全国的に若年層への大麻の蔓延(まんえん)が深刻化する中、兵庫県内でも同様の状況が続く。
県警が今年9月末までに大麻取締法違反で検挙した10歳代の若者は48人で、統計の残る1990年以降最多だった昨年を上回るペース。県警は「SNSを介して、若者が気軽に違法薬物に手を出している」とみており、人工知能(AI)を使ったインターネット上でのパトロール強化に乗り出している。(川本一喬)
■薄れる危機感
兵庫県警によると、大麻取締法違反で検挙される10歳代の若者は近年急増。2012年は4人だったが、22年には74人(9月末までに40人)となり、今年はさらに増加しそうな傾向にある。全国でも若年層への広がりは顕著で、警察庁によると、22年に912人の少年が検挙されたという。
背景には、X(旧ツイッター)などのSNSが、薬物に接する<入り口>になっている実情がある。昨春、関西、関西学院、同志社、立命館の4大学が新入生を対象に実施した意識調査によると、約4割が「(薬物が)入手可能」とし、そのうちの約9割が「SNSやインターネットで探せば見つかる」と回答した。関西大学生生活支援グループは「危機感が年々薄れているようだ。SNSを介して薬物を入手しないよう、啓発・教育する必要がある」と警戒感を強める。
■売買にも関与
未成年が違法薬物の売人になるケースも散見される。昨年5月にあった兵庫県尼崎市と大阪府の少年グループによる傷害事件は、大麻の取引が発端で、現場近くにあった原付きバイクからは約90本の大麻リキッドのようなものが発見された。
主犯格の尼崎市の少年(当時16歳)がXで客を募った実態が明らかになり、県警は当時16~22歳の4人を大麻取締法違反容疑などで逮捕。捜査関係者も「少し前まで中学生だった少年が売人をするなんて聞いたこともない」と驚きを隠せない。
■ルート解明へ
政府が8月に策定した「第6次薬物乱用防止5か年戦略」では、大麻事犯が急激な増加傾向を示しており、「大麻に特化した対策が急務となっている」と指摘。AIを使ったSNS上のサイバーパトロールで、薬物密売に関する違法情報を収集し、取り締まりを強化することが明記された。
兵庫県警では、闇バイト募集対策として今月から導入したAIを活用。大麻を示す隠語の書き込みなどを自動的に検索し、捜査につなげている。県警幹部は「若者が道を踏み外さないよう監視を強化し、販売ルートの解明にもつなげたい」と話している。