11月22日は語呂合わせで「いい夫婦の日」が有名だが、実は「回転ずし記念日」でもあることは知っているだろうか。
今から65年前、大阪に回転ずしの1号店「廻る元禄寿司」が誕生。
その店に設置された回転レーンの考案者、白石義明さんの誕生日が11月22日ということで制定されたという。
時代と共に進化してきたすしだが、想像よりも“ナナメ上”に進化した「おすし屋さん」も存在する。
「大きさにこだわるおすし屋さん」「小ささにこだわるおすし屋さん」、「安すぎるおすし屋さん」に「ギネス級に高いおすし屋さん」など、“ナナメ上”な「おすし屋さん」を取材した。
まずは、様々な料理と融合したおすし屋さんだ。
横浜市にある「すごい煮干ラーメン 釣りきん 鶴屋町店」。
もともと魚メインの居酒屋だった経験を生かし、マダイのアラからだしを取ったラーメンとマグロの中トロ、赤身など5貫のおすしを堪能できるセットが人気。
おすしのシャリは赤酢を使用し、醤油をネタに塗って出す本格派で、塩ベースのあっさり系ラーメンとの相性抜群だ。
東京・虎ノ門ヒルズにある、イタリアンの巨匠、奥田政行さんがオーナーシェフを務める「オイル寿しとイタリアン イル・フリージオ」。
この店では、ランチ限定でおすしと本格イタリアンの至極のコラボが堪能できるという。
おすしとパスタ、さらにバーニャカウダとお吸い物までついて値段は1750円。
パスタは、ツナと3種類のキノコが入ったトマトソースに、焦がしバターと黒コショウを効かせた「ボスカイオーラ」など、3種類から好みをチョイスできる。
おすしは、マグロ・マダイ・サーモンなど日替わりが5貫だが、注目はその味付け。
ネタにオリーブオイルと塩を振りかけた奥田シェフオリジナルのイタリアンずしだ。
中でもマグロは、ニンニクオイルでうま味を足し、赤身なのにトロのような味わいになるのだという。
そんな、進化し続けるおすし屋さんだが、中には“ナナメ上”に進化したおすし屋さんもあった。
愛知県・安城市にある「梅若寿し(うめわかずし)」。
地元・三河湾でとれた魚にこだわり、旬の赤貝や穴子の握りが人気のお店だ。
そんな梅若寿しで、大将の稲垣弘さんが最もこだわるのが“大きさ”だといい、「1人では到底食べきれないと思いますよ」と話す。
大将が「到底食べきれない」というほどのメニューが「びっくり穴子」(3520円)だ。
シャリは1キロあり、アナゴを丸々3匹使っている。
崩れないようノリで2カ所ロックしているが、もはやロックしきれていない上、通常の穴子ずしと比べると、やはり大きい。
しかし、梅若寿しの底力は穴子だけではなかった。
大将の稲垣さんが持ってきたのは「太っ腹巻き」。
直径20センチあり、値段1万7600円の超ビッグな太巻きだ。
重さは、なんと5キロもあり、通常の太巻きの約15本分もある。
これには調査員も「重くて片手で持てないですね。重たい…」とその重さに驚く。
職人が包丁で食べやすいサイズにカットしたものを食べた調査員は「具だくさんすぎて、口の中が忙しいです」と感想。
具材は、マグロ、エビ、イカ、アナゴなど魚介類が盛りだくさんで、さらに、キュウリ、ゴボウ、厚焼きタマゴなど全部で21種類も入っている。
この「太っ腹巻き」は2人がかりで作っているようで、時間がかるとネタも乾燥してしまうため、15枚つなげたノリに、一升のシャリをのせ2人がかりでテンポ良く具材をのせていく。
そして、並べ終わったら巻きの作業。
1人で巻き、約2時間かけて完成する。
手間のかかる、超ビック巻きずしだが、誕生のきっかけは客のあるひと言だったという。
「酔っぱらいのお客さんが夜10時ごろに『俺、朝から飯食ってないから、大きいのり巻きを巻け』と言うもので…」と語る大将の稲垣さん。
この一言で、すし職人の心に火が付き、太っ腹巻きを作ったというが、客の反応は「『勘弁してくれ…もう二度と来ない』と言っていました(笑)」と、客の想像以上のものを作ってしまったようだ。
客の無茶ぶりが生んだ、太っ腹巻き。
大人数で食べるのが一般的で、食べきれなかった時は、持ち帰りもできるという。
ビッグサイズとくれば、次は、スモールサイズのおすし屋さんも。
東京・雷門にある創業51年「すし屋の野八(のはち)」。
