「やったかもしれないし、やってないかもしれない」
【写真】入所者に薬物を飲ませて殺害したとみられる望月大輔容疑者(40) 長野県塩尻市の老人ホームで入所者の前田裕子さん(当時77)に薬物を飲ませて殺害したとみられる元職員の望月大輔容疑者(40)。取り調べで曖昧な供述を続ける男の周辺では、不可解な出来事が頻発していた。◆ ◆ ◆逮捕案件以外にも数々の余罪が疑われ、今も捜査は続く 殺人容疑で10月11日に逮捕された望月を、県警は早くからマークしていた。 地元紙記者が解説する。「前田さんの死亡は昨年5月28日。その3日後に、望月は別件逮捕されている。容疑は2021年8月に、偽名を使って役場に虚偽の通報をしたという偽計業務妨害罪(後に不起訴)です」

事件があった老人ホーム その後、望月は有印私文書偽造、窃盗、詐欺等の容疑で次々と再逮捕され、「昨年9月には傷害罪でも再逮捕。同僚女性の飲み物に薬物を混ぜて飲ませたという容疑です」(同前) こうした一連の捜査で殺人容疑が固まり逮捕に至った。だが捜査関係者は言う。「実は、望月にはこれらの逮捕案件以外にも数々の余罪が疑われており、その捜査は今も続いています」 いまだ“疑惑”が燻る望月はどんな人物なのか。専門学校で出会った1歳上の妻と20代前半で結婚 金属加工会社で働く父と専業主婦の母の間に一人っ子として生まれた望月は、諏訪郡下諏訪町で育った。「母親の後ろをついてまわる物静かな子」(近隣住民) 中学校でも特段目立つタイプではなかった。「100点満点のテストで52、3点を取っただけで喜び『お母さんに褒めてもらった』と文集に書いていました」(同級生) 一方、こんな一面も。「近所の土手に友達と火をつけて、先生が飛んできて大騒ぎになったことがあった」(別の同級生の親) 県立高校を卒業後、介護の専門学校に入学。そこで1歳上の妻と出会い、お互い介護士として働きながら20代前半で結婚。1男1女に恵まれた。「10年5月に父親が亡くなった後、同じ町内の土地を購入し、約3000万円のローンを組んで一軒家を建てた。グアムに行ったり、庭先でバーベキューをしたり、仲睦まじい家族に見えた」(別の近隣住民)望月の自宅周辺で不審な事件が多発するように ところが、18年9月に職場を変えてから望月の人生は暗転していく。「介護事業部長を任されていましたが、施設内での窃盗が発覚して警察沙汰に。結局、示談して不起訴となったが、20年5月に自主退職した」(施設関係者) コロナ禍で緊急事態宣言が発出されるようになっていた翌21年、望月の自宅周辺では不審な事件が度々起こるようになった。「ホームタンクのバルブが勝手に開けられ、中に入っていた灯油が空っぽになる悪戯が毎日のように起こったのです」(被害住民) 車のタイヤがパンクさせられる事案も相次ぎ、極めつけが不審火だった。「3月16日に望月宅の斜め前の駐車場でボヤがあり、30日には望月宅の敷地内でもボヤ騒ぎが起きた。翌日、警察が話を聞きに行くと望月は卒倒し、そのまま救急車で運ばれ入院してしまった」(同前)実家周辺で起こったボヤの犯人はいまだ捕まらず 妻と離婚したのはそれからすぐ。ローンも払えなくなり自己破産した。望月は実家に戻ったが、以降、不審な事案はピタリと止んだ。 だが、次は戻った実家周辺で不審火が発生する。望月が役場に虚偽の通報をした約2カ月後のことだ。 行く先々で悪質な悪戯やボヤが続くのは単なる偶然か。望月の母に話を聞いた。「あの子は優しい子。優しすぎて、自分を抑えてしまう性格なんです。薬も飲んでいましたから」――放火の疑いがある。「その件は落着ですよ。犯人も見つかって片付いています。(息子は)シロです」 だが火事の被害者は、「消防車が何台も来て大騒ぎ。犯人はいまだに捕まっていないよ」 望月の弁護人は「軽度の知的障害と精神障害があり、責任能力がない」と主張している。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年10月26日号)
長野県塩尻市の老人ホームで入所者の前田裕子さん(当時77)に薬物を飲ませて殺害したとみられる元職員の望月大輔容疑者(40)。取り調べで曖昧な供述を続ける男の周辺では、不可解な出来事が頻発していた。
