早稲田から高田馬場界隈にラーメン店が多い。
これは1990年代に徐々に増え始め、2000年を超えたあたりで爆発的に増えた。
00年代にラーメン激戦区になった。
もともとは札幌味噌ラーメンの名店『えぞ菊』があったからだ。
1968年からある店で、有名店はここだけだった。
やがていろんな店が集まりだした。
2002年大晦日放送のテレビ番組で全国一位になったのが『俺の空』である。

このあと全国有名店がこぞってやってきてラーメン激戦区となった。このエリアの全店紹介する個人冊子を作ってもう10年を超える。冊子にしているからデータは全部残っているわけで、たとえばちょうど10年前、2013年にこのエリアにあったラーメン専門店は74店舗だった。いま(2023年11月末時点)でこのエリアにあるラーメン専門店は81店舗になる。そのうちこのエリア内で支店を出している重複をのぞけば76店舗になる。10年で2店舗増えただけだ。エリア内ラーメン店総数はそんなに変わっていない。でも入れ替わっている。半分残って、半分入れ替わる2013年10月にあった店74店のうち、2023年11月に残っているのは、34店舗である。古いとおもわれる順に並べてみる。メルシー。えぞ菊。大王ラーメン。東京麺珍亭本舗。一風堂。うだつ食堂。つけめん高木や。俺の空。やったる。渡なべ。らーめん一誠。やすべえ。ひまわり。武道家。麺や武蔵鷹虎。宗。安土。我羅奢。鷹流らーめん。末廣ラーメン本舗。紅蓮。道玄。博多風龍。武蔵野アブラ学会。焼き麺 剱。麺爺あぶら。蒙古タンメン中本。三歩一。麺達うま家。蔭山。やまぐち。油そば力。図星。野方ホープ。以上34店舗。最初の3店は昭和からある店である。俺の空以降が21世紀開店の店。いまや早稲田大学南門近くで大勢力となっている図星は、10年前のこの9月にオープンしたばかりであった。76店中、10年以上続いている店が34店舗。半分近い。けっこう残っている。でもすごく入れ替わってもいる。ラーメン激戦エリアでは半分が10年以上続く店で、残り半分がどんどん入れ替わっていくのである。入れ替わっても、店舗数がだいたい同じなのがちょっとおもしろい。イメージとしては、つぶれた店を居抜きで受け継いで、同じ場所に次のラーメン店が入っているのだろうとおもわれそうだが、実はそうでもない。ふつうに「美味い」だけでは10年もたないここ10年以内にできた店で、もともとラーメン店だったところは10店ほどで、三分の一くらい。残りの三分の二は、それまでラーメン店ではなかったところに新たに作られている。そういうものらしい。いったいどんな店が10年残って、どんな店は10年残らないのか。ぼんやり考えると、美味い店が残って、美味くない店が消えていくようにおもうだろうが、そんな簡単なものではない。こういうエリアで開店する店は、だいたい自信満々で乗り込んでくる店が多く、新規開店の店で食べると、ラーメンはふつうに美味い。まずかった店はここ10年でほぼない。(じつは一軒だけあったのだが)みんなふつうに美味い。でも、美味いだけだったりする。美味いだけでは10年もたない、というのがこのエリアの鉄則でもある。「ふつうに美味い」プラス何があるのかによって、人が繰り返しやってくるか、一回こっきりになるか、その分かれ目がある。ただ閉店の理由はさまざまである。店長が閉店を決断する「瞬間」人が来ない(人気がない)だけが理由で閉店しているわけではない。それぞれ事情がある。かつて天下一品も高田馬場にあった。あのどろどろのスープで人気のラーメン店である。深夜までやっていたし、いろいろ安いサービスセットもあって、けっこう人気の店であった。でも閉店した。2018年である。まもなく閉店しますとの貼り紙が店にあって、そこには「疲れました」と書いてあった。それを見たときは驚いたし、でも疲れたのなら仕方ないなあ、と諦めるしかなかった。直観的におもったのは、バイトが集まらずに店長が出てなきゃいけない時間が限界を超えていたのではないか、ということであったが、それはほんとに推測にすぎない。たぶん、いくつもの理由が重なっているところに、最後に何かあって、というのが「疲れました」となるのだろう。「疲れました」という正直な貼り紙は忘れられない。ラーメン店は、店長が心底疲れてしまうと、閉店するのだ。「復活」を果たせなかったホンモノ二郎べんてん、という人気店も2014年に閉店したが、まもなく閉店しますとの貼り紙が貼られる前週まで「アルバイト募集」の紙が貼ってあった。アルバイトが来なかったからか、とおもったが、でもそれだけではなかったみたいである。体調の問題もあったようだ。店舗が建て替えられるから、と当時からインターネットでそういう噂が流されていたが、それはウソである。今現在も同じ建物で焼きとん店が営業している。なんでああいう意味ないウソがネットでは流れるんだろうねえ。ラーメン二郎も高田馬場にあった。直系店のホンモノ二郎である。2013年に最終的に閉店となったが、それ以前からかなり休みがちで、最後はすごく無理にがんばってる感じだった。