大ぶりの車エビや、桜の葉で締めた上品な味わいのタイなど、ひと手間かけた絶品おすしが味わえる。
そんな「すし屋の野八」のスモールおすしというのは、どれほど小さいのか。
早速注文すると、二代目大将の池野弘礼さんから出されたのは、ビックリするほど小さいおすしだった。
お米一粒だけを使ったその名も「一粒ずし」で、上にのるネタは全長約1センチの超小さくカットしたインドマグロの赤身に、小さなノリを丁寧に巻いたウニの軍艦巻き、だし巻き玉子など、全部で7貫。
横にはしっかりガリが添えられている。
ちなみに、通常サイズの米粒の数を数えてみると274粒ほど。
つまり、ミニサイズのおすしは274分の1なのだ。
なぜ、こんなに小さくしたのか。
大将の池野さんは「中トロちょうだいって言われて、小さく握ったら『これちっちゃいよ』っていう会話がすごく好きで…」と話す。
大将の遊び心から始まったこの一粒ずし。
普通のネタを切るときと同じ包丁でカットしていく様は、まさに職人技だ。
「おすしと名乗っているので中途半端に作りたくない。そういうことも含めてこだわりを持ってやっています」
続いては、安さにトコトンこだわるおすし屋さん。
“THE歌舞伎町”という風情漂う、「名前のない寿司屋」というすし店。
いなりずしが30円、ヤリイカの生げそが60円、エビは130円など良心的な値段で人気の店だが、それ以上にリーズナブルなおすしがあるという。
それが、職人が握る本格的なブリのおすしで、値段はまさかの10円。
ワンドリンクを注文すれば、1人15貫まで10円寿司を味わうことができるというのだ。
そんな激安ずしを握る板前の平良幸和さんは「1000貫握ったって1万円。だからお酒を頼んでもらって、お通しがつくからある程度ね…」と話す。
そこで調査員2人は、ウーロン茶2杯とブリのおすし15貫ずつ、計30貫を注文。
すると、一度にかなりの量のブリのおすしが運ばれてきた。
天然ブリの握りの握りが2人で30貫300円。
これに2人分のお通しとドリンクを合わせても1620円だ。
今が旬の脂がのったブリの握りに調査員は「おいしいです!10円とは思えないです」と感動する。
なぜ10円すしを始めたのか。板前の平良さんは「最初はオープン記念、(6年前に)オープンした時に3日間だけやる予定だった。結局半年、1年たってSNSとかそういうので名前が出てお客さんが増えてきた」と話題になり、やめられなくなってしまったのだという。
クチコミで人気に火が付き、今や看板メニューとなった10円寿司。
ネタは日替わりのため、食べられるネタは店に行ってからのお楽しみだ。
一方、値段が高すぎるおすし屋さんも。
大阪・北新地にある「鮨桐紋(すしきりもん)」。
親方の摂田直之さんが迎えてくれたこの店は完全予約制で、カウンター8席のみの、見るからに高級感漂う雰囲気だ。
摂田さんが「日本の近海で取れた一番のものばっかりで握る。それでコースとしてお出ししたい」と話すのが、「極OMAKASEコース」。
全部で20貫あり、その値段35万円。単純計算で一貫1万7500円だ。
今年の8月から始めたこのコースは「高額すぎるすし」としてギネス世界記録に認定されたという。
その気になるラインアップを一部紹介すると、まずは、すしの王様、マグロの大トロ。
使用するのは「黒いダイヤ」の異名を持つ青森県・大間の本マグロで、しかも、カマに近い一番脂が乗った部分だ。
調査員が実食すると「あ!もうなくなりました。本当にとろけるって感じです」と堪能する。
他にも、一箱10万円する北海道産のムラサキウニの握りや、高級エビとして名高いボタンエビなど。
そして極めつきは、世界最高峰とも言われるイタリア産のベルーガキャビア。
そんなキャビアが乗るのは毛ガニだ。
これまで5組の客が味わったという「極OMAKASEコース」。
食材は、少量で仕入れることができないため悩みもあるようで、親方・摂田さんは「(仕入れ値は)最低でも100万はいきますね。(予約の人数が少ないと)赤字ですね」と話した。
予約は2人からで1週間前には受付終了してしまうため、気になった方は早めの予約が肝心だ。

(ノンストップ!『ナナメ上調査団』より 2023年11月21日放送)