埼玉県蕨市にある郵便局に拳銃を持って立てこもり女性2人を人質にとったとして、86歳の男が逮捕された。男は「郵便局の人と話したかった」などと供述している。
立てこもりの直前には、蕨市と隣接する戸田市の病院で発砲事件があったほか、アパート火災も起きていて、これらについても男は関与をほのめかしているという。
■住宅街に銃声「爆竹の2倍の音『バーン!』と…」
車の後部座席の中央で背もたれによりかかり、顔を隠すことなく虚ろな表情をした、黒いジャージ姿の男。カメラに目をやる場面もあった。
鈴木常雄容疑者(86)は先月31日、人質強要処罰法違反の疑いで緊急逮捕された。
突然鳴り響いた発砲音のような音。その直後、叫ぶような声も聞こえる。
現場は、蕨市の国道17号から一本入った旧中山道沿いにある「蕨郵便局」。
閑静な住宅街の一角は、物々しい雰囲気に包まれていた。
複数の警察官が警戒している様子が確認できる。
発砲音らしきものを聞いた近隣住民:「撮影ボタンを切った直後に発砲音があって。直後に刑事が飛んできて『逃げてください』と言われて、みんな必死で逃げて避難した。爆竹の2倍の音『バーン!』という音がして。最初、銃声だと思わなくて…」
■規制線が張られ厳戒態勢 住民「家に帰れない」
上空から見ると、郵便局前の道路に止められているパトカーの後ろで身をかがめる4人の警察官。
午後3時すぎ、現場周辺では警察車両が「男は現在も拳銃を所持しています。いつ発砲するか分かりません」などと注意を呼び掛け、家から出ないようアナウンス。
規制線が張られ“厳戒態勢”に。ブルーシートも確認できる。
警察は、蕨郵便局から半径400メートルの住民の避難を進めていた。
規制線の中にある保育園に子どもを預けている母親:「子どもが保育園で…」
保育園に預けている2歳の子どもが心配で、安否確認をする母親。
規制線の中にある保育園に子どもを預けている母親:「(Q.大丈夫でした?連絡つきました?)(保育園で)待機しているんですけれども、(規制線が)解除されないとお迎えできない」
規制線の中に家があり帰れない人:「家に帰れない」
警察官:「申し訳ございません。お願いします」
規制線の中に家があり帰れない人:「すぐそこなんだけどダメだって」「(Q.すぐそこ、入れない?)それもまたちょっと…困った話ですね」
規制線が張られたことで、帰宅時間帯の県道では渋滞が発生。
■緊迫逮捕劇 容疑者「逃げ遅れた人を人質に」
およそ8時間にわたって、郵便局に立てこもった鈴木容疑者。この時、拳銃一丁を所持していた。
中には、20代と30代の女性2人が取り残されていた。
事態が動いたのは、辺りが暗くなった午後7時15分ごろ。立てこもってから“およそ5時間後”。盾を持った警察官4人が解放された20代の女性を囲うような形で保護、女性はしっかりとした足取りで歩いている。
警察は、女性2人の安全を確保するため男と電話で交渉。男に興奮した様子はなく、説得にも応じ、1人が解放されたという。
取り残されているもう1人の30代の女性を救出するため、横一列で身をかがめ、警戒を続ける警察。
すると、取り残されていたとみられる2人目の女性の姿も…。警察によると、女性は鈴木容疑者の隙を見て逃げ出したところを警察が保護。2人ともけがはないという。
そして午後10時20分ごろ、隊列を組み郵便局の中へと突入。
警察の動きが慌ただしくなり、郵便局の横に車が横付けされた。すると突入してから、わずか1分。銃を持ち立てこもっていた鈴木容疑者の身柄を確保。
警察の調べに、鈴木容疑者は「郵便局の人と話したかった。逃げ遅れた人を人質にとった」と、容疑を認めているという。
■病院で発砲…診察室に大きな血だまり 火災も…
郵便局での立てこもりの“1時間ほど前”。およそ1.5キロ離れた蕨市と隣接する戸田市の病院でも事件があった。
病床数500を超える「戸田中央総合病院」で、「爆発音のような音がした」と110番通報が入った。
発砲音らしきものを聞いた近隣住民:「車のタイヤが破裂するぐらいのものすごい音。軽い音じゃなくて『ドン!』っていうような音。病院の人が電話していたので『情報が錯綜(さくそう)しています。中で誰か撃たれたようだ』と」
看護師が「窓から離れてください」と叫び、診察室には大きな血だまりが残っていたという。
40代の医師と60代の患者の男性がけがをしたが、命に別状はないという。
鈴木容疑者は「私が撃った」と供述し、関与を認めているという。
そしてもう一つ関連があるとみられているのが、激しく炎を上げるアパート、鈴木容疑者の自宅だ。
鈴木容疑者は「自宅にも放火した」とも話していて、警察が詳しい動機を調べている。