12月6日、男性2人から1億5000万円以上を騙し取った詐欺罪などに問われている「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣被告(25)の第2回公判が開かれた。事件が公になって以降、渡辺被告の“騙しのテク”に驚きの声が上がったが、実は呼び名は違えど、「頂き女子」は昔からいたという。事情通の間で伝説となっている“元祖・頂き女子”に取材した経験のあるライターの鈴木ユーリ氏がその戦慄の手口を明かす。
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【写真】「ホストをナンバー1にすることに生きる意味が…」と供述 みんなが騙された渡辺被告の“彼女風”プライベート動画 名古屋地裁で行われた6日の裁判では、茨城県内の男性から約3800万円を詐取した件が審理され、渡辺被告は白いマスクに紺色のスウェット姿で出廷。裁判長から「(起訴内容で)何か間違っていることは?」と問われると、「いや、ありません」と起訴内容を認めた。法廷では殊勝な態度「頂き女子」とは渡辺被告の造語で、恋愛感情を利用して男性の同情心をくすぐり、多額のお金を援助させることを指すという。実は渡辺被告とソックリの手口で、数多の男性から総額3億円以上を貢がせ、全額をホストに溶かした「元祖・頂き女子」が存在する。 朱美さん(仮名)という現在“アラフォー”の女性で、「頂き」活動から“引退”した直後の約3年前、彼女にインタビューしたライターの鈴木ユーリ氏がこう話す。「朱美さんは“頂き”でなく、自身の行為を『裏引き』という言葉で表現していました。裏引き自体は、東京・歌舞伎町などで20年以上前から行われており、要は飲食店や風俗店勤務の女性が店を通さずに客から直接金銭を受け取る行為をいいます。もちろん店側にバレたらペナルティーなどを科される“ご法度”ですが、さまざまな事情から手を出す女性は昔から少なからずいました」「家を売らせた」ことも 鈴木氏が続ける。「朱美さんのスゴいところは、裏引きをするためにあえて『援デリ』というグレーな仕事を選んだ点。援デリとは、出会い系サイトなどで援助交際を仲介・斡旋する業態をいいますが、もちろん違法行為です。でも朱美さんに言わせると、『出会いが援デリだったら(お金を巻き上げた)お客さんも後ろめたさがあるから、絶対に訴えてこない』と笑っていました」 実際、彼女が裏引きを行っていた期間は10年以上に及び、三桁を超える人数の男性から総額3億円以上の“援助”を受けたというが、被害届などを出されたことは一度もないという。「1人から巻き上げた最高額は2000万円。なかには息子が朱美さんに数百万円を渡しているのを知り、怒って抗議に訪れた父親をたらしこみ、最終的に『家を売らせて(親子で)お金を工面してもらったこともある』と悪びれずに話していた」(鈴木氏) 他にも消費者金融が各階に入ったビル近くで、男性客に自身が“切羽詰まった状況”にあると訴えた際、客が上から下まで1社ずつ回って借りた100万円近くを手渡されたこともあったという。もちろんウソの訴えだったが、問題は“なぜ、いとも簡単に男性はカネを差し出すのか?”という点だ。「俺に何かできることは?」「手口は基本、“りりちゃん”がマニュアルで『病み営業』と呼んでいたものと同じです。一言でいえば、とにかく自分の“窮状”を打ち明け、客に相談する――。最初、客として出会った時だけ“関係”を持ちますが、以降、裏引きのターゲットに定めた相手とは“男女の関係”にはならないと言っていました。代わりに『奨学金の返済が大変で生活できない』『学費が払えなくて大学を辞めざるを得ない』『折り合いの悪い親元を出て自分の人生を生きたいけど、引っ越し資金がない』などと“お金や身寄りのない女子大生”を演じ、客と店の人間という関係を曖昧にしていくそうです」(鈴木氏) 当時、30代だったにもかかわらず「女子大生」と偽っていた期間もあるというが、童顔のためか「疑われることはなかった」とも。とはいえ、そんな“泣き落とし”で男がやすやすとカネを出すとは信じがたいが、その点についてはこう話したという。「彼女は第一印象でお金を“出す、出さない”“いくらまで出せる”人間かが大体わかると言ってました。事実、取材は喫茶店で行ったのですが、周囲を見渡して『あの人は200万円以上』『あの人は出さないタイプ』などと即座に店内の男性を値踏みしていた。彼女によれば、重要なのは決して自分から『援助して』などと口にしないこと。困っている現状を話しながら、ほかに頼れる人がいないことをほのめかし、時間をかけてでも男性側から『俺に助けられることはある?』と言わせるのが成否のポイントだそうです」(鈴木氏)“守ってあげたい”スイッチ パッと見の印象や会話などからターゲットになりやすい「生真面目」「気弱」「女性経験の有無」などの“チェック項目”を慎重に確認していくそうだが、仮にそれらに当てはまったとしても、実際にお金を出してくれるとは限らないという。「朱美さんが“極意”に挙げたのが、『少なくない男性のなかには“女子を守りたい”スイッチのようなものがあって、それをうまく探し当てて押してあげれば、あとは驚くほどカンタンに向こうからお金を出してくれる』というものでした。でも、そうやって援助してもらったカネを彼女もすべてホストに注ぎ込み、単に巨額のお金が右から左に通過しただけ。『全部シャンパンタワーで溶けちゃったんだけどね』と呟いた時の遠い目は、渡辺被告の心象風景にも通じる“虚無”を感じました」(鈴木氏)「実刑は免れない」と見られている渡辺被告に対し、被害者たちはいま何を思うのか。デイリー新潮編集部
