たった1人の「子供の声がうるさい」という意見で廃止になり、物議を醸した長野市内の公園。あの騒動から約1年が経過したが、今度は「閉園工事の騒音がうるさい」との声が相次ぎ、さらに市側が提案している代替の施設案を巡って、地元では不満の声があがっていることがわかった──。
【涙を誘う】更地になった公園を寂しがる 子供たちからのメッセージ 騒動当時は著名人らも激怒 長野駅から車で10分ほどの住宅地に、問題の青木島遊園地はある。2004年に地区住民の要望を受けて整備されたこの公園は、小学校、保育園、児童センターに囲まれた場所にあり、子供の遊び場として使用されていた。

しかし、この公園付近に住む国立大学の名誉教授(当時)が「児童センターに子供を迎えに来る保護者の車のエンジン音がうるさい」「遊んでいる子供の声がうるさい」などと長年、児童センターや長野市にクレームを入れていたことが週刊ポストの取材によって判明。 施設側も子供の遊び場を制限するなど対応してきたが、昨年12月に閉園が決まったのだ。このことがわかると、たった1人のクレームで子供の遊び場が失われたことに対し、 SNS上では〈上級国民に忖度したのか〉などと怒りの声が相次いでいた。◆青木島遊園地の「今」 それから約1年が経った今年11月。SNSで再び青木島遊園地がクローズアップされることになる。 きっかけとなったのはX(旧Twitter)で毎年恒例となっている「クソ物件オブザイヤー」だ。ユーザーが1年を振り返り、話題になった不動産を投稿し、大賞を決めるという主旨の企画。これに青木島遊園地を“クソ物件”として推すユーザーが現れたのだ。 しかし、騒動自体は昨年の話。いったいなぜと投稿を確認すると、今年行なわれた青木島遊園地の原状回復工事作業で、「うるさいから工事をやめて」と一部住民が意見していたことがわかった。投稿に添付されていた写真(地元紙が撮影した写真)には「ウルサいから公園潰しの工事やめて!」と書かれたプラカードをかかげる反対派住民の姿も確認できる。 残しても「うるさい」。廃止しても「うるさい」──この投稿はX上で話題を呼び、〈耳栓入れて生活しろ〉などと騒動自体に呆れた様子を見せるユーザーも。 現地はどうなっているのか。改めて取材に訪れると、設置されていた遊具などがすべて撤去され、公園は殺風景な空き地に変わっていた。柵やロープで囲われた敷地内には立ち入ることが出来ず、公園の面影はなくなっていた。近隣住民はこう語る。「公園を更地にする工事は4月ごろに行われました。作業は5日間ほどで、だいたい8時から17時に行われ、ショベルカーやダンプカーなどが来ていました。10名ほどで木を伐採したり、遊具を撤去したりしていましたね。 もちろん音は出ていましたが、私は気になるほどではなかった。(閉園工事の音について)うるさいと抗議していた人はいたようですが。そもそも子供の声も気になったことはありません」 閉園のきっかけとなった名誉教授はこの工事音にも苦言を呈していたのだろうか。「工事の音について何にも言わないし、その後も何も言ってこない。自分の意見が通ったので満足したのではないか」(前出・近隣住民)◆「子供たちの意見が置き去りになった案」 青木島遊園地の問題を追及し続けてきた長野市議の小泉一真氏も「重機で騒音が出ていたと思われますが、大々的な抗議運動に繋がることはありませんでした」と語る。 原状回復工事から半年以上が経過し、一定の解決に至ったように見えるが、今度は別の問題が生じているという。「公園が廃止となったことで、代わりになる子供の遊び場をどうするか議論が交わされていますが、長野市側が解決策を見いだせておらず、住民からは『本当に子供のことを考えているのか』『大人の事情を押しつけているだけではないか』と疑問視されています」(小泉市議) 市は『青木島こども未来プラン』と称し、代替の遊び場案などの計画を公式サイトで公開。〈子どもたちが放課後も校外に移動することなく、小学校で安全に伸び伸びと遊び、学べる環境を整えるため〉という理由で、公園に隣接する児童センターを小学校内にある「子どもプラザ」に統合し、小学校の校庭に子どもプラザや学校施設としても利用できる多目的棟を建設するなどの計画を提示している。「市は『公園を廃止したので、子供の遊び場として小学校の校庭を使います』という提案をしています。本来であれば、これは子供たちを含めてオープンな形で意見を聞くべきでしょう。アンケート調査をもとに市の秘書課ベースで話を進めたもので、子供たちの意見が置き去りになった案だと感じています。 棟を建設することで、決して広いとは言えない小学校の校庭はさらに狭くなるし、遊び場としての安全性にも疑問が出てきます」(小泉市議) こうした指摘について長野市に意見を聞いた。今年5月に小学校・保育園保護者説明会(児童の出席可)を開催、その後も小学校全保護者へのアンケートによる意見募集や児童センター、子どもプラザ保護者説明会などを実施しているとし、児童の安全性確保については「工事中も学校で使用しており、新多目的棟での活動に支障はないと考えております」(企画政策部、以下同)、スペースについても「新たに整備する多目的棟は、現在の児童センターとほぼ同じ面積を確保するため、活動に支障はないと考えております。(校庭の敷地減について)現在の植栽の場所を利用するため、校庭など学校活動には影響しません」とし、「子どもプラザへの統合に当たっては、環境の変化等を心配する保護者もいるため、時期や手法については保護者や関係者の意見を聴きながら柔軟に対応することとし、関係者との協議を継続しながら丁寧に進めてまいりたいと考えております」とのことだった。12月9日にも再び児童センターの保護者と意見交換を行なうという。 更地になった公園に隣接する児童センターの窓ガラスには、〈ずっとわすれない あおきじまゆうえんち だいすき ありがとう〉と子供たちが書いた張り紙が貼られていた。