休業が長くなった時期には、永らく休んですみませんが、なるべく早く復活したいとおもっています、との貼り紙があって、その貼り紙にはがんばってください、待ってます、と直筆の書き込みがあった。でも、そのまま復活できずに、体調不良により閉店、と貼り紙があり、そこにはまた惜しむ声がいっぱい書き込んであった。また2013年当時は、早稲田に「稲穂」というタンメンの店があって、ここはほんとうに古くから早大生向けにやっていた店だったのだが、おじいさんとおばあさん二人でやっていた。たしかタンメン400円だったとおもうが、いつまで保つんだろうとおもっていたら、間もなく閉店した。老齢の人しか働いてない店は、かなりやばいです。店跡はそのまま閉まったままになって、文字通りの「仕舞屋(しもたや)」となっている。ひさしが残ってるのでいまでもわかる。図星の並びです。火災で閉店した店もあった。「保たない」と思う店の特徴高田馬場さかえ通り途中の少しあやしいエリアに入ったところ、私が勝手にミニミニゴールデン街と呼んでいたところに、かつて立葵と言う店があった。7席しかない店で、スナックを居抜きでラーメン店に強引に変えた店だったけど、2013年4月の火事で焼けてしまった。そのまま再開されていない。そういうどうしようもない事情で閉まって店もけっこう多いようにおもう。もちろん「いつ行っても空いているなあ」というラーメン店は長持ちしない。スタートでつまずいて、そのまま回復できなかった、という感じである。たとえば、美味いことは美味いが、なんかすでに食べたことのある味だなと感じさせるような店だ。言うなれば「一回行っただけで、なんかもうわかった気にさせられる店」だと言える。どれぐらいわかっているかは別として「そういう気にさせられる」というところがポイントである。そういう店はちょっと保たない。あとは、立地の悪さ、店の雰囲気、変な値段設定が原因だったりする。「また食べてみたい」10店「なんか変な方向に凝っている」と感じさせると、リピーターが生まれない。なかなかむずかしい。味が広くは受け入れられず、それで続かなかった店は、閉店した店のだいたい半分くらいというイメージである。いまあらためて2013年のラインナップを見て、ああ、ここは懐かしい、また食べてみたいとおもったのは10店舗ほどだ。べんてん。大勝軒。ぼたん。がんこ。けいすけ。さくら。みつ井。稲穂。にこにこ。天下一品。なかなかに時の流れを感じさせる。・・・・・関連記事『「ラーメン二郎」を580回食べたコラムニストが、はじめて二郎で「屈辱」を感じたワケ』では、「ラーメン二郎に負けた」とおもった理由について、明かしています。
2002年大晦日放送のテレビ番組で全国一位になったのが『俺の空』である。
このあと全国有名店がこぞってやってきてラーメン激戦区となった。
このエリアの全店紹介する個人冊子を作ってもう10年を超える。
冊子にしているからデータは全部残っているわけで、たとえばちょうど10年前、2013年にこのエリアにあったラーメン専門店は74店舗だった。
いま(2023年11月末時点)でこのエリアにあるラーメン専門店は81店舗になる。そのうちこのエリア内で支店を出している重複をのぞけば76店舗になる。
10年で2店舗増えただけだ。エリア内ラーメン店総数はそんなに変わっていない。
でも入れ替わっている。
2013年10月にあった店74店のうち、2023年11月に残っているのは、34店舗である。
古いとおもわれる順に並べてみる。
メルシー。えぞ菊。大王ラーメン。東京麺珍亭本舗。一風堂。うだつ食堂。つけめん高木や。俺の空。やったる。渡なべ。らーめん一誠。やすべえ。ひまわり。武道家。麺や武蔵鷹虎。宗。安土。我羅奢。鷹流らーめん。末廣ラーメン本舗。紅蓮。道玄。博多風龍。武蔵野アブラ学会。焼き麺 剱。麺爺あぶら。蒙古タンメン中本。三歩一。麺達うま家。蔭山。やまぐち。油そば力。図星。野方ホープ。以上34店舗。
最初の3店は昭和からある店である。俺の空以降が21世紀開店の店。
いまや早稲田大学南門近くで大勢力となっている図星は、10年前のこの9月にオープンしたばかりであった。
76店中、10年以上続いている店が34店舗。
半分近い。
けっこう残っている。でもすごく入れ替わってもいる。
ラーメン激戦エリアでは半分が10年以上続く店で、残り半分がどんどん入れ替わっていくのである。
入れ替わっても、店舗数がだいたい同じなのがちょっとおもしろい。
イメージとしては、つぶれた店を居抜きで受け継いで、同じ場所に次のラーメン店が入っているのだろうとおもわれそうだが、実はそうでもない。
ここ10年以内にできた店で、もともとラーメン店だったところは10店ほどで、三分の一くらい。残りの三分の二は、それまでラーメン店ではなかったところに新たに作られている。
そういうものらしい。
いったいどんな店が10年残って、どんな店は10年残らないのか。
