先月31日に埼玉・蕨市の郵便局に約8時間にわたって拳銃を持って立てこもり、逮捕された男が86歳の高齢だったことでさらなる衝撃が走った。
人質強要処罰法違反の疑いで逮捕された鈴木常雄容疑者は戸田市内の自宅アパートに放火し、戸田中央総合病院では診察室に向かって発砲。医師と男性患者を負傷させれば、郵便局では逃げ遅れた女性局員2人を人質にとって、立てこもった。
容疑者の自宅アパートは拡張工事に伴い、来年2月までに退去を求められていた。襲撃した病院には通院歴があり、受付窓口での対応に不満があったという。また昨年、郵便局員のバイクと衝突する事故があった。郵便局に立てこもった時には事故時の局員や病院長らとの面会を要求し、うっ積した怒りを爆発したとみられる。
同容疑者は元暴力団組員。所持していた拳銃はトカレフとみられ、貫通力や殺傷力が高いことで知られる。最大9発発砲が可能で、同容疑者は予備弾も所持し、扱いも手慣れた様子で、病院と郵便局内で計4発を発砲していた。さらに刃物2本、灯油のような液体が入った18リットルの容器とペットボトル2本、複数のライターを郵便局内に持ち込んでいたことが分かった。
「男はアパートに20年以上居住し、年齢的にも終の棲家と思っていたところで立ち退きを迫られ、転居先を見つけるのも簡単ではなく、自暴自棄になったのでは。元暴力団で肩身は狭く、周囲との人間関係もこじらせ続けていたのではないか」(防災関係者)
驚くべきは86歳とは思えないフットワークの軽さだ。自宅放火から病院での発砲、郵便局での立てこもりまで、それぞれ1・5キロ離れたところをバイクを使って移動。わずか2時間のうちに連続して犯行に及んでいた。
「郵便局の侵入直後は約130人の局員がいた。放火する覚悟で侵入している。灯油をばらまき、ライターで火をつけていれば京都アニメーションや一昨年の北新地のクリニックが放火された時のような、多くの死傷者が出ていてもおかしくなかった」(同)
ケガ人が2人で済んだのは不幸中の幸いだったかもしれない。