全国各地で出没が相次ぐクマ。人が襲われる被害も相次いでおり、自治体は駆除など対応に追われているが、彼らを悩ませる問題がある。クマの駆除をめぐり、自治体に「クマがかわいそう」「クマを殺すな」などと苦情が殺到しているのだ。
10月には秋田県美郷町の作業小屋にクマ3頭が20時間以上にわたって居続ける騒動があり、地元の猟友会によって駆除された。この件が報道されると、役場には県外から抗議の声が相次いだという。美郷町役場の担当者が明かす。
「実は地元ではそれほど騒ぎになっていませんでしたが、全国ニュースになったため、それこそ九州在住の方からも抗議の電話がありました。当初は『クマを殺さないで』という内容でしたが、駆除してからは『なぜ殺したんだ』という怒りの声に変わりました。電話で700件、メールで700件、合わせて1400件もの抗議の声が届きました。
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こちらとしては丁寧に事情を説明するしかなく、どうにかご理解していただきたいのですが、一方的にまくし立てられる方が多く、『クマと一緒に死ね』『税金泥棒』『役場をやめろ』と言われたこともあります。
こうした電話は数分では終わらず、ときには30分以上におよぶ場合もあります。一時は通常業務を行えない状態でした」
過剰な抗議や誹謗中傷に悩んでいるのは自治体だけではない。命がけでクマと向き合う地元猟友会のハンターも同じだ。
「クマによる被害がこれだけ社会問題になっている今こそ、ハンターの立場や思いをきちんと伝えたい。いや、今後のためにも伝えなければいけないと思う」
こう訴えるのは、北海道東部の標茶町などで牛66頭を襲ったヒグマ「OSO18」を追い続けてきた北海道猟友会標茶支部の後藤勲支部長だ。
4年にわたって酪農家を苦しめてきたOSO18は今年7月にようやく駆除されたが、このときも駆除したハンターに対して批難が殺到したという。
OSO18を駆除したのは、標茶町の隣町である釧路町役場の男性職員。有害鳥獣駆除を担当する部署に勤務する公務員ハンターだ。
「OSO18を駆除したハンターは標茶町の出身。我が家の隣に住んでいたので、彼のことはよく知っています。彼によれば、職場に誹謗中傷に近い抗議電話がいくつもかかってきて、つらい思いをしたそうです」(後藤支部長)
男性職員が在籍する釧路町役場の同僚も次のように明かした。
「捕獲後しばらく、『ハンターを出せ』などと抗議の電話やメールが殺到しました。トータルで40件ほどでしょうか。一回の電話が長いので、どうしても業務に差し支えが出てしまいました」
OSO18と駆除したハンター
「OSO18を捕獲した同僚の写真が現代ビジネスさんに掲載されたときには『クマちゃんへの冒涜だ』との怒りの電話が相次ぎました。抗議してくる方の多くは、なぜかクマとは言わず、『クマちゃん』という言い方をします」
一方的に同じことをまくし立て、気が済んだらいったん電話を切り、またかけてくる。これが7、8回続くこともありました。我々役場の人間は立場上、強く反論できません。仮にこちらが何かを言っても、反応はなく聞いている様子すらない。まるで機械と話しているようでした。
彼は精神的に苦しんだと思います。ときには『夜道を歩くときは気をつけろ』『お前も死ね』といった過激な内容もあり、彼は『こんな電話が来ると思っていなかった』と漏らしていました」
駆除されたOSO18こうした事態に対し、後藤支部長は「有害なクマを駆除したにもかかわらず、誹謗中傷される。そんなバカな話はない」と怒りをあらわにする。「彼は有害鳥獣駆除を担当する部署にいて、クマが出たという報告があったから出動しただけ。何も悪いことをしていません。にもかかわらず、誹謗中傷されて思い悩む。こんなことが許されていいのでしょうか」(後藤支部長)ハンター歴60年の後藤支部長はクマとの共生の難しさを訴える。「『クマを殺すな』と主張する人は現場を見てほしい。クマの被害で苦しむ自治体に住んでみれば大変さがわかりますよ。クマとの共存なんてできるわけがない」後編記事『クレーマーと保護団体に告ぐ!最凶ヒグマ「OSO18」ハンターの怒りの告白「駆除は命をかけたボランティア」「人間とクマの共存は100%不可能だ」』では、現場で命をかけてクマと対峙するハンターが誹謗中傷を繰り返すクレーマー、そして保護団体への本音を明かす。
駆除されたOSO18
こうした事態に対し、後藤支部長は「有害なクマを駆除したにもかかわらず、誹謗中傷される。そんなバカな話はない」と怒りをあらわにする。
「彼は有害鳥獣駆除を担当する部署にいて、クマが出たという報告があったから出動しただけ。何も悪いことをしていません。にもかかわらず、誹謗中傷されて思い悩む。こんなことが許されていいのでしょうか」(後藤支部長)
ハンター歴60年の後藤支部長はクマとの共生の難しさを訴える。
「『クマを殺すな』と主張する人は現場を見てほしい。クマの被害で苦しむ自治体に住んでみれば大変さがわかりますよ。クマとの共存なんてできるわけがない」
後編記事『クレーマーと保護団体に告ぐ!最凶ヒグマ「OSO18」ハンターの怒りの告白「駆除は命をかけたボランティア」「人間とクマの共存は100%不可能だ」』では、現場で命をかけてクマと対峙するハンターが誹謗中傷を繰り返すクレーマー、そして保護団体への本音を明かす。