芸人として活躍しながら、小・中学生向けの補修塾を経営する笑い飯の哲夫。そんな彼が子どもの教育に悩む親たちの相談に答えた週刊SPA!の連載が『がんばらない教育』という一冊の単行本になって12月22日に発売! 発売を記念して、子どもの教育に悩む親たちからの相談に答えていく本書の一部を特別公開! (初公開2023年4月9日の再配信)
◆ゲームの影響で息子は「ぶっ殺す」が口癖に
相談者39歳男性・デザイナー(妻、息子7歳)
1年生の長男が、シューティングゲームの「フォートナイト」にハマって銃撃戦に憧れを持ちはじめ、ゲームをしながら「ぶっ殺す」などと言いだしたのが気になっています。
もちろんゲームの中のことですし、あえて悪ぶった口を利くのも子どものころにはよくある話だとは思うのですが、普段の家族や友達とのコミュニケーションにまで悪い影響が及ぶのではないかと心配です。
ゲームに限らず、残虐な表現がある映像やコミックなどに今後子どもが興味を持ちだしたときどの程度、そしていつまで親が「検閲」すべきだと思いますか?また、それによって言葉遣いなどが悪影響を受けていると感じた場合、親としてどう対応したらいいのでしょうか。
◆哲夫のアンサー
「キス」「胸」「キラキラ星」「エッチ」「トゥリャトゥリャトゥリャトゥリャトゥリャトゥリャリャ」。
人それぞれ、口から発する前に、なぜか少しためらう言葉ってありますよね。何の作用かよくわからないのですが、言うと恥ずかしいフレーズがあります。
それとは別に、言うだけで不幸になりそうなフレーズもあります。「死ね」「殺す」などがその代表です。おそらく、それらを言うなとしつけてもらえたからこんな感性になったのでしょう。
◆親や目上の人には言ってはならない言葉がある
そんななか、独特な精神的回路を周遊して、言うと恥ずかしくもあり、言うだけで不幸になりそうでもあり、それでいて言うとおもしろく、口が喜んでそうなフレーズが関西にはあります。「しばく」です。子どものころから、少し年上の人々が多用する様相がありました。だからこそ真似して使いたい言葉でもありました。
意味は、暴力を振るうぞというような雰囲気でしたが、後には「茶しばく」など、使い勝手のいい言葉に変遷していったように思います。
そんな魅惑の言葉をどう扱っていたかと申しますと、もっぱら友達同士の戯れで交わしていただけでした。しかしそれを誤って、テレビゲームで失敗した父に対して使ったとき、父からものすごい剣幕で怒られたことを覚えています。そういうことではないでしょうか。
親に向かって言ってはならない言葉、目上の人に言ってはならない言葉、でも友達には言ってもいい言葉、そんな言葉のすみ分けがあるように思います。
◆子どもの口調は親の言葉によって決まる
子どもの口調は、いろんな影響を受けて形成されます。親、祖父母、兄弟姉妹、友達、先生、テレビ、ラジオ、入手するあらゆるものから語句や発音を習得しています。クレヨンしんちゃんのまんまでしゃべる子どももしばしば見かけます。
それでもやはり一番の仕入れ先は親です。必ず子は親の口調になります。親が「ぶっ殺す」と言っていれば、子は「ぶっ殺す」と言う人になります。親が「ありがとう」と言っていれば、子は「ありがとう」と言います。
残虐な表現の検閲については、フィクションをフィクションだと教えることは文化として重要ですから、フィクションの漫画や映像であれば検閲はいらないと思います。しかし、ノンフィクションの残虐な映像となると検閲は必要です。人として不愉快な動画などは見せないでください。
ゲームについては、やりすぎると視力が落ちます。ほどほどにさせてあげてください。息子さんが長時間ゲームをしていたら、「しばく」と言ってあげてください。いつか息子さんが親の口調をマネして「しばく」と言ってきますので、そのときはものすごい剣幕で怒ってください。
★相手によって使う言葉にはすみ分けがあると教えよう
イラスト/とあるアラ子 図版/ミューズグラフィック