◆ ◆ ◆
殺人容疑で10月11日に逮捕された望月を、県警は早くからマークしていた。
地元紙記者が解説する。
「前田さんの死亡は昨年5月28日。その3日後に、望月は別件逮捕されている。容疑は2021年8月に、偽名を使って役場に虚偽の通報をしたという偽計業務妨害罪(後に不起訴)です」
事件があった老人ホーム
その後、望月は有印私文書偽造、窃盗、詐欺等の容疑で次々と再逮捕され、
「昨年9月には傷害罪でも再逮捕。同僚女性の飲み物に薬物を混ぜて飲ませたという容疑です」(同前)
こうした一連の捜査で殺人容疑が固まり逮捕に至った。だが捜査関係者は言う。
「実は、望月にはこれらの逮捕案件以外にも数々の余罪が疑われており、その捜査は今も続いています」
いまだ“疑惑”が燻る望月はどんな人物なのか。
金属加工会社で働く父と専業主婦の母の間に一人っ子として生まれた望月は、諏訪郡下諏訪町で育った。
「母親の後ろをついてまわる物静かな子」(近隣住民)
中学校でも特段目立つタイプではなかった。
「100点満点のテストで52、3点を取っただけで喜び『お母さんに褒めてもらった』と文集に書いていました」(同級生)
一方、こんな一面も。「近所の土手に友達と火をつけて、先生が飛んできて大騒ぎになったことがあった」(別の同級生の親) 県立高校を卒業後、介護の専門学校に入学。そこで1歳上の妻と出会い、お互い介護士として働きながら20代前半で結婚。1男1女に恵まれた。「10年5月に父親が亡くなった後、同じ町内の土地を購入し、約3000万円のローンを組んで一軒家を建てた。グアムに行ったり、庭先でバーベキューをしたり、仲睦まじい家族に見えた」(別の近隣住民)望月の自宅周辺で不審な事件が多発するように ところが、18年9月に職場を変えてから望月の人生は暗転していく。「介護事業部長を任されていましたが、施設内での窃盗が発覚して警察沙汰に。結局、示談して不起訴となったが、20年5月に自主退職した」(施設関係者) コロナ禍で緊急事態宣言が発出されるようになっていた翌21年、望月の自宅周辺では不審な事件が度々起こるようになった。「ホームタンクのバルブが勝手に開けられ、中に入っていた灯油が空っぽになる悪戯が毎日のように起こったのです」(被害住民) 車のタイヤがパンクさせられる事案も相次ぎ、極めつけが不審火だった。「3月16日に望月宅の斜め前の駐車場でボヤがあり、30日には望月宅の敷地内でもボヤ騒ぎが起きた。翌日、警察が話を聞きに行くと望月は卒倒し、そのまま救急車で運ばれ入院してしまった」(同前)実家周辺で起こったボヤの犯人はいまだ捕まらず 妻と離婚したのはそれからすぐ。ローンも払えなくなり自己破産した。望月は実家に戻ったが、以降、不審な事案はピタリと止んだ。 だが、次は戻った実家周辺で不審火が発生する。望月が役場に虚偽の通報をした約2カ月後のことだ。 行く先々で悪質な悪戯やボヤが続くのは単なる偶然か。望月の母に話を聞いた。「あの子は優しい子。優しすぎて、自分を抑えてしまう性格なんです。薬も飲んでいましたから」――放火の疑いがある。「その件は落着ですよ。犯人も見つかって片付いています。(息子は)シロです」 だが火事の被害者は、「消防車が何台も来て大騒ぎ。犯人はいまだに捕まっていないよ」 望月の弁護人は「軽度の知的障害と精神障害があり、責任能力がない」と主張している。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年10月26日号)
一方、こんな一面も。
「近所の土手に友達と火をつけて、先生が飛んできて大騒ぎになったことがあった」(別の同級生の親)
県立高校を卒業後、介護の専門学校に入学。そこで1歳上の妻と出会い、お互い介護士として働きながら20代前半で結婚。1男1女に恵まれた。
「10年5月に父親が亡くなった後、同じ町内の土地を購入し、約3000万円のローンを組んで一軒家を建てた。グアムに行ったり、庭先でバーベキューをしたり、仲睦まじい家族に見えた」(別の近隣住民)
ところが、18年9月に職場を変えてから望月の人生は暗転していく。
