合分よりやや少なめ、調味料を入れてよく混ぜ、生姜を乗せてご飯を炊く。炊き上がったら混ぜて蒸らす。ここに塩昆布を入れれば、塩気のある味になる。元組長は「メチャ生姜を入れた方がうまい」という。 おかずには「ちくわの炒め物だね。ちくわを何本か乱切りにして、胡麻油で軽く炒め、醤油と七味を好みでかける。炒めたら、そこに追い胡麻油をかけて終わり。これは数分で簡単にできる」。切って炒めるだけ、ほんの5分で出来上がる品はシンプルゆえに生姜ご飯の邪魔をしないそうだ。正月用の一品にもなる簡単チャーシュー 正月用の一品にもなるというのはフライパンで作るチャーシューだ。材料は豚バラブロック300g、生姜は80gを千切りに。ニンニクは3~5カケをお好みで量を調節し、潰す感じで。調味料は醤油50cc、みりん50cc、お酒50ccとどれも同じ分量、水は100cc。「肉が増えても、調味料は1対1対1。若い衆が覚えやすいよう、当番レシピはどれも調味料の量が簡単だ。これなら覚えるのも楽だろう。当番に入る者が全員、俺のように料理が好きとは限らない。人数が増えて作る量が多くなっても味は変わらない。誰もまずい物は食べたくないからね」と元組長。 用意するのは小さめのフライパン。「煮汁が肉にしたたる方がいいので、フライパンは小さめで」という。豚バラをフォークで両面適当に刺し、フライパンを中火にかけて油は引かずに片面2~3分ずつ焼く。「肉から出た油はキッチンペーパーで拭き取っておく。余計な油は最初に取り除くことで、煮汁が脂っぽくならない」(元組長)。 ここに調味料を入れ、ニンニクと生姜を投入、中弱火で片面5分ずつ両面を焼く。「火加減は強すぎないように。キッチンペーパーで落とし蓋をすれば、灰汁も取れて便利だ。最後に数秒、強火で煮立てて終了。そのまま覚ましてもよいが、ビニールなどに入れて空気を抜いてから覚ます方がいい。時間をおくと味が入ってよりおいしい」(元組長)。どんぶり飯の上にこのチャーシューをのっければ、組員たちに好評の絶品チャーシュー丼が出来上がる。調理時間は20分程度という簡単チャーシューだが、「時間をかけて煮込んだぐらいうまいと評判は上々。肩ロース肉でも作ってみたが、バラ肉の方が柔らかくてうまいね」(元組長)。 おせちは作らずとも、お雑煮は取り寄せとはいかない。元組長も「雑煮は作った。関東は白だしを使った醤油ベースのすまし汁に角餅、関西は白みそ仕立てで丸餅を入れる。丸餅なのは角を立てず円満にという意味があるから。縁起を担ぐのは一般人と同じだね。いや、それ以上かな。関西風も関東風もどちらも中身の具はシンプル。餅は年末の餅つきでついた物を入れていた」。「自分が組を持ってからは、組の雑煮は関東風だった」と元組長がいうのは、出身が関東で、組は関東を拠点に活動していたからだ。上部団体は関西にあり「親分の所は関西風の雑煮。組織によってこれだと決まった雑煮があるわけでなく、組事務所のある地域の伝統や組長の好み、出身による」と話す。 だが実際には、「大晦日には初詣客を見込んで屋台を出していたからね。テキヤをやっていたヤクザにとって正月はかき入れ時。手伝いや見回りで大忙しさ」。現役時代は雑煮をゆっくり食べる暇もなかったというのが元組長の正月だ。
* * * 年末年始が近づき、暴力団でも新年を迎える準備が進んでいる。若い頃は上部団体の若い衆として住み込み、日々、食事当番でその腕を磨いてきたという元組長に、当番としておせち料理を作ったことがあるか聞く、「さすがにおせちは作らなかった」と大笑いしながら首を横に振った。
上部団体の親分の所には、さまざまな関係者が新年の挨拶回りにやってくる。「客人に下手な物など振る舞えない。高級料亭とか有名な料理屋やレストランとか、おせち料理の準備はプロに任せていた」。元組長が当番をやっていた頃は、暴力団対策法(暴対法)も暴力団排除条例(暴排条例)もない。幅広い人脈を持ち派手に金を使う暴力団は、飲食店や水商売の店にとっていいお客。自分らが経営に携わる店もあったのだ。「おせちを持って正月の挨拶に来る客もいれば、酒を持参してくる客もいた。他の組の組長らは、挨拶帰りに部屋住みの若い衆らに小遣いならぬお年玉を配ることもあった」と元組長は懐かしがる。
