新型コロナウイルス感染後の後遺症でみられる倦怠(けんたい)感は、神経伝達物質のセロトニンの異常が関係している可能性があると、理化学研究所のチームが発表した。さらに仕組みの解明が進めば、後遺症を抑えられる可能性があるという。
【図解でおさらい】ワクチンの役割 新型コロナが治った後も続く「体が重く感じる」「集中力が続かない」などの倦怠感は、コロナ後遺症の一つとされる。他の感染症でもみられるが、原因はよくわかっておらず、治療法も確立されていない。

チームは、ラットにウイルス感染と類似した症状を起こすリボ核酸を投与し、発熱が治まった後も倦怠感が続く、コロナ後遺症のような状態にした。 このラットの脳を、炎症の度合いを生きたまま見られる「分子イメージング」という技術で調べた。すると、炎症は脳内の広い範囲に広がっていたが、ラットの倦怠感が大きいほど、うつや不安に関わる物質「セロトニン」を分泌する神経細胞が集まる箇所で、炎症の度合いが強くなっていた。脳の炎症によってセロトニンの機能に異常が起き、倦怠感が引き起こされると考えられるという。 チームの崔翼龍(さいよくりゅう)理研客員主管研究員は「脳のどこにどう作用して倦怠感が生じるのか、今後詳細な仕組みがわかれば緩和や治療法の確立につながる」と話した。 成果は11月9日付のスイスの学術誌に掲載された。【土谷純一】
新型コロナが治った後も続く「体が重く感じる」「集中力が続かない」などの倦怠感は、コロナ後遺症の一つとされる。他の感染症でもみられるが、原因はよくわかっておらず、治療法も確立されていない。
チームは、ラットにウイルス感染と類似した症状を起こすリボ核酸を投与し、発熱が治まった後も倦怠感が続く、コロナ後遺症のような状態にした。
このラットの脳を、炎症の度合いを生きたまま見られる「分子イメージング」という技術で調べた。すると、炎症は脳内の広い範囲に広がっていたが、ラットの倦怠感が大きいほど、うつや不安に関わる物質「セロトニン」を分泌する神経細胞が集まる箇所で、炎症の度合いが強くなっていた。脳の炎症によってセロトニンの機能に異常が起き、倦怠感が引き起こされると考えられるという。
チームの崔翼龍(さいよくりゅう)理研客員主管研究員は「脳のどこにどう作用して倦怠感が生じるのか、今後詳細な仕組みがわかれば緩和や治療法の確立につながる」と話した。
成果は11月9日付のスイスの学術誌に掲載された。【土谷純一】