「売春を取り締まる個人的な捜査をしていた」
【写真】逮捕された岡山県警の幹部・岩本幸一警視正(58) 不可解な供述を繰り返すのは、女性をレイプした疑いで逮捕された警視正の男。異様な犯行手口のウラには、ある経歴が――。◆ ◆ ◆『実は警察なんだよ』アプリで知り合った女性に性的暴行 広島県警は7日、中国四国管区警察局の警察学校指導部長で、岡山県警から出向していた岩本幸一警視正(58)を不同意性交などの疑いで逮捕した。「被害に遭ったのは今年9月、アプリで知り合った初対面の20代女性。『パパ活』名目のデートだったとみられます。ホテルに入ると、岩本はおもむろに上着の中に着込んだ制服と階級章を見せ、『実は警察なんだよ』と明かし、犯行に及んだようです」(地元メディア記者)

岩本は「売春を捜査する部署にいる。これは犯罪になる」などの言葉で女性を脅し、性的に暴行。更に「2度と売春しない」と誓わせる「始末書」を女性に書かせたと報じられている。『警部』の壁を30代の若さで突破した叩き上げの警視正 岩本は取り調べに対し、否認を続けている。「警察学校の部長に売春の捜査権限はないため、供述も不可解。関係先からは複数の『始末書』が押収されており、余罪も疑われている」(同前) 警察権力を笠に着た悪質かつ卑劣な罪を犯した岩本とはどのような男か。ある県警関係者はこう証言する。「彼の経歴は同期や同世代でトップクラスに華麗なものです」 1984年、岡山県立成羽(なりわ)高校普通科を出た岩本は、高卒で県警に就職した。「『巡査』から昇進していった完全な叩き上げ。最終階級が『警部補』止まりの警察官も多い中、昇進には人格なども考慮される『警部』の壁を30代の若さで突破した」(同前) 機動隊など警備系を振り出しに、本部警務課など管理部門を経験。一方、署管理官や本部指導官など刑事捜査の要職も務め、「管理も捜査もできるゼネラリスト」(同前)となっていった。日常的に部下に『始末書』を作らせていた 私生活では30代前半で岡山市内に庭付き2階建てのマイホームをローンで購入。妻と長女、長男、愛犬と暮らす円満家庭を築く。「警視」に昇任した岩本は、2016年、300人の警察官を抱える県下最大の岡山中央署の副署長に就任した。当時、中央署に在籍した署員が語る。「マスコミ対応など副署長の役割は多岐に渡りますが、岩本氏が特に熱心だったのが、よりにもよって『不祥事防止』でした」副署長を務めた岡山中央署 岩本は「非違事案や事故のないよう徹底してほしい!」などと署員らに呼びかけていたという。「そのため岩本氏は日常的に部下に『始末書』を作らせていた。これは一種の警察文化で、署員の小さなミスやトラブルから、軽微な事故や市民相談など、とりあえずは『始末書を作っておけ!』と……」(同前) 仕事の“癖”をラブホテルにも持ち込んだのか。アガリを目前に終わった出世すごろく 21年に大規模署である玉島署長に就任。翌年には“パパ活”を巡る問題を扱う本部生活安全企画課長に。今年3月「警視正」に昇任し、広島市に単身赴任した末に事件を起こした。 前出の県警関係者が語る。「警視正になると地方公務員から国家公務員に切り替わる。その時点で発生した2000万円ほどの退職金は事件前に手にしているでしょう。出向先で2年勤めた後は岡山に戻り、例えば岡山中央署長という大役を務めて定年退官、が花道として用意されていたはずです」 警察法に定められた9階級のうち上から4番目にあたる警視正。地方警察のノンキャリアが歩んできた出世すごろくは、アガリを目前に終わった。 逮捕前には、自宅の庭木の枝を全て剪定する岩本の姿が目撃されていた。これもまた“始末”のつけ方か。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年11月23日号)
不可解な供述を繰り返すのは、女性をレイプした疑いで逮捕された警視正の男。異様な犯行手口のウラには、ある経歴が――。
◆ ◆ ◆
広島県警は7日、中国四国管区警察局の警察学校指導部長で、岡山県警から出向していた岩本幸一警視正(58)を不同意性交などの疑いで逮捕した。
「被害に遭ったのは今年9月、アプリで知り合った初対面の20代女性。『パパ活』名目のデートだったとみられます。ホテルに入ると、岩本はおもむろに上着の中に着込んだ制服と階級章を見せ、『実は警察なんだよ』と明かし、犯行に及んだようです」(地元メディア記者)

岩本は「売春を捜査する部署にいる。これは犯罪になる」などの言葉で女性を脅し、性的に暴行。更に「2度と売春しない」と誓わせる「始末書」を女性に書かせたと報じられている。『警部』の壁を30代の若さで突破した叩き上げの警視正 岩本は取り調べに対し、否認を続けている。「警察学校の部長に売春の捜査権限はないため、供述も不可解。関係先からは複数の『始末書』が押収されており、余罪も疑われている」(同前) 警察権力を笠に着た悪質かつ卑劣な罪を犯した岩本とはどのような男か。ある県警関係者はこう証言する。「彼の経歴は同期や同世代でトップクラスに華麗なものです」 1984年、岡山県立成羽(なりわ)高校普通科を出た岩本は、高卒で県警に就職した。「『巡査』から昇進していった完全な叩き上げ。