川崎市は31日、相模原市の食品加工会社が安価な外国産の豚肉を「国産」と偽り、川崎市立小中学校の給食食材として提供していたと発表した。
同社は市教育委員会に対し、10年以上前から産地を偽装していたと認めている。市から相談を受けた県警は不正競争防止法違反(誤認惹起(じゃっき))容疑を視野に捜査。市は関連団体と協議を重ね、損害賠償請求も含めた対応を検討する。(松岡妙佳)
発表によると、問題の業者は食肉加工販売「寿食品」(相模原市中央区)。川崎市は給食に関する業務を公益財団法人・市学校給食会に委託しており、同会が東京都内の納品業者に食材調達を発注。納品業者に豚肉を納めていたのが寿食品だった。少なくとも2012年度からの契約が確認されている。
今年9月、市教委が年1回実施する産地判別検査で、同社の豚肉は「カナダ産の可能性が高い外国産」と判明。市教委の聞き取り調査に、同社は「10年以上前から国内産に外国産を混ぜていた」と認めた。国産の仕入れ値に応じて混入割合は変動し、国産2に対し外国産が8と高い比率になったこともあるという。
また、同社は納品業者と「国内産の豚肉を提供する」との契約を結んでいながら外国産を納入し、産地を「関東地方(千葉県)」とする証明書を提出していた。市は故意の偽装と断定。県警に相談するとともに、国産との契約があったにもかかわらず外国産を混入させ、給食を提供させたことについて、納品業者らと協議しながら対応を検討している。
国産と偽った外国産の豚肉は一般に流通する輸入品と同様のもので、産地偽装による児童生徒の健康への影響は確認されていない。同社が扱う豚肉は、市立小114校、市立中52校、特別支援学校4校で給食として提供されていたとみられる。問題発覚を受け、10月から別会社が提供する豚肉に変更している。
市は今後、市学校給食会に対し、国産品の規格順守の徹底を通知する。問題発覚のきっかけとなった産地判別検査についても、10年以上にわたると同社が認めている産地偽装を見抜けなかったことから、検査の方法なども見直す方針。
国は食育基本法で地産地消をうたい、市は給食の米や肉、野菜は原則として国産を取り入れている。小田嶋満教育長は「学校給食に対する市民の信頼を裏切る行為で誠に遺憾。捜査に全面的に協力し、再発防止を図る」とコメントした。
寿食品は取材に対し、「担当者が不在で対応できない」とした。