小気味よく力強い「は・か・た・の・しお♪」のコマーシャルソングで知られる「伯方塩業」(松山市)の創立50周年を記念した「伯方の塩まつり」が4日、同社大三島工場(愛媛県今治市大三島町)で開かれた。
約2300人が来場し、CMソングの「歌声コンテスト」などで盛り上がった。(丹下巨樹)
同社によると、現行のCM音楽の放映は1987年に始まった。36年が過ぎた今も愛されるロングランだが、会社にはCM制作に関する資料が残っておらず、昨年から本格的に作曲家と声優を探していた。当時を知る人からの証言なども集まり、今年になって「VC―3000のど飴(あめ)」や「メガネの愛眼」などのCMソングもつくった浦田博信さん(72)が作曲を手掛け、声優は大阪音楽大学名誉教授の塩谷信広さんであるとわかった。
「今に至るまで(CMの)映像は変わっても音楽だけは変わらない。長い間、使用してもらえて光栄なことだ」と話す浦田さんは、この日、石丸一三社長らとのトークショーに登壇。「斬新さ、親しみやすさ、力強さを意識した。制作は一晩で終わった」と振り返った。
石丸社長は「36年前、ほとんどの人が『伯方の塩』を知らなかった。それが今では順調に売り上げも推移している」と、浦田さんらの功績をたたえた。
歌声コンテストには、16組約35人が参加。参加者はリズムを変えたり振り付けを付けたりして工夫し、思い思いにCMソングを歌い上げた。
家族4人で参加し、グランプリに輝いた京都府福知山市の男性(44)は「まさか優勝するなんて。これからも伯方の塩を使い続けなければね」と家族と笑い合っていた。
会場では「伯方の塩」を使った塩ちゃんこやサツマイモの菓子などが販売され、大相撲で土俵を清めるために行う「塩まき」を体験できるコーナーも設けられた。
◇ 伯方塩業は1973年、自然塩の存続を求める消費者団体が母体になって創業した。当時は塩の製造・販売を国が管理しており、71年に成立した塩業近代化臨時措置法で、瀬戸内海沿岸で盛んだった塩田での塩づくりは禁止された。
同社は「せめて塩田で作られた塩の味を再現したい」と、伯方島の塩職人の協力を得て試行錯誤。現在はメキシコやオーストラリアから輸入した塩に、瀬戸内海の海水を加えて濾過(ろか)し、泥などの不純物を取り除くなどして製塩している。
石丸社長は「50年を迎えられたのは消費者に支えられてきたおかげ」と感謝していた。