名古屋地裁で行われた6日の裁判では、茨城県内の男性から約3800万円を詐取した件が審理され、渡辺被告は白いマスクに紺色のスウェット姿で出廷。裁判長から「(起訴内容で)何か間違っていることは?」と問われると、「いや、ありません」と起訴内容を認めた。
「頂き女子」とは渡辺被告の造語で、恋愛感情を利用して男性の同情心をくすぐり、多額のお金を援助させることを指すという。実は渡辺被告とソックリの手口で、数多の男性から総額3億円以上を貢がせ、全額をホストに溶かした「元祖・頂き女子」が存在する。
朱美さん(仮名)という現在“アラフォー”の女性で、「頂き」活動から“引退”した直後の約3年前、彼女にインタビューしたライターの鈴木ユーリ氏がこう話す。
「朱美さんは“頂き”でなく、自身の行為を『裏引き』という言葉で表現していました。裏引き自体は、東京・歌舞伎町などで20年以上前から行われており、要は飲食店や風俗店勤務の女性が店を通さずに客から直接金銭を受け取る行為をいいます。もちろん店側にバレたらペナルティーなどを科される“ご法度”ですが、さまざまな事情から手を出す女性は昔から少なからずいました」
鈴木氏が続ける。
「朱美さんのスゴいところは、裏引きをするためにあえて『援デリ』というグレーな仕事を選んだ点。援デリとは、出会い系サイトなどで援助交際を仲介・斡旋する業態をいいますが、もちろん違法行為です。でも朱美さんに言わせると、『出会いが援デリだったら(お金を巻き上げた)お客さんも後ろめたさがあるから、絶対に訴えてこない』と笑っていました」
実際、彼女が裏引きを行っていた期間は10年以上に及び、三桁を超える人数の男性から総額3億円以上の“援助”を受けたというが、被害届などを出されたことは一度もないという。
「1人から巻き上げた最高額は2000万円。なかには息子が朱美さんに数百万円を渡しているのを知り、怒って抗議に訪れた父親をたらしこみ、最終的に『家を売らせて(親子で)お金を工面してもらったこともある』と悪びれずに話していた」(鈴木氏)
他にも消費者金融が各階に入ったビル近くで、男性客に自身が“切羽詰まった状況”にあると訴えた際、客が上から下まで1社ずつ回って借りた100万円近くを手渡されたこともあったという。もちろんウソの訴えだったが、問題は“なぜ、いとも簡単に男性はカネを差し出すのか?”という点だ。
「手口は基本、“りりちゃん”がマニュアルで『病み営業』と呼んでいたものと同じです。一言でいえば、とにかく自分の“窮状”を打ち明け、客に相談する――。最初、客として出会った時だけ“関係”を持ちますが、以降、裏引きのターゲットに定めた相手とは“男女の関係”にはならないと言っていました。代わりに『奨学金の返済が大変で生活できない』『学費が払えなくて大学を辞めざるを得ない』『折り合いの悪い親元を出て自分の人生を生きたいけど、引っ越し資金がない』などと“お金や身寄りのない女子大生”を演じ、客と店の人間という関係を曖昧にしていくそうです」(鈴木氏)
当時、30代だったにもかかわらず「女子大生」と偽っていた期間もあるというが、童顔のためか「疑われることはなかった」とも。とはいえ、そんな“泣き落とし”で男がやすやすとカネを出すとは信じがたいが、その点についてはこう話したという。
「彼女は第一印象でお金を“出す、出さない”“いくらまで出せる”人間かが大体わかると言ってました。事実、取材は喫茶店で行ったのですが、周囲を見渡して『あの人は200万円以上』『あの人は出さないタイプ』などと即座に店内の男性を値踏みしていた。彼女によれば、重要なのは決して自分から『援助して』などと口にしないこと。困っている現状を話しながら、ほかに頼れる人がいないことをほのめかし、時間をかけてでも男性側から『俺に助けられることはある?』と言わせるのが成否のポイントだそうです」(鈴木氏)
パッと見の印象や会話などからターゲットになりやすい「生真面目」「気弱」「女性経験の有無」などの“チェック項目”を慎重に確認していくそうだが、仮にそれらに当てはまったとしても、実際にお金を出してくれるとは限らないという。
「朱美さんが“極意”に挙げたのが、『少なくない男性のなかには“女子を守りたい”スイッチのようなものがあって、それをうまく探し当てて押してあげれば、あとは驚くほどカンタンに向こうからお金を出してくれる』というものでした。でも、そうやって援助してもらったカネを彼女もすべてホストに注ぎ込み、単に巨額のお金が右から左に通過しただけ。『全部シャンパンタワーで溶けちゃったんだけどね』と呟いた時の遠い目は、渡辺被告の心象風景にも通じる“虚無”を感じました」(鈴木氏)
「実刑は免れない」と見られている渡辺被告に対し、被害者たちはいま何を思うのか。
デイリー新潮編集部