上場企業の今冬のボーナスが80万円超と過去最高を記録する一方、帝国データバンクによれば、前年比でボーナスが増えた企業は24.1%にとどまった。コロナ明けで広がる賞与格差のリアルな実情を追った。◆2年連続で値上げもコスト高でボーナス減!?
【物流】佐川急便中村俊之さん(仮名・38歳・既婚)営業ドライバー/月収31万円・入社3年昨冬のボーナス56万円⇒今冬のボーナスは…
36万円
※あくまで個人の実例です。=====
昨年冬のボーナス56万円から、まさかの20万円もの大幅減を被ったのは、物流大手・佐川急便の営業ドライバーとして働く転職3年目の中村俊之さん(仮名・38歳)。
年収490万円の中村さんにとって大きな痛手だろう。佐川急便は宅配便業界2位。日本郵便と協業を目指す王者・ヤマト運輸を猛追している。
「コロナ禍の’20年に失業してしまい、転職しました。この年は巣ごもり需要の増加で業績好調。70万円と人生最高額のボーナスを手にして驚いたものです。でも、今回の大幅減を受けて、購入を考えているマンションのローンは、ボーナス月の支払い加算は厳しそうと痛感しました。専業主婦の妻にも、働いてもらう必要がありそうですね……」
◆物流業界が抱える「物流2024年問題」
物流業界では、「物流2024年問題」と呼ばれる課題を抱える。来年4月からトラック運転手の時間外労働に年960時間の上限が設けられるなど規制が強化されるのだ。
人手不足に一層拍車がかかる前に、各社は対応を急ぐ。佐川急便は、初めて2年連続の運賃値上げを敢行した。
「人手不足は深刻で、毎月2、3人の新人が入ってくる。この値上げは、ドライバーにとって大きな負担となる荷物の積載作業の人員を配置するため。運転に専念させることで、ドライバーの待遇改善や人材確保を図っており、ヤマト運輸など同じ営業エリア内を走る競合他社の人材を好待遇で引き抜いているほどです」
◆ボーナスの補に立ち塞がるハードル
人材難なのに大幅減額されたボーナスの補にも、さらなるハードルが立ち塞がる。
「会社は残業を減らす方針ですが、夜の配達を自社ドライバーで融通し合うようにして、残業代を8万円は稼げるようにしてくれてます。でも、規制で労働時間が短くなり、残業代は確実に減る。そこで、会社は運賃を値上げして、基本給の引き上げに腐心している。
実際、昇給は順調で、ベアで年1万円は上がっているし、今後、ボーナスも増えるのを祈るしかない。社風は体育会系で、賞与の金額もあけすけに言い合ったりします。ボーナス支給日はささやかな宴会を同僚とできればいい」
他社の過去最高水準の賞与をよそに、風通しのいい社風だけが救いとなっているのか。
取材・文/週刊SPA!編集部 アンケート協力/パイルアップ