最終階級が『警部補』止まりの警察官も多い中、昇進には人格なども考慮される『警部』の壁を30代の若さで突破した」(同前) 機動隊など警備系を振り出しに、本部警務課など管理部門を経験。一方、署管理官や本部指導官など刑事捜査の要職も務め、「管理も捜査もできるゼネラリスト」(同前)となっていった。日常的に部下に『始末書』を作らせていた 私生活では30代前半で岡山市内に庭付き2階建てのマイホームをローンで購入。妻と長女、長男、愛犬と暮らす円満家庭を築く。「警視」に昇任した岩本は、2016年、300人の警察官を抱える県下最大の岡山中央署の副署長に就任した。当時、中央署に在籍した署員が語る。「マスコミ対応など副署長の役割は多岐に渡りますが、岩本氏が特に熱心だったのが、よりにもよって『不祥事防止』でした」副署長を務めた岡山中央署 岩本は「非違事案や事故のないよう徹底してほしい!」などと署員らに呼びかけていたという。「そのため岩本氏は日常的に部下に『始末書』を作らせていた。これは一種の警察文化で、署員の小さなミスやトラブルから、軽微な事故や市民相談など、とりあえずは『始末書を作っておけ!』と……」(同前) 仕事の“癖”をラブホテルにも持ち込んだのか。アガリを目前に終わった出世すごろく 21年に大規模署である玉島署長に就任。翌年には“パパ活”を巡る問題を扱う本部生活安全企画課長に。今年3月「警視正」に昇任し、広島市に単身赴任した末に事件を起こした。 前出の県警関係者が語る。「警視正になると地方公務員から国家公務員に切り替わる。その時点で発生した2000万円ほどの退職金は事件前に手にしているでしょう。出向先で2年勤めた後は岡山に戻り、例えば岡山中央署長という大役を務めて定年退官、が花道として用意されていたはずです」 警察法に定められた9階級のうち上から4番目にあたる警視正。地方警察のノンキャリアが歩んできた出世すごろくは、アガリを目前に終わった。 逮捕前には、自宅の庭木の枝を全て剪定する岩本の姿が目撃されていた。これもまた“始末”のつけ方か。(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年11月23日号)
「被害に遭ったのは今年9月、アプリで知り合った初対面の20代女性。『パパ活』名目のデートだったとみられます。ホテルに入ると、岩本はおもむろに上着の中に着込んだ制服と階級章を見せ、『実は警察なんだよ』と明かし、犯行に及んだようです」(地元メディア記者)
岩本は「売春を捜査する部署にいる。これは犯罪になる」などの言葉で女性を脅し、性的に暴行。更に「2度と売春しない」と誓わせる「始末書」を女性に書かせたと報じられている。
岩本は取り調べに対し、否認を続けている。
「警察学校の部長に売春の捜査権限はないため、供述も不可解。関係先からは複数の『始末書』が押収されており、余罪も疑われている」(同前)
警察権力を笠に着た悪質かつ卑劣な罪を犯した岩本とはどのような男か。ある県警関係者はこう証言する。
「彼の経歴は同期や同世代でトップクラスに華麗なものです」
1984年、岡山県立成羽(なりわ)高校普通科を出た岩本は、高卒で県警に就職した。
「『巡査』から昇進していった完全な叩き上げ。最終階級が『警部補』止まりの警察官も多い中、昇進には人格なども考慮される『警部』の壁を30代の若さで突破した」(同前)
機動隊など警備系を振り出しに、本部警務課など管理部門を経験。一方、署管理官や本部指導官など刑事捜査の要職も務め、「管理も捜査もできるゼネラリスト」(同前)となっていった。
私生活では30代前半で岡山市内に庭付き2階建てのマイホームをローンで購入。妻と長女、長男、愛犬と暮らす円満家庭を築く。
「警視」に昇任した岩本は、2016年、300人の警察官を抱える県下最大の岡山中央署の副署長に就任した。当時、中央署に在籍した署員が語る。
「マスコミ対応など副署長の役割は多岐に渡りますが、岩本氏が特に熱心だったのが、よりにもよって『不祥事防止』でした」
副署長を務めた岡山中央署
岩本は「非違事案や事故のないよう徹底してほしい!」などと署員らに呼びかけていたという。
「そのため岩本氏は日常的に部下に『始末書』を作らせていた。これは一種の警察文化で、署員の小さなミスやトラブルから、軽微な事故や市民相談など、とりあえずは『始末書を作っておけ!』と……」(同前)
仕事の“癖”をラブホテルにも持ち込んだのか。
21年に大規模署である玉島署長に就任。翌年には“パパ活”を巡る問題を扱う本部生活安全企画課長に。今年3月「警視正」に昇任し、広島市に単身赴任した末に事件を起こした。
前出の県警関係者が語る。
「警視正になると地方公務員から国家公務員に切り替わる。その時点で発生した2000万円ほどの退職金は事件前に手にしているでしょう。出向先で2年勤めた後は岡山に戻り、例えば岡山中央署長という大役を務めて定年退官、が花道として用意されていたはずです」
警察法に定められた9階級のうち上から4番目にあたる警視正。地方警察のノンキャリアが歩んできた出世すごろくは、アガリを目前に終わった。
逮捕前には、自宅の庭木の枝を全て剪定する岩本の姿が目撃されていた。これもまた“始末”のつけ方か。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年11月23日号)