長野駅から車で10分ほどの住宅地に、問題の青木島遊園地はある。2004年に地区住民の要望を受けて整備されたこの公園は、小学校、保育園、児童センターに囲まれた場所にあり、子供の遊び場として使用されていた。
しかし、この公園付近に住む国立大学の名誉教授(当時)が「児童センターに子供を迎えに来る保護者の車のエンジン音がうるさい」「遊んでいる子供の声がうるさい」などと長年、児童センターや長野市にクレームを入れていたことが週刊ポストの取材によって判明。
施設側も子供の遊び場を制限するなど対応してきたが、昨年12月に閉園が決まったのだ。このことがわかると、たった1人のクレームで子供の遊び場が失われたことに対し、 SNS上では〈上級国民に忖度したのか〉などと怒りの声が相次いでいた。
それから約1年が経った今年11月。SNSで再び青木島遊園地がクローズアップされることになる。
きっかけとなったのはX(旧Twitter)で毎年恒例となっている「クソ物件オブザイヤー」だ。ユーザーが1年を振り返り、話題になった不動産を投稿し、大賞を決めるという主旨の企画。これに青木島遊園地を“クソ物件”として推すユーザーが現れたのだ。
しかし、騒動自体は昨年の話。いったいなぜと投稿を確認すると、今年行なわれた青木島遊園地の原状回復工事作業で、「うるさいから工事をやめて」と一部住民が意見していたことがわかった。投稿に添付されていた写真(地元紙が撮影した写真)には「ウルサいから公園潰しの工事やめて!」と書かれたプラカードをかかげる反対派住民の姿も確認できる。
残しても「うるさい」。廃止しても「うるさい」──この投稿はX上で話題を呼び、〈耳栓入れて生活しろ〉などと騒動自体に呆れた様子を見せるユーザーも。
現地はどうなっているのか。改めて取材に訪れると、設置されていた遊具などがすべて撤去され、公園は殺風景な空き地に変わっていた。柵やロープで囲われた敷地内には立ち入ることが出来ず、公園の面影はなくなっていた。近隣住民はこう語る。
「公園を更地にする工事は4月ごろに行われました。作業は5日間ほどで、だいたい8時から17時に行われ、ショベルカーやダンプカーなどが来ていました。10名ほどで木を伐採したり、遊具を撤去したりしていましたね。
もちろん音は出ていましたが、私は気になるほどではなかった。(閉園工事の音について)うるさいと抗議していた人はいたようですが。そもそも子供の声も気になったことはありません」
閉園のきっかけとなった名誉教授はこの工事音にも苦言を呈していたのだろうか。
「工事の音について何にも言わないし、その後も何も言ってこない。自分の意見が通ったので満足したのではないか」(前出・近隣住民)
青木島遊園地の問題を追及し続けてきた長野市議の小泉一真氏も「重機で騒音が出ていたと思われますが、大々的な抗議運動に繋がることはありませんでした」と語る。
原状回復工事から半年以上が経過し、一定の解決に至ったように見えるが、今度は別の問題が生じているという。
「公園が廃止となったことで、代わりになる子供の遊び場をどうするか議論が交わされていますが、長野市側が解決策を見いだせておらず、住民からは『本当に子供のことを考えているのか』『大人の事情を押しつけているだけではないか』と疑問視されています」(小泉市議)
市は『青木島こども未来プラン』と称し、代替の遊び場案などの計画を公式サイトで公開。〈子どもたちが放課後も校外に移動することなく、小学校で安全に伸び伸びと遊び、学べる環境を整えるため〉という理由で、公園に隣接する児童センターを小学校内にある「子どもプラザ」に統合し、小学校の校庭に子どもプラザや学校施設としても利用できる多目的棟を建設するなどの計画を提示している。
「市は『公園を廃止したので、子供の遊び場として小学校の校庭を使います』という提案をしています。本来であれば、これは子供たちを含めてオープンな形で意見を聞くべきでしょう。アンケート調査をもとに市の秘書課ベースで話を進めたもので、子供たちの意見が置き去りになった案だと感じています。
棟を建設することで、決して広いとは言えない小学校の校庭はさらに狭くなるし、遊び場としての安全性にも疑問が出てきます」(小泉市議)
こうした指摘について長野市に意見を聞いた。今年5月に小学校・保育園保護者説明会(児童の出席可)を開催、その後も小学校全保護者へのアンケートによる意見募集や児童センター、子どもプラザ保護者説明会などを実施しているとし、児童の安全性確保については「工事中も学校で使用しており、新多目的棟での活動に支障はないと考えております」(企画政策部、以下同)、スペースについても「新たに整備する多目的棟は、現在の児童センターとほぼ同じ面積を確保するため、活動に支障はないと考えております。(校庭の敷地減について)現在の植栽の場所を利用するため、校庭など学校活動には影響しません」とし、「子どもプラザへの統合に当たっては、環境の変化等を心配する保護者もいるため、時期や手法については保護者や関係者の意見を聴きながら柔軟に対応することとし、関係者との協議を継続しながら丁寧に進めてまいりたいと考えております」とのことだった。12月9日にも再び児童センターの保護者と意見交換を行なうという。
更地になった公園に隣接する児童センターの窓ガラスには、〈ずっとわすれない あおきじまゆうえんち だいすき ありがとう〉と子供たちが書いた張り紙が貼られていた。