引退してからも子分や知人、関係する飲食店の社員らにその腕をふるう元組長は、手軽にちゃちゃっと作れて旨い”当番レシピ”の料理が評判だ。「組事務所で作る料理は味が濃い目でご飯が進むような物。がっつりしっかり食べれるように」という組長に、多忙な年末にささっと作れる旨い料理を聞いた。
まずは生姜ご飯だ。「生姜ご飯は炊いている時に、部屋が生姜のにおいでいっぱいになり。生姜好きにはたまらない」と、鼻をふくらませる。寒い冬には身体が温まるし、この時期の生姜は新生姜ほど辛みもない。材料は米2合、生姜は50~100gを千切りに、量はお好みで調節。塩昆布はお好みで。調味料は白だしを大さじ2、醤油大さじ1、砂糖小さじ1。
「甘いのが好きでなければ砂糖はなしで」(元組長)。米を研いで炊飯器に入れ、水は2合分よりやや少なめ、調味料を入れてよく混ぜ、生姜を乗せてご飯を炊く。炊き上がったら混ぜて蒸らす。ここに塩昆布を入れれば、塩気のある味になる。元組長は「メチャ生姜を入れた方がうまい」という。
おかずには「ちくわの炒め物だね。ちくわを何本か乱切りにして、胡麻油で軽く炒め、醤油と七味を好みでかける。炒めたら、そこに追い胡麻油をかけて終わり。これは数分で簡単にできる」。切って炒めるだけ、ほんの5分で出来上がる品はシンプルゆえに生姜ご飯の邪魔をしないそうだ。
正月用の一品にもなるというのはフライパンで作るチャーシューだ。材料は豚バラブロック300g、生姜は80gを千切りに。ニンニクは3~5カケをお好みで量を調節し、潰す感じで。調味料は醤油50cc、みりん50cc、お酒50ccとどれも同じ分量、水は100cc。「肉が増えても、調味料は1対1対1。若い衆が覚えやすいよう、当番レシピはどれも調味料の量が簡単だ。これなら覚えるのも楽だろう。当番に入る者が全員、俺のように料理が好きとは限らない。人数が増えて作る量が多くなっても味は変わらない。誰もまずい物は食べたくないからね」と元組長。
用意するのは小さめのフライパン。「煮汁が肉にしたたる方がいいので、フライパンは小さめで」という。豚バラをフォークで両面適当に刺し、フライパンを中火にかけて油は引かずに片面2~3分ずつ焼く。「肉から出た油はキッチンペーパーで拭き取っておく。余計な油は最初に取り除くことで、煮汁が脂っぽくならない」(元組長)。
ここに調味料を入れ、ニンニクと生姜を投入、中弱火で片面5分ずつ両面を焼く。「火加減は強すぎないように。キッチンペーパーで落とし蓋をすれば、灰汁も取れて便利だ。最後に数秒、強火で煮立てて終了。そのまま覚ましてもよいが、ビニールなどに入れて空気を抜いてから覚ます方がいい。時間をおくと味が入ってよりおいしい」(元組長)。どんぶり飯の上にこのチャーシューをのっければ、組員たちに好評の絶品チャーシュー丼が出来上がる。調理時間は20分程度という簡単チャーシューだが、「時間をかけて煮込んだぐらいうまいと評判は上々。肩ロース肉でも作ってみたが、バラ肉の方が柔らかくてうまいね」(元組長)。
おせちは作らずとも、お雑煮は取り寄せとはいかない。元組長も「雑煮は作った。関東は白だしを使った醤油ベースのすまし汁に角餅、関西は白みそ仕立てで丸餅を入れる。丸餅なのは角を立てず円満にという意味があるから。縁起を担ぐのは一般人と同じだね。いや、それ以上かな。関西風も関東風もどちらも中身の具はシンプル。餅は年末の餅つきでついた物を入れていた」。
「自分が組を持ってからは、組の雑煮は関東風だった」と元組長がいうのは、出身が関東で、組は関東を拠点に活動していたからだ。上部団体は関西にあり「親分の所は関西風の雑煮。組織によってこれだと決まった雑煮があるわけでなく、組事務所のある地域の伝統や組長の好み、出身による」と話す。
だが実際には、「大晦日には初詣客を見込んで屋台を出していたからね。テキヤをやっていたヤクザにとって正月はかき入れ時。手伝いや見回りで大忙しさ」。現役時代は雑煮をゆっくり食べる暇もなかったというのが元組長の正月だ。