ぼんやり考えると、美味い店が残って、美味くない店が消えていくようにおもうだろうが、そんな簡単なものではない。
こういうエリアで開店する店は、だいたい自信満々で乗り込んでくる店が多く、新規開店の店で食べると、ラーメンはふつうに美味い。
まずかった店はここ10年でほぼない。(じつは一軒だけあったのだが)
みんなふつうに美味い。でも、美味いだけだったりする。
美味いだけでは10年もたない、というのがこのエリアの鉄則でもある。
「ふつうに美味い」プラス何があるのかによって、人が繰り返しやってくるか、一回こっきりになるか、その分かれ目がある。
ただ閉店の理由はさまざまである。
人が来ない(人気がない)だけが理由で閉店しているわけではない。
それぞれ事情がある。
かつて天下一品も高田馬場にあった。
あのどろどろのスープで人気のラーメン店である。
深夜までやっていたし、いろいろ安いサービスセットもあって、けっこう人気の店であった。でも閉店した。2018年である。
まもなく閉店しますとの貼り紙が店にあって、そこには「疲れました」と書いてあった。
それを見たときは驚いたし、でも疲れたのなら仕方ないなあ、と諦めるしかなかった。
直観的におもったのは、バイトが集まらずに店長が出てなきゃいけない時間が限界を超えていたのではないか、ということであったが、それはほんとに推測にすぎない。たぶん、いくつもの理由が重なっているところに、最後に何かあって、というのが「疲れました」となるのだろう。
「疲れました」という正直な貼り紙は忘れられない。
ラーメン店は、店長が心底疲れてしまうと、閉店するのだ。
べんてん、という人気店も2014年に閉店したが、まもなく閉店しますとの貼り紙が貼られる前週まで「アルバイト募集」の紙が貼ってあった。アルバイトが来なかったからか、とおもったが、でもそれだけではなかったみたいである。体調の問題もあったようだ。
店舗が建て替えられるから、と当時からインターネットでそういう噂が流されていたが、それはウソである。今現在も同じ建物で焼きとん店が営業している。なんでああいう意味ないウソがネットでは流れるんだろうねえ。
ラーメン二郎も高田馬場にあった。直系店のホンモノ二郎である。
2013年に最終的に閉店となったが、それ以前からかなり休みがちで、最後はすごく無理にがんばってる感じだった。
休業が長くなった時期には、永らく休んですみませんが、なるべく早く復活したいとおもっています、との貼り紙があって、その貼り紙にはがんばってください、待ってます、と直筆の書き込みがあった。でも、そのまま復活できずに、体調不良により閉店、と貼り紙があり、そこにはまた惜しむ声がいっぱい書き込んであった。
また2013年当時は、早稲田に「稲穂」というタンメンの店があって、ここはほんとうに古くから早大生向けにやっていた店だったのだが、おじいさんとおばあさん二人でやっていた。たしかタンメン400円だったとおもうが、いつまで保つんだろうとおもっていたら、間もなく閉店した。老齢の人しか働いてない店は、かなりやばいです。
店跡はそのまま閉まったままになって、文字通りの「仕舞屋(しもたや)」となっている。ひさしが残ってるのでいまでもわかる。図星の並びです。
火災で閉店した店もあった。
高田馬場さかえ通り途中の少しあやしいエリアに入ったところ、私が勝手にミニミニゴールデン街と呼んでいたところに、かつて立葵と言う店があった。7席しかない店で、スナックを居抜きでラーメン店に強引に変えた店だったけど、2013年4月の火事で焼けてしまった。そのまま再開されていない。
そういうどうしようもない事情で閉まって店もけっこう多いようにおもう。
もちろん「いつ行っても空いているなあ」というラーメン店は長持ちしない。
スタートでつまずいて、そのまま回復できなかった、という感じである。
たとえば、美味いことは美味いが、なんかすでに食べたことのある味だなと感じさせるような店だ。
言うなれば「一回行っただけで、なんかもうわかった気にさせられる店」だと言える。
どれぐらいわかっているかは別として「そういう気にさせられる」というところがポイントである。
そういう店はちょっと保たない。
あとは、立地の悪さ、店の雰囲気、変な値段設定が原因だったりする。
「なんか変な方向に凝っている」と感じさせると、リピーターが生まれない。
なかなかむずかしい。
味が広くは受け入れられず、それで続かなかった店は、閉店した店のだいたい半分くらいというイメージである。
いまあらためて2013年のラインナップを見て、ああ、ここは懐かしい、また食べてみたいとおもったのは10店舗ほどだ。
べんてん。大勝軒。ぼたん。がんこ。けいすけ。さくら。みつ井。稲穂。にこにこ。天下一品。
なかなかに時の流れを感じさせる。
・・・・・
関連記事『「ラーメン二郎」を580回食べたコラムニストが、はじめて二郎で「屈辱」を感じたワケ』では、「ラーメン二郎に負けた」とおもった理由について、明かしています。