「介護事業部長を任されていましたが、施設内での窃盗が発覚して警察沙汰に。結局、示談して不起訴となったが、20年5月に自主退職した」(施設関係者)
コロナ禍で緊急事態宣言が発出されるようになっていた翌21年、望月の自宅周辺では不審な事件が度々起こるようになった。「ホームタンクのバルブが勝手に開けられ、中に入っていた灯油が空っぽになる悪戯が毎日のように起こったのです」(被害住民) 車のタイヤがパンクさせられる事案も相次ぎ、極めつけが不審火だった。「3月16日に望月宅の斜め前の駐車場でボヤがあり、30日には望月宅の敷地内でもボヤ騒ぎが起きた。翌日、警察が話を聞きに行くと望月は卒倒し、そのまま救急車で運ばれ入院してしまった」(同前)実家周辺で起こったボヤの犯人はいまだ捕まらず 妻と離婚したのはそれからすぐ。ローンも払えなくなり自己破産した。望月は実家に戻ったが、以降、不審な事案はピタリと止んだ。 だが、次は戻った実家周辺で不審火が発生する。望月が役場に虚偽の通報をした約2カ月後のことだ。 行く先々で悪質な悪戯やボヤが続くのは単なる偶然か。望月の母に話を聞いた。「あの子は優しい子。優しすぎて、自分を抑えてしまう性格なんです。薬も飲んでいましたから」――放火の疑いがある。「その件は落着ですよ。犯人も見つかって片付いています。(息子は)シロです」 だが火事の被害者は、「消防車が何台も来て大騒ぎ。犯人はいまだに捕まっていないよ」 望月の弁護人は「軽度の知的障害と精神障害があり、責任能力がない」と主張している。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年10月26日号)
コロナ禍で緊急事態宣言が発出されるようになっていた翌21年、望月の自宅周辺では不審な事件が度々起こるようになった。
「ホームタンクのバルブが勝手に開けられ、中に入っていた灯油が空っぽになる悪戯が毎日のように起こったのです」(被害住民)
車のタイヤがパンクさせられる事案も相次ぎ、極めつけが不審火だった。
「3月16日に望月宅の斜め前の駐車場でボヤがあり、30日には望月宅の敷地内でもボヤ騒ぎが起きた。翌日、警察が話を聞きに行くと望月は卒倒し、そのまま救急車で運ばれ入院してしまった」(同前)
実家周辺で起こったボヤの犯人はいまだ捕まらず 妻と離婚したのはそれからすぐ。ローンも払えなくなり自己破産した。望月は実家に戻ったが、以降、不審な事案はピタリと止んだ。 だが、次は戻った実家周辺で不審火が発生する。望月が役場に虚偽の通報をした約2カ月後のことだ。 行く先々で悪質な悪戯やボヤが続くのは単なる偶然か。望月の母に話を聞いた。「あの子は優しい子。優しすぎて、自分を抑えてしまう性格なんです。薬も飲んでいましたから」――放火の疑いがある。「その件は落着ですよ。犯人も見つかって片付いています。(息子は)シロです」 だが火事の被害者は、「消防車が何台も来て大騒ぎ。犯人はいまだに捕まっていないよ」 望月の弁護人は「軽度の知的障害と精神障害があり、責任能力がない」と主張している。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年10月26日号)
妻と離婚したのはそれからすぐ。ローンも払えなくなり自己破産した。望月は実家に戻ったが、以降、不審な事案はピタリと止んだ。
だが、次は戻った実家周辺で不審火が発生する。望月が役場に虚偽の通報をした約2カ月後のことだ。
行く先々で悪質な悪戯やボヤが続くのは単なる偶然か。望月の母に話を聞いた。
「あの子は優しい子。優しすぎて、自分を抑えてしまう性格なんです。薬も飲んでいましたから」
――放火の疑いがある。
「その件は落着ですよ。犯人も見つかって片付いています。(息子は)シロです」
だが火事の被害者は、
「消防車が何台も来て大騒ぎ。犯人はいまだに捕まっていないよ」
望月の弁護人は「軽度の知的障害と精神障害があり、責任能力がない」と主張している。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年10月26日号)